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  偏見ご免のたわごと編:  No.233
行動規範_危ないときは納得より即応  2023.06.22
  6月14日、自衛隊の岐阜の射撃訓練場で4月に入隊した18歳のいわゆる新兵の自衛官候補生の訓練中に候補生が射撃訓練の監督や補助をしている3人を撃って2人が死亡、1人が重体という事件が発生したというニュースがあった。

犯人の候補生がなぜそういう行動に出たのか、あるいはそういう行動が可能だったのかについてはまだ明らかにされていないのだが、15日あるテレビ番を見ていたらコメンテーターが何か決まった動作をしないことを注意されたのにかっとなってキレてのことかも知れないと言っていた。16日に見たネット記事には、小中学時代の同級生の「唐突に激高することがあった。友達との関係で、よくわからないところでキレていた。(怒りの)沸点がわからなかった。」というようなことが出ていた。

以上のような情報から私は、犯人は自分はいっちょ前の人間だという意識が強く他人からの批判的意見に納得できる説明がないとすぐかっとなる性格かも知れないという気がした。自分が舐められているとか自分が軽く見られているのではという気配に敏感に反応するのではないかという気がする。以下は、真偽に関係ないただ私の受けた印象から思っただけの私の感想みたいなものである。

むかし多分アメリカの映画だったと思うが、休暇で両親と息子が激流下りをするのを見たことがある。激流下り途中で出会った男たちといっしょに行動することになるのだが、そのうち両親は彼らが凶悪犯だと気づいて露営中に息子を連れて逃げ出そうする。夜になって両親は息子に小声でついて来いと言って逃げ出そうとするのだが、息子は理由を求めて納得せずなんでなんでと騒ぐので、凶悪犯に気付かれ逃げられず両親と息子は正体を現した凶悪犯に見張られるようになる。それで息子もその状況を理解するという場面があった。この息子はかっとなる人間でがなかったが、それなりに自分はいっちょ前だという意識があって親の必死さに緊急事態かもと思うことさえせず自分を主張して、窮地を脱しようとしていた両親を巻き込み窮地に落ち入ることになってしまったわけである。

私は想像した銃撃事件の犯人の自分に対する意識とこの映画の息子の意識について、自分が納得出来ないことに従いたくないという思いが強いところに共通点を感じたのである。つまり自分はいっちょ前だからそれなりに扱われるべきであるという意識がその行動の根底にある気がするのである。そして犯人はまだ未熟で自分が納得しないときにキレる感情を抑制出来なかったのが今回の事件になってしまったのではないかと思うわけである。

もう一つ共通の問題だと思うことがある。緊急事態とか明示的あるいは暗黙的に行動規範がある場合の集団における指示・命令あるいはそれに伴う行動に関する号令についての認識あるいは理解が不足しているのではないかということである。緊急のときや決まったことをしなければならないときにいちいち説明などせず「はじめ」とか「止め」とか「逃げろ」とか「何々に気を付けろ」とか「危ない」とか「行け」とか、状況により大声で怒鳴ったり他に気づかれないように合図や小声で伝えたりすることはよくあるわけである。

訓練とはそういうことを理解し通常の会話とは異なる指揮命令系統の意思伝達に習熟することも目的の一つだと思われる。犯人にはそれが理解出来ていないような印象がある。一般人社会でも指示・命令伝達関係あるいは何人か寄ればそこに行動規範が生まれる。そこには緊急時などには納得させる暇もなく怒鳴ることなども含まれるわけである。普通無意識的にしているが、何となくあるいは明示的に決まった仕切り役の言うこと・指示を聞いて行動あるいは作業をするわけである。だが訓練の出来ていないひとあるいは未熟なひとは自分が納得したやり方でないと突っかかってきたりするわけである。

複数人で行動するとき誰かが仕切らないとまとまらない。自分はいっちょ前だと思うのは自我の発達の証で否定すべきことではないが、納得で出来なくてもやらなければいけないことは多いのである。そして未熟でない人間は先達の知恵の重みを理解出来るし自分より他人が優れているかも知れないという畏れも持っているから、納得が行かなくてもやらなければならないことをやって行くわけである。やってみてそのやり方がおかしいと思うことがないとは言えないが、意見を述べる機会が与えられない場合もある。そういうときは自分が仕切るときにはそういうことをしないやり方にしようと思えばよいのである。お前はどうかと問われればいささか恥ずかしいところもあるが、思いとしてはそうだということである。


補足: 切れやすい人間に育った要因の一つかも


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