屋久島生活の断片・偏見ご免のたわごと編
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No.191 屋久島(108):合併問題まとめのこと  H17.10.10)

[後尾に補足1(H17.10.31)〜補足3(H18.08.31)でその後の動きを記載しています。]

まずはごたごたした問題の経緯である。屋久島の上屋久町と屋久町の合併特例法適用を目指した合併問題は、H17年3月上屋久町議会で否決され頓挫した。屋久町は住民投票賛成多数、議会も賛成だったが、上屋久町では住民投票は31票の僅差で賛成多数、議会では1票差で否決となった。

その後、上屋久町では合併賛成派の住民グループによる否決議員のリコール運動が起こった。(これが私に違和感を抱かせ、今日まで合併問題をウォッチすることになった発端である。合併の是非を問う住民投票は直接民主主義の投票ではない。31票差(4007分の31=0.77%)では議員を拘束する決定打としては弱いように思われた。議員の1票(15分の1=6.67%)の重みを大幅に下回っている状況では、議員の1票差が町民の意思を反映していないと言い切るには無理があると思われたからである。)

リコールの署名が規定数に達し本請求されたが、リコールの住民投票前に否決議員と議長が辞職した。その補欠選挙には否決の元議員は立候補せず、立候補者は定数内だったため全員無投票で当選した。リコール運動の代表者も当選して議員になった。

合併賛成派が多数となった補選後の議会では、法定合併協議会の再開と合併推進に関する決議を可決し、また町長への一般質問では、複数の議員が町長の合併への決意を確認したとのことである。

またリコール運動に少し遅れ他の住民グループが議会解散の運動を展開していたが、9月25日議会解散の是非を問う住民投票が行われ、議会解散賛成多数で出直し選挙が行われることになった。メディアの辞めないのかとの質問に町長は辞任させたいなら不信任しろと言っているとのことで、当局と議会が同時に審判を受けることにはならないようである。以上9月26日までの経緯である。


ここで合併問題の一連の動きについて、私のやぶにらみかも知れない感想を述べてみたい。私はまったくの個人的わがままでどちらかといえば合併はして欲しくないと思っている人間である。しかし地元の人たちが合併を選択したからといって、目くじら立てて非難したり反対活動をするような強い信念を持っていないノンポリである。ただ、国の見せるアメで財政の量的論議では優位に立つ合併志向勢力に感情的と言われかねない質論議で対抗せざるを得ない自立志向勢力ということを考えると自立志向勢力に同情的である。しかし賛成派が合併志向勢力、反対派が自立志向勢力としての純粋な信念を持って行動しているかどうかについては疑問を持っている人間でもある。そういう私の感想である。

私は上屋久町の先の合併の意志を問う住民投票の31票差で賛成多数となった結果は、その僅差から考えて住民の意思は合併を急ぐなということだと解釈していた。今回の議会解散の是非を問う住民投票が大差で解散賛成多数という結果は、その解釈を裏付けるものだと思われる。また当時の合併議案を否決した議会は住民の意思を反映した判断をしたものと思われる。

隣の町にいる私に聞こえてきた限りでは合併議案否決後、合併賛成派の非難の声が大きく活動も活発な感じがあって、合併賛成派の状況判断がずれているのではと違和感を持っていたのだが、その感覚に間違いはなかったようである。

当初私が見聞きした情報では両町が合併協議で完全合意が得られないまま、特例法期限内に合併を申請しようとことを急いだという印象を持っている。また住民投票の結果を読み間違って議会に合併議案を出した。そういう意味ではごたごたの責任は両町当局にもあると思われる。

合併協議では量的な問題、質的な問題いろいろあったのではと思うが、私たちが広報で知らされたのはほとんど量的な問題や手続き問題の論議結果である。そして住民投票前の情報では、合併協議会の課題のうち合意に至らなかったのは屋久町の土地改良問題に絡む負債の取り扱いに関する事項のみということだった。そしてこれが上屋久町の合併反対議員の納得していないところと表向き言われていた。

私の見るところそれだけが問題なら、屋久町が合併しない場合破綻するのを隠しているとでもいうのでもなければ、それは乗り越えられる課題という気がしている。合併協議では量的なもの財政的なもの手続きなどが主な課題である。目に見える取り決めは論議しやすい。しかし人の気持ちの問題あるいは質の問題はなかなか整理しにくいのではないかという気がしている。残った問題を楯にして裏になにかあるのではないか。上屋久町の内になにか問題があるのではないかというのが私の疑問である。

上屋久町では数年前町長選挙のときある勢力が屋久町の住民を住民票だけ移転させるということが発覚し問題になったことがある。役場の不正事件には権力のしがらみによるものもあるらしい。離れた上屋久町のことだからよく知らないのだが、なんか権力争い勢力争いがあるのではと思わせるところがある。以前から異なる勢力間に確執があるというはなしも見聞きすることがあったし、住民投票前に家に配られた意見ビラにもそういうことが書いてあったようである。

