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  偏見ご免のたわごと編:  No.071
福島第一原発の汚染処理水_政府が海洋放出する方針とか 2021.04.19
  東京電力福島第一原発の汚染処理水の処分について、政府は4月13日関係閣僚会議を開いて放射性物質の濃度を国の放出基準より下げたあと海に流す方針を決めたということである。

私はもう処理された水は安全なのだが福島から放出するので福島漁業者が風評被害を懸念しているという風に思っていた。それなら処理水をタンカーに積んで遠く沖に出て放出すればよいのではないかと単純に放出の仕方が課題になっているのだと思っていた。ところが、政府の方針が発表されるといろいろ批判が出ている。私の見た範囲では以下のようだが、まだ海洋放出や流出への懸念は残っているようだし、他の方法の検討余地もあるようである。

いわゆる原発平常運転時の冷却水と違う汚染水を処理した水が今回の放出対象であることが前提である。
・トリチウム以外の放射性物質も処理装置・アルプスで完全に除去されるわけではなくタンク内にヨウ素129などが残留しているという報道もあったが、どんな放射性物質がどのくらい残るのか。また放出反対者はトリチウムを含んだ水を放出すること自体を危険と思っているようだが、人体への影響はどのぐらいか。きちんとしたデータを出して理解できるよう公開あるいは説明されていないようである。
・汚染水を水で薄めても放射性物質の総量が変わらないはずだが、総量がどのくらいになり、それが海洋にどのような影響を及ぼすのか。これもきちんとしたデータを出して理解できるよう公開あるいは説明されていないようである。ドイツのヘルムホルツ海洋研究センターが「放出の日から57日で放射性物質が太平洋の大半の海域に広まり、3年後には米国やカナダまで到達する」と試算し指摘しているようだが、影響がないならこんな試算は必要ないはずで、やはり何か懸念があるのではないかと思われる。
・汚染水をモルタルで固体化するという方法もあるらしいし、3年前近畿大が汚染水からトリチウム水を分離する方法を開発したと発表しているらしいが、他の方法を検討・評価した結果海洋放出が最善の方法だとなった経緯がその理由も含め公開されていないようである。
・非難声明を出している国もある。データや検討経過など疑義を持たれないような情報が公開されていないのかも知れない。

それにしても、東電の見込みでは、トリチウムの濃度を海水で100倍以上薄めて、福島第一原発で汚染されていない地下水を海に放出するときの基準未満にすると、処理水の放出完了に30年程度かかると言われているようである。 そもそも地下水が1日1000トンも流入してそのうち400トンが何らかの程度で汚染され続けているとすると、これからも汚染水の処理は続くと思われるがそれも計算に入っているのかどうか気になる。あるいは放出は際限なく続くのかも知れない。

また、いまの地下水の流入対策状況では施設地下を完全密封出来ていないからあちこちから地下水で薄められた汚染水が地中に漏れ出して海に流れていると考えられ、その対策がなされなければ海洋汚染の懸念は消えないようである。汚染水問題の根本解決にはそういう漏れ出し汚染地下水の海洋流出も防ぐことが必要であり、そのためには建屋全体を取り囲むように地中深くにまで壁をめぐらしたいわゆる地下ダムを建設する以外に方法がないらしいのだが、東電も政府もその課題を避けているらしい。

以上、汚染水処理をめぐる問題がどうなっているか、私がネットで見た記事から理解した状況である。なにしろ何がどうなっていて何をすればどう問題が解決されるのかはっきりと分かりやすく情報が公開されていない印象である。


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