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  たわごと編: No.73  
  2011.10.17 年金支給開始年齢引き上げ案  
 
  報道によれば政府が団塊世代あとの現役世代に対し年金支給開始年齢を68~70歳に引き上げる案を検討しているようである。TVインタビューなどでは老後が不安になるという声が多く取り上げられている。それらを聞いて国民皆保険(年金・健保)が家族の絆を弱くしてきた、国民皆保険で子が親の面倒を見なくてよくなったのが原因だから年金・健保制度を止めれば家族の絆は強まると冗談半分に言う誰かのブログを思い出した。以下その説を膨らまして今回の年金支給年齢引き上げ案にこじつけてのちょっとわざとらしい感想である。

わが国では老後の面倒は国家で見るという福祉社会を目指し国民前加入の現役世代が老後世代を支える負担をする賦課方式の年金制度を整備してきた。その経過の中、経済成長期の時代にあっては核家族化の進展と相俟って現役世代が老後世代を支える負担をするその代償として子は親の老後の面倒を見なくてもよいという社会への変革が進んだ。これが私の受け取った誰かのブログの言い分である。そうであったとする。

そういう中で育った世代でも親となれば子のためを思いつつ世の中に送り出すためにそれなりの努力をするのだが、その子の方は将来の親の面倒見から解放されている常態の中で育っていわゆる家族の絆意識も希薄になってしまったと思われる。そうなった世代の自分のこと中心の生活を追求する傾向は晩婚化や少子化をもたらし、その結果自分たちを支える将来の現役世代の減少をもたらすことになった。

バブル崩壊後のデフレの長期化とグローバル化で賃金水準は低迷しグローバルに平準化するまで続くものと見られている。若年や中高年の失業問題も深刻になっている。産業構造を変革し新規雇用を創出しようという施策もうまくいっていない。こういう状況が長引いている。こういうことも子の先行きを心配する傾向を生み晩婚化少子化傾向促進につながっていると思われる。

さらに年金制度への不信もある。老後の心配が蔓延してそれなりに金のある人も老後に備えてと金を使わなくなっていると言われている。世の中にお金が回らなければそれがまた雇用に跳ね返って年金原資にも影響してきていると思われる。

そういうことが今回の年金支給開始年齢引き上げの流れにつながって、福祉社会の実現過程で親の面倒見から解放され自分中心の生活を謳歌した世代が少子化したその子の世代から面倒見を期待できないつまり親子の絆も期待できずひとり老後を心配しなければならない不安を抱えることになるわけである。

いま世の中は60歳定年が常態化し定年65歳化の移行過程にいると思われる。そして経済が低迷している。定年が延長されても待遇は冷たくなる。60歳で異動になり悲惨な待遇になり退職というような例もネットで報告されている。それはまだよい方かも知れない。中高年で失職し就職難のうえ年金支給開始年齢引き上げとなればさらに辛いことになると思われる。若い頃から人生の危機に目配りして手当をしていなくては、先行き安心できない時代になってきている。

産業構造の変革が進まず需要は伸びず雇用数も増えず少子化した若者も中高年も失業不安と老後不安を抱えるなかで、安定雇用と年金制度の安定を図るために子を思う親世代が雇用を若い世代に譲ることはやればできないことはないかも知れないが、そうしても家族の絆が弱くなったいま子が親の老後の面倒を見るようになるとは思えない。一家職住同一傾向が残る田舎ならいざ知らず、核家族化あるいは親の面倒見からの開放を推進し家族の絆を弱めてきた社会では親や他人のために我慢もするむかしの家族の絆や地域の絆を取り戻せない。福祉社会の実現を目指す経過の中で得られる果実を享受してきた果てが自身の苦難として跳ね返って来ているわけである。

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