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  偏見ご免のたわごと編:  No.319
佐渡島の金山_やっと世界遺産登録とか  2024.07.30
  佐渡島の金山が世界文化遺産登録の暫定リストに登録されたのは2010年だったそうで、それから14年を経てやっと登録に至ったようである。登録が遅れた理由のひとつは、韓国政府がこの佐渡島の金山を、植民地期における朝鮮半島からの労働者が強制労働をさせられた場所だとして反対したことにあるそうである。明治期日本の産業革命遺産のはなしのころも韓国の反対があったが、歴史の真偽あるいは解釈は国により言い分が違うので何らかの落としどころを見つけないと登録に至らないわけだが、今回はどう日本と韓国で折り合いをつけたのか、そしてそれがこれからの外交の足かせにならないのか気になるところである。

さて世界文化遺産というものについてだが、私はそもそも世界で文化遺産と言われるものはほとんどが歴史上権力を持ったものが作り上げたものであると思っている。大きな権力を持つ権力者や国家の意志によって建造を推進され、それらを作り上げるには芸術家や建築家や技術者の指揮・指導のもと苦役、労役で徴用された者あるいは労働者がその作業に従事してきた。虐げられて従事した者がいると歴史で認められているものもあるかも知れないがそれはそれとして負であれ正であれ、いま文化の歴史として残す価値があるとして世界文化遺産として登録されているわけである。

私は正負にかかわらず歴史的に残す価値があるということならば、そして世界がそうだと認めるものであれば、そうだと宣言して世界遺産として守っていくことに異議はない。本当にそうならいいのだが、登録推薦決定というときのTVなどの報道では、観光客目当てにこれで人が来ると喜ぶひとなどのはなしが多かった印象がある。特に登録・認定されないと保存に関わる環境整備の事業も進まないというようなはなしには、自治体や国が外部にその価値の有無をお伺い立てお墨付きを貰わないとだめと言っているような一面を感じる。自分たちで本当にその価値を認めているならば外から言われなくてもきちんと整備し守って行けばよいあるいはそうしていたはずなのだが、その意思決定をするほどのものでなかったようで気になってしまうのである。

そもそも私は、世界なんとか遺産というのは、維持したり保存する資金がある国などでは登録する必要はないもので、維持・保存する資金がない国などがその不足資金の援助を受けるために指定を受けるものに限れば良い、と思っているものである。当然保存・維持する価値があることが前提である。その国などがユネスコのお墨付きを得て主に観光目的で維持・保存しようとする程度のものは指定に値しないわけである。

また、維持・保存の資金がある国などは維持・保存する価値があると言うならば指定されずとも資金を投入し維持・保存しその存在も世界にアッピールしていけば良いのである。それができる国などでも権威らしきユネスコの指定を受けたいというのは、その目的が権威に釣られる観光客を招こうとかあるいはその価値が危ういものを権威で裏打ちしようとかいうような下心にあるという気がしないでもない。

私としては世界なんとか遺産は本来自国で保存・維持する力のない国が資金援助要請目的で権威筋に登録申請し審査を受け指定されることで保存・維持する力のない国を支援するという位置づけが良いのではと思っているわけである。そして指定された遺産あるいはその存在地に観光価値がある場合は、地元や国などが望んでいるか否かを問わず権威付けられた観光地にも成り得るおまけが付くわけである。また審査・指定の際、政治化している内容を含む場合はプロパガンダに陥らないように何らかの政治利用排除の仕組みが働くようにして遺産登録がその趣旨を外れ政治的手段に成り下がるのを防ぐことも必要だと思うわけである。


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