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  たわごと編: No.398  
  2017.04.17 テロ等準備罪_ゲバ棒騒ぎ共感派は怖がるかも  
 
  テロ等準備罪(いわゆる共謀罪)を創設する組織犯罪処罰法改正案が国会審議に入った。この法案は、組織的で重大な事件を未然に防ぐことが目的であり、国際的な犯罪防止を強化するための国際組織犯罪防止条約への加入条件を満たすことも含むということのようである。

目的自体には問題なさそうだが、野党などは共謀罪は国による国民監視体制に繋がるとして反対している。そもそもの国会審議の目的は国民の生命・財産をテロや組織犯罪からどう守るかというところにあるわけだから、具体的になにをどうすれば問題なく実効が上がる法律になるのかをということを論議することが必要ではないかと私は思っている。

反対意見としては、共謀罪が出来ると社会の監視の目が厳しくなる、警察による過剰な捜査が行われる(電話やメールなどの盗聴、GPS捜査)、プライバシーが侵害されるという感覚的な意見がある。また共謀の定義があいまい、従来の刑法学の基本的考え方から外れるという法律的問題点の指摘もある。

しかし共謀罪というのは、特定の組織に加盟しその組織を活動基盤にした複数の人々が目的や計画を共有してこそ共謀が可能となるのだから、普通のひとにはあまり関係ないと思われる。そして多分いろいろな団体のうちでもテロや組織的犯罪を肯定したりそういうことに共感をもっている活動団体は共謀罪の成立を恐れていると思われる。どんな組織にも属していない一般人は怖がる必要はないと思われる。

共謀の定義があいまい、従来の刑法学の基本的考え方から外れるという指摘に対しては国会で具体的論議を尽くし、また新たな刑法の考え方を国会で構築すればよい。監視の目が厳しくなるとかプライバシー侵害とか過剰捜査の不安については、国民の生命・財産をテロや組織犯罪から守る効用とのトレードオフの問題である。

重大事故を防ぐための教訓として、ハインリッヒの法則と呼ばれる有名な経験則がある。具体的には、1件の(重傷者が出る程の)重大な事故・災害が発生した場合、29件の(軽傷者が出る程の)軽微な事故・災害が既に発生しており、300件のヒヤリ・ハット(怪我人は出ないもののヒヤリとした出来事)が既に発生している、というものである。

これを援用して考えるに、重大な被害をもたらすテロや組織的犯罪を防ぐには、危険予知訓練のような訓練を重ねた要員のちょっとした状況・事象からその兆候を見極める感受性が必要となる。重大事故は何百倍もの軽微な兆候に対処しなかったがために発生するとすれば、重大事件も何百倍もの軽微な兆候に対処できなかった結果発生する可能性があるわけである。軽微な兆候を見逃さなければ数少ない重大な兆候を見逃す可能性は低くなる。どういう手法がとられるにしろ何らかの監視的手段は必要で、その程度は国民の生命・財産をテロや組織犯罪から守る効用とのトレードオフの問題であり、国民はそれなりに許容すべきものと思われる。

野党など反対勢力は、感覚的理由を掲げての反対や審議を尽くしていないとメディアにアッピールするだけで具体的提案で与党や推進勢力を納得させる論議をしないいつもながらのただの騒ぎをすることなく、国民の生命・財産をテロや組織犯罪から守るにはどうすればよいのかという答えを出すようにをしっかり議論して欲しいものである。またメディアも感覚的意見を囃すだけでなく危機対応という観点からよく吟味した報道が必要ではないかと思われる。


補足1: 
ネットのある記事から
         
 _共謀罪法案のポイントと反対理由などのまとめ
共謀罪法案のポイント:
・適用対象はテロリズム集団、暴力団、薬物密売組織などの
  組織的犯罪集団を想定
・対象犯罪は277
・航空機を乗っ取る目的で航空券を手配したり、
  現場の下見などの準備行為が構成要件
・実行前に自主した場合は刑を減免
・組織的犯罪集団の不正権益の維持、拡大を目的とした計画も処罰
・企業や宗教団体でも、目的が犯罪を実行する集団になれば
  処罰対象になり得る
反対しているひとたちの挙げる反対理由や問題点:
・共謀の定義があいまいで、捜査機関が恣意的に検挙される可能性がある
・捜査段階で組織的犯罪集団に一変したと判断するのは捜査当局なので
  一般人を含めた国民を広く監視捜査の対象にする可能性がある
・判例でも一定の要件を満たす場合に犯罪に共謀した者を処罰することを
  認めており、また銃砲刀剣類所持等取締法という銃砲や刀剣の所持を
  厳しく取り締まる法律もあるので、既存の法律で対応できる
・日本の刑法では、法律によって守られるべき利益を侵害する危険性がある
  行為を処罰するのが原則で実行行為が存在しなくても処罰可能になると
  従来の刑法学の基本的発想が崩れてしまう可能性がある

補足2: 
いわゆる共謀罪法案成立_委員会採決省略
2017.06.15
文科省内部メール問題で、その存在を暴露した前川前文科省次官をいつもは冷静な菅官房長官がなぜ個人攻撃したか。当たっているかどうかは保証の限りではないが、いわゆる共謀罪法案を会期内に成立させるため、共謀罪の本来の細部にわたる審議から野党の矛先をスキャンダル疑惑による時間つぶしに誘導することにあったという見方も出来る。民進党をはじめとする野党はこの作戦に引っかかった。そして十分な論議を放棄しての政局騒ぎで委員会に意味がない状況を作り出したため本会議採決になってしまったということも言えるわけである。菅官房長官は初めから文科省内部メールは安倍首相の政治主導の岩盤規制突破のリーダーシップの証であって、結果に対しての介入はないと分かっていた確信犯ではないかという気がする
(追:2017.07.03 昨日の都議選で自民党大敗。政府や国会議員の不手際や不祥事の影響が出たというはなしだが、日本をとりまく世界情勢から見れば安倍首相の世界観と情勢対応は評価されると私は思っているが、このところ深慮遠謀・沈着冷静である印象が薄く気になっている。)

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