配られたビラからの印象では合併可否を問う住民投票に際しては、賛成・反対両派で相当の中傷合戦があったようである。屋久島の雑誌まで政治化した主張を出していた。屋久町の私のところへは賛成派のビラしか入らなかったが、中傷されたとか相手陣営の非難とか反対意見にたいする攻撃的な表現が盛り沢山だった。ビラからの印象では賛成・反対両派ともその主張を理解させ納得させるよりは賛成はとんでもないあるいは反対はとんでもないと罵り合っている印象を持った。

上屋久町議会が否決してからは、合併賛成に凝り固まっている人が憤懣をぶちまけているかのような否決に対する批判意見や罵詈雑言がネットでも見られ、どちらとも強く押すほどのこともない私から見れば、他の意見にも耳を傾ける余裕もない雰囲気につつまれているようで気持ちが悪かった。冷静さがない分なにか裏にあるのではないかという気がしてしまった。

反対派議員へのリコール運動が起こり反対派議員は辞職したが、補欠選挙をすれば賛成派が議会で多数派になることは目に見えている。町民全体の意向を反映するためには議員全員辞職が妥当と思われるが、民主主義民主主義と声高に言っていた感のある賛成派が辞職しないのも不思議だった。

そして9月25日の議会解散を問う住民投票では議会解散賛成多数となった。住民は議会を再構築することを望んでいることを示した。2回の住民投票結果を合わせて読み取れば、住民は合併は避けて通れないと思っているようでもあるし、合併を強引に進めることに不安があるということのようでもある。両町当局は先の合併の是非を問う住民投票の結果を、合併を急ぐことはない、と判断しておくべきだったのだと思われる。

今後は合併賛成にしろ反対にしろ、不安を醸し出している本質に迫る必要があると思われる。新たに合併協議が始まることになるならば、合併論議の裏にある不安感情を解きほぐすことに気を配る必要があるように思える。

私は隣の町にいて上屋久町の細かいことはよく分からない。しかし合併議案否決後の一連の動きの報道を見ていると何か上屋久町には問題があるのではないか、そういう印象をぬぐえない。賛成・反対ということの論議以前のなにかがあるが、それを賛成・反対の顔の下に隠している、そして正義の味方を自負する一部の人などはその一方に乗せられて騒いでいるのではないかなどと考えてしまうのである。表に出ていない問題があるのなら上屋久町内で解決してから、両町の合併論議をして欲しいという気がするのである。

だから私は3月に合併しないことになってよかったのではと思っている。合併した後で新町に胡散臭さを引きずったり、あるいは旧屋久町域まで巻き込んでごたごたしたりして欲しくないのである。

また両町とも今後合併特例債がなくても新たな法律の条件下で合併しようと協議をすることになったならば、再度合併の是非を問う住民投票をする必要があると思われる。先の住民投票が前提とする法律・条件と今後の法律・条件とは異なるからである。新たに住民投票をするときには今回の合併をめぐるごたごたから学んだことも反映されるのだから、住民判断もより深い理解のうえに行われると思われる。

経緯関連記事 >>
  No.170 両町合併のこと(3)  No.171(4)  No.175(6)  No.182(7)  No.188(8) 


補足1: 上屋久町出直し町議選のこと  (H17.10.31)

報道によれば、昨日行われた町議選では、合併賛成派が過半数を制したということである。

住民投票では僅差で合併賛成多数、その後の議会では1票差で合併議案否決。それで合併反対議員のリコール運動が起こり反対議員辞職。それを受けての補欠選挙では反対派議員立候補せず議会は賛成派一色となるも、議会解散を求める住民投票でその議会は解散。そして今回の出直し選挙で合併賛成派が過半数を制したというのが経緯である。

以下、私の感想である。町民は当初から次のように判断していたということではなかろうか。

合併賛成派一色の議会を解散させたのだから、町民は前回状況での合併見送りは住民意思からかけ離れたものではないことを示した。しかし、出直し選挙で合併賛成派を多数選んだということは、今後の方向としては合併を避けて通れなさそうだが、ことを急がず慎重に進めて貰いたい。

つまり前回の合併条件下での合併はつぶれても可、今後新条件下での合併は慎重に論議して進めて欲しいということのようである。

補足2: 新たな合併期日のこと  (H18.03.31)

上屋久町議会が新体制になり、合併協議会も再開されたのだが、そこで合併期日を来年の3月31日にすることにまとまったらしい。また今回県に勧告権が与えられたが、他県では知事が市町村の自治に介入することに慎重なところが多いという状況の中、鹿児島県は上屋久町・屋久町の合併を推進すべしとして活動しているようである。

私は、急ぐことはないと思っている。この3月31日までに合併した市町村の実状をよく分析するにはしばらく時間の経過を待つ必要がある。合併した市町村の合併の功罪をよく吟味してからでも遅くない。それでこそ、この3月31日までに合併しなかったことが活きてくると思われる。

補足3: 合併急がずの動きのこと  (H18.08.31)

上屋久町の議会に合併を急ぐ必要はないという動きがあるという話を耳にした。議員連中に急いで合併すると昨年の選挙で議員になったのにすぐ失職することになるが、それは嫌だという思いがあるからだという見方もあるようである。私としては、合併した他の市町村の実態がだんだん知れるようになってきて、もう少しよく考えた方がよいという考えが出て来たものと思いたい。

No.227 屋久島(126):合併先送りかのこと  (H18.10.09)


 
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