屋久島生活の断片・偏見ご免のたわごと編
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No.193 屋久島(109):隠れ戦略のこと  H17.11.07)

本文は高速船新規参入をめぐる騒動に対するやぶにらみの感想なのだが、まずはその騒動の経緯を説明する。岩崎グループが独占していた種子島・鹿児島の高速船航路に市丸グループが新規参入しようとしたとき、岩崎グループが国の定める離島航路サービス基準を満たさないからと言って邪魔をし、市丸グループはフェリーを新造し基準を満たして参入を果たした。

市丸グループの新造フェリー投入を受けて、岩崎グループと運航協定を結んでいたフェリーが撤退、一転岩崎グループがサービス基準を満たさなくなった。運輸局が改善を求めついには運航停止命令まで行ったが、その間裁判やら政治的な動きやらでごたごたした。最終的には岩崎グループが中古フェリーを購入し運行することで収束した。

ついで市丸グループは屋久島・鹿児島の高速船航路に進出、当初は種子島航路で運航のフェリーを同航路にも投入してサービス基準を満たす計画だったが、今年で岩崎グループと屋久島航路運航協定が切れるフェリーが協定を継続せず、市丸グループに鞍替えして協定を結んだ。

ここでまた岩崎グループは屋久島航路でもサービス基準を満たさないはめになった。そこで所有の貨物船を改造しフェリーに仕立てサービス基準を満たすことにし、11月から運航を開始した。現在従来フェリーに対し協定破棄無効と損害賠償を求め係争中である。

高速船新規参入をめぐる騒動の経緯
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私はこの一連の高速船騒動をウォッチしていて、なぜ県下第一とも言われる岩崎グループが評判を下げるようなへまっぽいことを次々やるのか気になってきていたのだが、以下それについての感想である。

私は以前から岩崎グループが評判を落としそうなリストラを敢えてやらなければならないほど状況が苦しいのかなと思いつつ、奄美のバスや根占のフェリーに関する報道を見ていた。奄美のバス撤退騒ぎ、結局はよいとこ取りで完全撤退しない。山川・根占のフェリーは県や地元の協力・支援が少なくやっていけないと撤退、県や地元が自社に有利な協議に応ずれば再開もありと様子を見ているようである。結局は地域社会で不評を買ってでも、岩崎グループは見込みのない事業を縮小し収益構造の安定化を図る守りの戦略をとらざるを得ない状況にあるのかもしれないと思ってみていた。

当初の鹿児島・種子島航路への高速船の新規参入阻止(サービス基準不適合を理由に反対)の動きも、高速船航路独占の現状を維持しようという動きのように見えた。しかしなぜか、新規会社が新フェリーを造ってでも参入するということがはっきりしても、その後の対応策が後手後手である。

自社の提携するフェリーが新規参入会社の新造フェリーに対抗できないと撤退してもすぐに手を打たない。運輸局にサービス基準不適合の改善命令を出されてから、裁判をするやら中古代替フェリーの購入をするやらしている。新規会社がさらに鹿児島・屋久島航路にも参入すると、自社の提携するフェリーが新規会社との提携に鞍替えしてしまい、鹿児島・屋久島航路でもサービス基準不適合となる。今度は先に中古で購入した種子島航路のフェリーを撤退させ、自社の貨物船を改造したフェリーを屋久島と種子島の航路に投入することにしたが、提携していたフェリー会社の提携破棄無効と損害賠償の訴訟を起こしているようである。

このような動きを見ていると、わざわざ不利な道を突き進み、中古フェリーを購入したり、すぐそれを撤退させるために自社の貨物船をフェリーに改造したりの無駄をしているように見えてしまう。しかし県下第一といわれる企業グループが単純にへまをやり続けているとは考えにくい。

そこで考えてみたのだが、独占して事業をしていると競争がない反面、安定志向で縮小均衡に陥ってしまう恐れがある。公共的事業では地域社会とのしがらみもある。これからは地域社会にも刺激を与え他社とも競合しながら、すなわち経営環境に混乱・変化を生じさせ、そこに新たな商機を創造し事業拡大あるいは利益効率の増大を図りたい。そんな戦略を採っているのではないかという見方もできそうということである。

そういう観点から見れば、奄美のバスは独占をやめて好いとこ取りしたのかもしれないし、根占のフェリーも自社の自由度を拡張したのだということかもしれない。苦しいからだけのリストラではなく何か戦略があってのことだとしたら、高速船事業とそれと密接にかかわっている交通・観光事業あたりで、そのうち新たな攻勢に出始めるかもしれない。

好意的過ぎるかもしれない感想ではあるが、自ら地域社会や業界に混乱状況を作る中でさらなる飛躍を図ろうとしているのではなかろうかという気もするのである。あるいはそれはほめ殺しで、実は門外漢にはまったく察知できない事情、例えば強大な外部勢力の侵攻とか国土・西武のような問題に備え、目先不利益になるのもいとわず事業基盤の改変を図ろうとしているのかもしれない。

補足1: 観光事業から撤退のこと  (H19.01.10)

岩崎産業が10日の賀詞交換会で、主力の観光事業から2、3年かけて撤退し、保有する5つのホテル(屋久島いわさきホテルを含む)の事業売却を進める意向を表明したそうである。負債が相当多額に昇っているので採算性がよくないところを切っていく流れに見えるが、主力事業を切ってどう変身しようとしているのだろうか。

補足2: 勘繰りのこと  (H19.02.04)

岩崎産業のグループ企業 が、新種子島空港の用地周辺の市丸グループなどが所有する土地の購入で公金違法支出があったとして、当時の県知事や県の幹部職員、市丸グループの社長らに対し、その24億円余の支払いを請求するよう県に求める裁判を起こしているらしい。

いわさきグループがバスその他の交通輸送事業で撤退騒ぎや裁判をしたり、観光事業から撤退の方針を打ち出したりしている。そしてまた
今回の裁判。それを聞いて私が直感的に勘繰ったのは、地域貢献の公器のしがらみを捨てて、なんでもありの収益至上会社に変身しようとしているのではないかということである。成功するかどうか知らないが世界の多極化を目指す米グローバル企業の小型版狙いではないかという気がする。


 
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