My logbook : 屋久島方丈記 
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  たわごと編: No.422  
  2017.09.18 資本主義のこれからと成長戦略  
 
  私はみんながある程度充足してしまえばそのあと成長しないのではないかという気がしていたので、何年か前に「資本主義の終焉と歴史の危機(集英社新書・水野和夫著)」を読んでその見方になるほどと思った。そして同じ著者が今年出した「閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済(集英社新書・水野和夫著)」に新たな展開があるかと期待して読んだのだが、くどい感じであまり読みやすい本ではなく前の本の補足という印象だった。

これらの本の見方を私なりに受け取った意味合いは以下のようである。資本主義は終焉を迎える。例えば日本が発展し充足状態になったらある分野のものを国民みんなが追加して買う必要を感じなくなり、需要は買い替えが主になる。そこで新たな投資をしても需要は大幅増加しないのだから、資本投下の利益率は低迷する。これが既存のあらゆる分野、あらゆる世界で起こるようになったら資本主義は終焉を迎える。日本の低金利・低成長は資本の投下先が少ない、すなわち資本主義の終焉に向かいつつある兆候だということである。

資本主義の終焉を遅らせるには、新たな投資先が必要でいままでと違った分野など新規需要が起こるようなイノベーションが出て来るかどうかである。イノベーションが起こって何かが出来て新規需要が発生してもそのなにかも遍く行きわたれば買い替え的需要しかない時期が来る。そして永遠にイノベーションを繰り返すことが出来ないとすれば結局は資本主義は終焉を迎えることになる。そして低金利・低成長の定常の状態となる。そして例えばEUみたいな地域統合体のような社会になって行くのではないかということである。私はむかしの江戸時代の日本ような社会を想像してしまった。

ところが安倍政権やその他いろいろな人が、いまの日本の低成長傾向を何とかしようと成長戦略・政策を論じている、それは的外れではないかということのようである。そうであれば、低金利・低成長の定常の状態になりつつある社会で成長することを論ずるということはどういうことを意味するのか。私の思うに、労働生産性を上げることによる成長、すなわち人口も増えず需要は買い替え的なもの主体で産業・仕事もそれに見合った規模の定常状態では賃金を上げることを意味するのではないか。賃金が上がれば物価も上がる。それでGDPが増えるが内実は何の変りもない。海外から見れば為替で調整されて経済成長はしていないのではないか。そうならば成長戦略・政策というのは賃金のバランス配分に行き着くのではないか。私はそんな気がしたのである。

私はそういうふうに受け取った。そうであっても労働市場改革・特に解雇規制の緩和による有望産業への人材移動促進、教育制度改革・特に天才的子どもの早期高度専門教育などによる有望産業創出人材の育成、既存有望産業分野における従来規制の緩和・撤廃による有望産業・企業の成長促進と衰退分野・企業の市場退出促進、これらは定常状態の維持・社会の新陳代謝のために不可欠ではないかと思っている。


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