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  偏見ご免のたわごと編:  No.036
本:ネトウヨとパヨク_読んで自分が黙るわけを探る 2020.10.12
  7月だったと思うが、テレビの何でも言って委員会NPという番組で「ネトウヨとパヨク(物江潤著・新潮新書)」という本の筆者が出演してネトウヨとパヨクとはということを解説をしていたのを見て、その本を読んでみたくなって購入した。以下は読んで思った自分の振る舞いが自分の性格だけではないときもあるのではないかという感想のことである。

私は、いままでにひとと話していてすぐ話してもしょうがないという気になることが何回かあった。それなりに議論出来る場では普通に対話しているつもりだが、ときに意見を述べ合うのにはなしがかみ合わず話しを続けても相互理解が出来ないと感じると、反論はせず相手の言いたいこと聞くだけに転じる場合があった。そういう場合はなぜ虚しい話し合いになるのか、自分の性格で都合が悪くなると黙ってしまうからかと気になっていたものである。

だが、今回この本を読んで、自分の性格から来るもの以外にもわけがあったのではないかという気がして来た。私が話し合ってもしようがないと思ったのはなぜなのか。そのわけのいくばくかはこの本にあるネトウヨやパヨクとの議論から筆者がこういうことだから彼らとの議論が不毛だと言うに似た状況を感じたことによることもあった気がして来た。

この本では一般社会でひと対ひとの関係の中で極端な政治的意見を感情的に発しても無視されていたひと達がインターネットの時代になってどうその勢力を伸ばして来たのかについて論考しているが、それはさておき、ネトウヨやパヨクというのはどういうことによって特徴づけられるのかというその内容がなんとなく自分の感じていたことに通じる気がしたのである。

私がこの本から受け取ったことを極言すれば、結論しかない主張では対話が成り立たないということである。私はそれを何となく感じ取ってはなしを止め黙って相手の言うことを聞くだけにしていた面もあったような気がして来たのである。果たしてそれが当たっているのか、あるいは自分の性格だけによるものなのか気になっている。


参考: 本で私の印象に残ったこと
議論のルール(これを守れば対話は可能)
・自らの主張は仮説にすぎないと確信すること
 (議論は、相手を徹底的にやっつけて、自分の正しさを証明する場ではない)
・ひとの発言権を奪わないこと
 (個人攻撃で黙らせず、相手の主張の欠陥を指摘すればよい)
・論拠や事実でその主張の良しあしを判断すること

これにはかなわない。
・結論しかない主張は最強である。(自分が得た限られた情報・体験を絶対視し、感情的に結論を導いている。すなわち、自分がそう思っているというのが主張する理由だから論理がない。そうであれば相手と論拠あるいは事実の捉え方に問題がないかそしてそれからの推論に問題がないかの議論が成り立たないからということのようである。)



補足: 自分の性格について
私は若いころからひととうまく話せないと思うときがあったが、さらに長じていろいろな場面でいろいろなひとと出会い自分の小ささを思い知り自分の知識や能力の大したことがないことを自覚するにつれ相手を畏れて話をすることに慎重になった。そして話す前に頭の中でいろいろなことを考えこう言おうと思い至ったことを話すのだが、それがタイミングを逸して流れに乗らないことが多く、その結果どうも口が重くなって行ったように自分では思っている。その結果、発言のタイミングを失ってしまったりして、それを悔やんだこともある。

また相手を畏れて議論に慎重であるということは裏返して言えば自分に自信がないということである。だから多くの場合は私の知らないことや新たな視点のはなしに持論を言うよりは傾聴してしまうことになる。たまには相手が話している内容が私の知っていることだったり相手が同じようなことを繰り返し言い続けたりしているときもよっぽどのことがないとそれに反論したり阻止したりせず黙って聞いていることもよくある。これも自信のない現れである。

私はそれが自分の性格なのだと思って来たのだが、それに加えて自分の自信のなさを増強させる出来事があった。それは私は何十年か前に会社で適性検査みたいなものを受けさせられたのだが、その結果は論理的過ぎる性格だと評価が悪かったことを知ったことである。欠陥人間だと宣告されたような気持になった。そしてそのあと、ひとを畏れる気持ちとそういう論理的過ぎる性格が好ましからざるものだいう思いが相俟って、自分の振る舞い方が周囲に受け入れられないのではないかとずっと気になっていた。


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