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					訪米中韓国大統領が日本の歴史認識に問題ありとオバマ大統領の前やアメリカ議会で言及した。中国も歴史認識批判をバックに日本に攻勢をかけている。歴史認識とは、それぞれが関係する歴史をどう捉えているかということであるが、その真偽はそれこそ歴史的時間を経過した後でなら定まる可能性があるかもしれない。しかしそれでも定まらないかもしれない。 
					 
					歴史認識はそれぞれの国などで異なっているのは当然ながら、日本政府は国際関係ではいわゆる歴史、その時代の覇者あるいは勝者がその視点から認識した歴史で仕切られていること否定はしていないはずである。ある時代に歴史認識が問われるということは、国際関係においてそのいわゆる歴史に異議を唱えているということであり、その時代の覇者あるいは勝者に非があると言っていることになるからである。 
					 
					今の時代世界で日本をめぐる歴史として国際的関係を仕切る前提となっている歴史認識は何か。第2次世界大戦では、東京裁判を受け入れた。それがいまを仕切る歴史のもとにあると思われる。日本側には裁判での言い分はあったが裁きは下った。その結果がもたらす歴史認識を日本は受け入れているわけである。その歴史認識に過去のいろいろな個別の事件・事象がぶら下がってそれぞれの歴史認識がまた構成されてきている。しかし日本には裁きは裁きとしても言い分は言い分として認められるべきことがあると主張したい思いがないわけではないし、個別の事件・事象にはいわれなきことがあるという思いがないわけでもない。そういう意見が政治の中で時折現実対応のバランスを崩させることがある。 
					 
					歴史は遠い将来、勝者や敗者の峻別が意味なくなったときに書き直される可能性がある。それまではそれぞれが研究して事実とその認識を表明するのは自由だが、それをやりぬく力が備わっていないあるいはその環境にないときに、政府が世界を仕切っている認識に異を唱えているととられるようなことは避けなければならない。民間も含め研究機関などが発表するのは問題ないようだからどんどんやればよい。中国の国営新聞が沖縄領有権について掲載しても中国政府は研究者個人の見解と言ってやり過ごしているところを見ればそういうことは問題ないらしい。 
					 
					昨今の歴史認識をめぐる状況は閣僚が個人的にとか言ったりするように国・政府や要職にある政治家と民間や個人との区別をあいまいにしているところにいささか甘さがあってツケを払わさられているように見えないこともない。歴史認識を問うて責められたときには、事実を示したり反論したりするにしても、国・政府としてはいま世界を仕切っている歴史認識を一方的に否定することは避け、協調諸国との関係強化に努めつついなすような対応をして凌いでいくしかないように思える。そうしないと要らぬ言質を取られたり付け込む隙を作ることになる。政府、政治家の言動やそれを報道するマスコミなど注意して欲しいものである。 
					 
					靖国問題や従軍慰安婦問題は、過去に特定の日本人が自分たちの政治的思想主張の証とするために事実をねじ曲げ日本の政府や政治家を攻撃する目的でなされたようである。それを他国に利用されて国益を損なっているわけである。また友好条約締結時棚上げ約束をしている歴史があるにもかかわらず石原前都知事が火を付けた問題に野田前総理が国家として原状変更の決定をしたが、歴史認識を欠いたように見える。そしてそれが中国の攻勢を加速させ国益をそこねている。 
					 
					そしてまたアメリカ議会の懸念を招いた安倍総理の歴史認識に関する発言はアメリカの歴史認識への読みの甘さあるいはアメリカの歴史認識変化の読み違えによるのか知らないが、今回オバマ大統領の前や議会で韓国大統領の歴史認識発言が許される状況を招いたように見える。政府や政党要職などの影響力ある政治家やマスコミの一部が自分の立場や存在をアッピールすることばかり考えてどう決着するかの見通しも覚悟もなく、いっときの見得を切ってきたその報いが、彼らではなく彼らの存在を保証する日本に向かって来ているようで不安である。 
					 
					補足1: 原爆投下されたのは神の懲罰だとか 
					2013.05.24 
					韓国の大手新聞・中央日報の論説委員がコラムで原爆投下されたのは神の懲罰だというようなことを書いたらしい。日本政府の抗議に同紙は論説委員個人の見解だと言い訳したそうである。その新聞の論説委員がその新聞に書いたことが個人的とは恐れ入る。新聞には編集権があってそれをパスしたから掲載されたのに新聞社は責任ないと言っている。沖縄領有権について研究者が国営新聞で発表したときの中国政府の言い方と同じ感じであるが、自紙の論説委員といえば政府の中枢と同じみたいなものなのに、この言い訳では政府の人間がなにを言ってもそれは個人的見解と言っているようなものであるから、韓国紙のメンタリティはさらに質が悪い。 
					 
					補足2: 尖閣棚上げの合意はなかったが暗黙の了解はあったらしい 
					2013.06.29 
					私はいままで報道で棚上げを合意していたような印象を持っていたのだが、元外務省中国課長の田島高志氏(中国側が合意があったとする1978年・昭和53年の会談に中国課長として同席していた)が産経新聞の取材に応じ、中国側の一方的な思いで合意はなかった、と述べたそうである。 
					 
					また中国は国交正常化交渉が行われた1972・昭和47年9月27日の田中角栄・周恩来両首相の会談でも合意があったとしているが、交渉に条約課長として同行した栗山尚一氏は両首脳の間で棚上げの暗黙の了解が成立したが、あったのはあくまでも暗黙の了解で中国側が言う合意があったというのは言い過ぎだと言っているそうである。田島氏もまた条約交渉当時、田中・周会談で棚上げの合意があったという認識はなかったと1972年の合意説を否定しているとのことである。 
					(追加: 英国で裏付ける文書発表される) 
					2014.12.30 
					英公文書館が12月30日に1982年9月のサッチャー英国首相来日の際の鈴木善幸・サッチャー首脳会談の会談録を公表したそうである。その会談録に鈴木首相がサッチャー首相に対し尖閣問題については日中間で棚上げにする(現状を維持する)合意があることを明らかにしているということである。合意は外交上の正式なものではないらしいが、鈴木氏の発言は日中の専門家らが指摘する暗黙の了解があったというのは本当のようである。 
					 
					 
					 
					 
					補足3: 麻生副総理のいっときのウケ狙い発言 
					2013.08.05 
					7月29日の都内でのシンポジュウムでの憲法改正に関する発言が問題になっている。発言の文脈からナチス発言は反語的意味合いだということらしいが、政治家としては揚げ足をとられるような発言をわざわざすることは慎まなければいけない。内閣の一員としてミスリードされないように言葉を選ぶことが求められているのに、それができないでは今後も日本に不利益をもたらす可能性がある。 
					 
					 
					(関連記事) 
					屋久島生活の断片・偏見ご免のたわごと編: 
					
					   No.163  靖国参拝のこと(2) [2004(H16).12.06] 
					 
					 
					   No.214  ご発言メモのこと  [2006(H18).07.24]
					
					 
					   No.288  歴史認識のこと  [2008(H20).11.07] 
					屋久島方丈記・偏見ご免のたわごと編: 
					
					   No.118  竹島・尖閣に思う米中露韓と日本の戦略  (2012.08.19) 
					   No.239  歴史を未来に繋げる  (2014.08.18) 
					   No.260  好きになれないやり方あるいは投票行動の背景  (2015.01.12) 
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