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  たわごと編: No.371  
  2016.11.06 豊洲移転延期判断の行方_安全と安心  
 
  オリンピック会場見直しと豊洲新市場への移転延期は小池都知事の就任直後の大パフォーマンスである。両方とも都知事が当初目論んでいた流れからはずれてきている印象がある。つけ火して煙を喜ぶはずが思わぬ方向へも火が拡がって鎮火に手間取りそうである。それでもオリンピックはIOCなど外的要因があり満足いく結果にならなくても言い訳がたつが、市場移転問題は安全性の他に都庁統治問題も絡んでおり東京都が全責任を負う問題である。そしてまた安全性問題は安心という市民感情問題を伴っているから舵取りによっては今後の小池都知事の影響力に影を落とすかも知れない。

そもそも安全性を理由とした市場移転延期判断は都知事の市民感情を煽りながらパフォーマンスをする一面もあって、安全と安心の問題がいっしょくたに取り上げられているように思われる。もともと新しい市場に移転する計画が推進されて来たということはその必要性は認知されていたものと思われる。そして移転計画が進んでいる中で問題が出てきたら、それを回避したり排除する対策をして実現に漕ぎつけようというのが普通ではないかという気がする。

ここで私が言う安全とは科学的合理的に市場利用者や市場流通商品が問題になる影響が出ない環境であるという判断のことである。安心とは安全であるとの判断およびその他の安全を疑う根拠のある疑問について、科学的あるいは合理的に安全であると納得する感情である。安全面で問題なしと判断されても安心できないと反応するひとが多い場合は疑問の出ない納得できるような安全判断の説明が出来ていないと思われる。私なら安心の根拠は自分の疑問が解消するような安全判断によるしかないからである。

これまでの移転を巡る動きを見ていると安全・安心問題よりは政治的な印象がある。政治的に利用して問題を煽ったりしないで、どうすれば市場を早期開場できるか、また開場後の改善をどうしていくかについての議論をまずやったらどうかという気がしている。小池都知事の市場開場延期理由となった有害物質の観測回数未了問題が、地下空間の存在や微量有害物質の存在で公開されていた建設計画を無承認で変更した責任問題に変質して、小池都知事の議会・対抗勢力や都職員への支配力獲得の試みが思わぬ方向へ発展して、開場延期騒動決着の目論見が狂った感があるが、私はまずは開場への努力を優先したらどうかと思っている。

私は、いま観測されている有害物質のレベルが実際に市場利用者や市場流通商品にどのような影響があるのかそれをはっきりさせるのがよいと思っている。事前判断においては厳しい基準で建築可否を検討・対策するとしても、建設すると決めその対策を講じて建築した後でその当初の基準で移転可否を判断するのではなく基準オーバーの程度による実害の有無や対策の実現性を検討すべきではないかと思っている。実害はないあるはネグリジブルならば運用しながら手直しをしていくのが現実的対応ではないかという気がしている。その安全性を安心できるように説明納得させるしかない気がするのだが。

ところで地下空間構造についてのことだが、建築の素人の私の感想である。盛り土の上に基礎を造って建物を建てるより盛り土表面から下に基礎を造りその上に建物を建てる方が考え方としてはよいのではないかという気がする。盛り土の上に基礎と建物が建つということだと、利用する建物の作業床が二階の床みたいになりその床にトラックなどが地表からアクセスするためのスロープとか高床スペースが必要だしあるいは地表で荷下ろしをするとすれば外部にエレベータが必要になりそうな気がする。そして地表基礎内部にも配管スペースなど建築に当然必要な空間の他に建物下の有害物質観測や対策のための作業空間も必要になるはずである。その他解決しなければならない課題も増える可能性がある。

そういうことを考えれば、盛り土表面から下の地下に基礎をつくり作業空間を設ける構造にしようというのは合理的発想である気がする。地下空間の天井あるいは作業床の構造を適正にすれば作業床レベルで有害物質は地表に基礎を造る場合と同等に出来るはずである。しかし盛り土の上に基礎と建物を造るいう考えに凝り固まった頭の固い人間がいてあるいは空気があって、その考えを覆せない合理的思考の実務者たちが建物基礎を盛り土しないレベルから立ち上げる案を実際の建設計画にしてしまったのではなかろうか。多分その方が費用も削減されているのではないかという気がする。

補足: 
何をもって環境基準値と言うのかの問題
2017.01.22
いま問題にされている環境基準値というのは飲料水に適用される基準であって、豊洲市場の地下水のように飲用にも清掃用にも使わない場合はもともと問題にはならないらしい。地下水の環境基準値というのは70年間毎日2リットル飲み続けて健康を害する人が何千人に1人出るか出ないかという数字だし、ベンゼンやごく微量のシアンが検出されたとしても地下水を利用することのない地上の豊洲市場での生鮮食品の取扱いに影響を及ぼすものではないということである。飲むわけでもなく使うわけでもない地下水に環境基準を設定したことが全ての混乱の原因で、それを正さず問題だと騒ぐ方が問題だと言う向きもある。地下水の環境基準という市場の安全性とはほとんど関係ない数値によって市場の安全性に問題があると言い続ければ、小池知事の信頼性に跳ね返ってくる可能性がある。


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