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  偏見ご免のたわごと編:  No.213
まつばんだ_その意味は  2023.03.23
  最近テレビで何回か屋久島の古謡という「まつばんだ」が琉球音階の要素が含まれているのを含めその伝承に謎が多いとして、その謎を追うような番組が放送されていた。私は「まつばんだ」と聞くと、もう亡くなっている「まつばんだ交通」の前あるいは元社長のことを思い出す。大分前のこと、わが家の近所に引っ越して来て、その家のそばに何かが彫ってあるような石の柱か祠かを建て毎日のようにお経をあげながらカチカチ何かをたたいている音が聞こえるようになった。しばらくしてそのひとと話すようになり、クラッシック音楽が趣味で鹿児島でのコンサートに行っているとか、クラシックのCDを聞いているとか言うのを聞いて、私が組み合わせたわが家のオーディオで私の持っているCDを聴かせたら、同じオーディオを自分も欲しいから入手してくれと頼まれ、手配したことがある。台は自分で注文して作ると言っていたが、その前に事件に遭って亡くなってしまった。

そのひとと話し始めたころ「まつばんだ」はどういう意味かと思い調べてみたがよく分からず、私はそのひとが宗教的な志向を持っているようだったので、「悟りを得た神仏がいるところ」そしてそれは「屋久島」でもあるとでもいう意味から付けたかと推量していた。別に「屋久島交通」があるのでその名は付けられないから「まつばんだ交通」にしたのならそれはありかなと思ったわけである。そのひとは家の周りの土地を買って寺を建て地元のひとの集まる場所にしたいとも言っていたので、その当時はそれなら当たりかもと私は自信を持ってそう思っていたわけである。

そう思っていたのだが、最近古謡で「まつばんだ」が取り上げられているのを見て気になって「まつばんだ交通」のホームページを見てみたら、屋久島では岳参り(山岳信仰)に因み、おまんだら(曼荼羅)から「まつばんだ」に転じたものと口碑にいう。まつばんだの歌詞にも『唄のはじめはクゲジがもとよクゲジ唄えば空飛ぶ鳥も羽をすぼめて留まるほどに川の淵瀬の滝水さえもクゲジ唄えば留まるほどに唄じゃござらぬお経でござる』とある。クゲジは「口説」で「功徳」にかけ「まつばんだ」の意は『神仏の恵に感謝し天地一切の万物と和し現世・来世に幸をもたらす行い』を念じるものである。と書いてある。となれば、私の知る前あるいは元社長はその意を社名にしたということになる。

ところでネットで見たところでは、古謡といわれる「まつばんだ」の歌詞として、
『サー屋久のお嶽をおろかにゃ思うなよ
 金のな 蔵よりゃ なお宝な
屋久のお 嶽のシャクナゲ花よな
 年中な 蕾で 一度咲すな
うれしゅめでたの 若松さまよな
 枝もな 栄える 葉も繁るな
花の盛りは 三月四月よ
 五月な 長雨で すたれ花よ』
しか見当たらない。

だが、「まつばんだ交通」のホームページに次の歌詞も「まつばんだ」の歌詞として載っている。
『唄のはじめはクゲジがもとよ
クゲジ唄えば空飛ぶ鳥も
羽をすぼめて留まるほどに
川の淵瀬の滝水さえも
クゲジ唄えば留まるほどに
唄じゃござらぬお経でござる』
歌詞は、いろいろあったのかも知れない。謎ときにはそれらも考えないといけなさそうである。

さて、以下は私の言葉遊びあるいはこじつけ遊びみたいなものである。
まずは「まつ」を「松」と見てのことである。
ネットで見たところでは、「まつばんだ」は「松万歳」や「松葉の座」だという説もあるということである。空海生誕の地、善通寺に曼荼羅寺という寺があって、そこに空海手植えの不老の松があるということなので、空海に関連する意味があるかも知れない。

私が「松」と見て、「ばんだ」は「万朶」と見るとしたら、「松」の枝が垂れ下がっている様子を表しているということにしたい。屋久種子五葉という屋久島と種子島にのみ自生する胸高直径2m以上、樹高30m以上に達するマツ科マツ属の常緑高木の枝の生い茂るさまを「屋久島」になぞらえているのではないかと見るわけである。

次に、「まつ」を「祭る」が訛ったと見る。鹿児島弁で「まつっ」、「まつっばんだ」が「まつばんだ」になったという見方である。この場合は「ばんだ」は「まつばんだ交通」の言う曼荼羅の訛ったものと見れば、曼荼羅を祭るということで、「まつばんだ交通」のホームページにある意味ということになりそうである。

次に、「まつ」を「末」と見たらどうか。曼荼羅の世界の行きつくところ、究極の悟りの境地というのもありかも知れない。また、「待つ」と見たらどうか。曼荼羅の世界を待つ、それなら悟りの境地への願望かも知れない。いずれも「屋久島」を曼荼羅の神仏のいるところとしてあがめて「まつばんだ」と呼んでいるのかも知れない気がしないでもない。
以上、暇人のお遊びである。


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