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  たわごと編: No.233  
  2014.07.07 労働時間規制緩和あるいは裁量労働制_残業代ゼロ  
 
  先日NHKのTV番組でだったか、労働時間規制緩和の話題を取り上げていた。政府が被雇用者の労働時間規制の緩和しようとしているのだが、一部では残業代を支払わない契約を認めるという面を強調して残業代ゼロにする動きと批判しているようである。実際は例えば年収1000万円以上のスペシャリストなどに対象を限定してその仕事に見合った待遇をということで、普通の被雇用労働者例えば事務員とかが残業代ゼロになるわけではないのに批判が出ているのは、裁量労働制の類の範囲が拡大され被雇用者が求められる成果目標が適正に設定されない危惧があるからと思われる。

私の経験では、裁量労働制の類での残業代ゼロは何十年もむかしからある。ある資格者あるいは管理職になれば、就業時間はフリータイムになり残業代もつかなくなる。そして給与があまり減らないようにあるいは少しは増えるようになんとか手当がつく。しかし例えば開発的な仕事をこなす職場では課題が難しすぎるのか能力不足なのか成果が普通に働いていては期限内に出せないことが出て来るとか、部下が残業していれば上司は帰ったでは済まないことが多々ある。責任を全うするには労働時間は増えサービス残業しているのと同じ様相になる。社内限定スペシャリスト待遇みたいな裁量労働制の類は人件費抑制の一面もあるわけである。

先日のTV番組では、与えられた納期までに求められた仕事の成果を出すのに朝早くから夜遅くまで何日も過大な残業をしているのと同じように働かなければならず無理して心身不調になった例があった。こういう成果目標が適正でない裁量労働は多々あるのではないかと思われる。多分残業に当たらないが長時間働いての過労死もあって、こちらの方が残業が多いと分かっての過労死より状況が深刻である。残業代ゼロ法案という批判を退けるには、労働時間規制緩和の対象(者)と成果目標の適正化がどう担保されるのかが重要である。そうでないと今回の労働時間規制緩和が名ばかり資格者や管理職で人件費抑制に利用されないとは限らない。

被雇用者スペシャリストの中には資格や実績などで労働市場で客観的に評価される人材がいて他社に引きぬかれたり、処遇に不満で転職・独立するひとも出てくる。そういう人材を失いたくなければ会社は本来のスペシャリストであるそういう人材にそれに見合った待遇を与えられるというのが労働時間規制緩和の趣旨だと思われる。しかし労働者団体より経営者団体が緩和を望んでいる裏には人件費抑制の願いがあるかも知れない。そして社内限定スペシャリスト待遇のようなひとたちが増えて、そういう人たちは自分で成果目標を設定するというよりは過重な成果目標を与えられる裁量労働制のもとで働くということになる可能性が大いにあるのである。日本を代表するキヤノンやパナソニックなどの偽装請負問題の記憶をまだ忘れられない私は、経営者団体や大会社が苦境になったときのやり口がまた脱法的になる可能性はあると思っているのである。


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