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  たわごと編: No.450
 
  2018.03.05 生産性革命_働かせ方改革  
 
  生産性革命とひとづくり革命がいまの政権の重要政策だが、関連法案を成立させようとしている。いろいろ問題もあって生産性向上のための一つである働き方改革の裁量労働制拡大は今回取り下げられたようである。

そもそも生産性すなわち労働生産性とは何かと言えば、「GDP(国民総生産、1年に作り出す付加価値の合計)」を分母の「就業者数×労働時間」で割ったものということである。要は就業者一人一時間当たりの付加価値ということである。

それを上げるに一つは、同じ仕事なら出来高を短い時間で挙げられるようにすることである。極端なことを言えば就労者の労働生産性を上げるには賃金を上げればよいわけである。いまのままでも製品の価格を上げ賃金も上げれば生産性は上がる。良いものを安く売るために賃金を抑えるのを止めて、良いものはそれなりに高く売って働きに見合った賃金を支払えばよいわけである。消費者は欲しいものを高く買うことになるが、賃金も上がっているから実質は変わらない。

これを国家全体に当てはめて言うならば、企業間取引も含めみんながそれなりの価値に対し適正な対価を支払うようにすればよいということである。見かけで生産性を上げるやり方である。そしていままで日銀がお金を過剰供給し政府が企業に賃上げをせよと言ってきたやり方である。適正生産・適正販売・適正消費してやって行けるようになればそれはそれでよいということになる。

いまの政権の重要政策の一つの生産性革命だが、国会を見ていると働き方改革に議論が集中している感がある。働き方改革で同じ仕事を短い時間でやれるようにし、ひとづくり革命で新たな働き手がいままでより効率的に仕事を出来る能力を得て労働時間を少なくなれば労働生産性は上がる。

しかしGDPを増やすこと、すなわち製品価格や賃金を上げていく成長戦略をお座なりにしてコスト削減ばかり先行するようになれば良いものを安く売り賃金は上がらないいままでの継続である。生産性を上げるということは本来は付加価値の高いものをそれなりの価格で売りそれが賃金も上げるということにならないといけないわけである。

また現状、日本は生産性すなわち一人当たりGDPは世界で20位台後半ということである。そして労働者の質が世界一高い国とも言われている。そういう労働者に自殺者が出ると言うことは、よほど働かせ方に問題があるということである。そしてまた生産性が低いということは安く働かさられているということである。働き方改革による就労者の仕事の効率化よりは働かせ方改革で労働環境あるいは慣行の改革が先行すべき課題のように思える。

また、生産性革命がまず目指すべきは、新たな高付加価値事業の創造である。それが主体でなければならない。それを達成するまでは既存事業の生産性を上げることも必要でコスト削減が手段となるからコスト削減イコール生産性向上と誤解しやすい。そしていまの生産性革命のための働き方改革やひとづくり革命もコスト削減のための働き方あるいは働かせ方や人材育成を狙ったもと履き違えやすい。働かせ方改革にこそ重点を置いて同時に進めなければならない。政府や経営者がそれを十分理解して本来の革命を進めてほしいものである。現状、就労者を柔軟なかたちで働かせようとしているような印象が強い感があり気がかりである。


補足: 
裁量労働制拡大案取り下げ_厚労省のデータの不備
働き改革の目玉の裁量労働制拡大案を安倍総理が取り下げたが、その原因となったのは厚労省のデータ不備、一般就業者と裁量労就業者をきちんと比較できるような条件で調査したデータでなかったということにある。取り下げは安倍政権に打撃を与えるものだが、厚労省がなぜこうも不備なデータを政権に提出したのかということについて、もしかしたら厚労省官僚が安倍政権潰しを狙っている勢力とつるんでわざとやった、いわゆる反逆行為ではないかという見方もあるようである。私もデータ不備内容の稚拙さからそれなりの官僚が犯すようなミスとは思えないのでその見方は当たっているのではないかという印象を持っている。


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