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  たわごと編: No.288  
  2015.06.15 高齢者の運転免許政策_高齢者地方移住政策と矛盾  
 
  介護施設の不足から政策で高齢者の地方移住を進めようというはなしがあるようである。地方に移住しても介護対象になって施設に入るまでは普通に生活することになると思われるが、不便で移動の自由が制約されやすい地方では車が大方の移動手段である。都会では車を運転しなくてもよかった高齢者も地方では車を運転しなければならなくなる可能性がある。それなのに国は高齢者の認知症認定強化などを通して車を運転する高齢者を減らそうとしている。高齢者の地方移住を推進すると車の運転が必要な高齢者が増える可能性があるのに、高齢者の運転免許は手当たり次第取り上げるというような相矛盾する政策を国は進めている印象である。

妻は6月が免許更新時期で、まだ70歳前だから30分の講習を受けて新しい免許証をもらってきたのだが、そのときの講習では高齢者の事故が多いということで高齢者の話題が多かったそうで、感想としては高齢者が悪い悪いと言っているという印象だったそうである。妻の感想は、高齢化社会になって高齢者が増えて来れば高齢者の事故も多くなるが、高齢者を責めるのではなく高齢者が事故を起こさないような対策をしているのかが問題だということである。

屋久島でも、標識が樹の枝に隠れて適当な距離からは見難く、すぐそばに行かなければ見えないところもある。道路環境の定期メンテナンスなどが必要である。また全国統一規格があるだろうからいまのところ無理かも知れないが、高齢者には速度制限や禁止の標識を大きくしたりした方がよいと私は思っている。また高齢者でなくとも速度制限が終わりの標識は分かりにくい。それまでの速度制限標識の上に小さい速度制限区間の終わりの標識が付いている。例えば40km/hの先が60km/h区間だと当然60km/hの標識はない。そして曲がりくねった道が多くてほとんどの区間が追い越し禁止なのに40km/hで走行し続ける車もいてイライラの元である。

私は月に数100kmくらいしか運転しないが、上下各1車線の道で中央線を挟んで対向車の知り合い同士らしいのが停止して話しているのを見かけることがある。また横道に入る車が対向車を待つ間余裕を持って手前にまっすぐ中央線に並行して止まればよいのに、横道の入り口に鼻を向けるようにして車線を塞ぐように斜めに止まって後続車の通行を妨げるのも見かけることがある。あるいは対向車線の車が用事の場所をめがけてか突然私の走っている車線に入って来て路側に進行方向と逆向きに停車するのに驚いたことがある。

70歳を過ぎている私が過去に受けた簡易な運転講習ではこういう地元事情の交通マナーなどに注意を喚起する内容はなかった。講習では地元の道路事情から来る要注意点とか公共意識に欠ける交通マナーとかそういうものをもっと徹底するようにすれば事故は減るのではないかという気がしている。ノルマ制のいわゆるネズミ捕りで違反者を増やすようなことには国会でも批判が出たが、ネズミ捕りをする人員がネズミ捕りをしている道をパトカーで常時パトロールする方が効果があると思われる。事故予防には速度違反ありきのネズミ捕りより模範運転のパトカーの常時パトロールの方が教育的で違反そのものを抑止する効果があると思われる。

高齢者の認知症疑いが、速度違反取り締まりのノルマ化みたい摘発されて、免許取り上げ数が競われるようにならなければと、高齢者講習を受けるようになった私は切に願っている。免許取り上げの前にもっとやるべきことがあるという考えは出ていないのかと不信感と疑問でいっぱいである。高齢者でもわけあって運転しなければいけない人は多いと思われる。免許証を取り上げたり更新料を上げたりして解決しようという発想には人々の暮らし・生活に疎いエリートの机上の論議のような印象がある。私の住む屋久島を例に挙げれば主たる交通手段は老若を問わずマイカーなのである。

(補足)
最近見た高齢者の運転に関するネット記事によれば、アメリカでも高齢運転者の数は増えていて2011年のデータだが、米国における70歳以上の運転免許証保有者は約2260万人で、これは70歳以上の人口のおよそ79%であり全年齢の運転免許証保有者の約11%にあたる。そして高齢者の運転免許制限はないようだが、高齢運転者増の傾向が事故の増加につながっているわけではないようである。米国では2011年に自動車事故で死亡した70歳以上の数は4052人にのぼったが、これは1997年と比較すると31%減少している。人口当たりの死亡事故数の割合も1975年から約45%減少していて最も低いレベルにあるそうである。

一方英国では、多分今年のデータと思われるが、運転免許証を保有している70歳以上の数が初めて400万人を超えたが、数年以内に1000万人に届く可能性があると見られている。その英国では、70歳を超えると運転するのにふさわしいかどうかを3年ごとに申告することが求められている。しかしこの申告は自己申告であり公的な医学的検査や運転テストなどの裏付けは要件になっていないそうである。

日本では、2004年のデータでは、65歳以上の運転免許保有者は約879万人余で、全人口に対する運転免許保有者の割合は36%。2012年のデータでは、85歳以上の運転免許保有者は約37万人余だそうである。そして75歳以上の人は講習予備検査と高齢者講習等を受けないと免許証の更新ができない。認知症の比較データがないからなんとも言えないが、日本は行き過ぎではないかと再考出来ないものかという気がする。

また日本では自転車と歩行者の対自動車事故が半分くらいあるので自転車と歩行者についての対策(教育や道路環境整備など)も必要ではないか、高齢の運転者と歩行者では歩行者の方が事故が多いので高齢者の運転を止めさせると歩行者増となり、さらに高齢歩行者の事故が多くなるのではないかと指摘する向きもある。さらには免許更新がらみの費用が利権的に狙われ高齢者にしわ寄せが来ていると見る向きもある。もう少し認知症がらみについては慎重を期したらどうかという気がしている。


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