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  たわごと編: No.60  
  2011.07.25 縄文杉登山のあり方についてのアンケート  
 
  7月になって町広報が配布されたときに同時に縄文杉登山のあり方についてのアンケート用紙も配布された。6月に登山人数規制条例が町議会で否決されているのだが町執行部は規制を実現したいようで議案再提出理由の一つにするため規制に関するアンケートをとって住民の支持があるとの結果を得ようとしているようである。その裏には環境省の意向もあるらしいとの見方もある。

以下、私がアンケートの設問を見ての感想である。このアンケートを縄文杉立ち入り規制アンケートと呼んでいる人もいるが、立ち入り規制賛成に誘導したいという意図が根底にあるのは間違いないように思える。それはさておいて、規制したいと言う理由についてまず見てみると、(1)登山者の増加で登山道周辺の自然環境が荒れるのを防ぎたい、(2)登山者の集中で縄文杉デッキが混雑しゆったりとした滞在時間が取れない状態を緩和したい、(3)登山者ピーク時には現状トイレの処理能力が間に合わないので処理能力内の人数にしたい、の3点である。

そしてそれらの問題解決するために事前予約制で人数制限し登山者の平準化を図りたい、具体的には1日あたりの利用人数を420人(日帰り360人、宿泊を伴う者60人)までとしたい、ということである。この具体策・人数制限案で決まりではないとして、素直に挙げられた問題点だけを見てみれば誰でもそういう問題は改善した方がよいということになると思われる。しかしその方策検討の結論が人数制限ということになるとそこに至るまでの検討経緯が根拠を含めて公開されていないのでそのまま納得せよとばかりに示されても判断に困るわけである。

私は観光立地を標榜している当地としては観光客の都合を制限しそれが観光客の減少につながりかねない方策はあまり望ましくないと思っている。アンケート設問から分かる問題点に共通する根本原因は登山客の増加と時間的集中である。増加により自然環境が荒らされる、トイレの処理能力を越える。集中するのでゆったり縄文杉を見物出来ない。その対応策検討の結論が人数規制ということになっているようなのだが、利用人数が多いならその人数を減らせばよいという結論は短絡的すぎる感じがするのである。

例えば集中対策としては時間的な分散化を図ることは出来ないのか。登山開始時刻を分散させる。そのためには登山ゲートを作って開始時間割り当て切符制ということも考えられる。出発が早い時間帯や帰りが遅い時間帯は暗くなるから照明工事が必要になるかも知れない。足元も見えにくいということになれば登山道の整備・舗装工事も必要かもしれない。登山道を整備・舗装工事をするならついでに上下水工事もしてトイレの衛生化も図るのがよい。以前聞いたことがあるが、縄文杉ロープウェイを敷設すればそれだけでも問題は全て解決しそうである。こういうことも検討されてきたのだろうか。

呼び込んだ客、その客の落とすお金で潤おうと思って観光地化したら、登山客が増加して自然環境が荒れたり衛生問題が発生してきた。それなら大勢の人が自然に入り込むように仕向けた方の負担で対応するのが妥当である。国立公園の観光資源の維持確保、自然保護そして立地自治体の経済活性化には国・県・町それぞれが果たすべき課題があると思われるが、今回の人数規制案へのかかわりも明確でない。まだまだ説明不足あるいは検討不足な面があると思われる。

私はいわゆる自然保護活動というのに疑問を持っている。何がなんでもいわゆる自然のままがよいと主張する向きには同調しない。人が自然の中に入り込む環境では自然と人工の考え方を明確にしたほうがよいと思っている。人を完全に排除しないすなわち人が入り込み利用するからには全くの自然はあり得ない。人工的自然のかたちになって当然である。人が入り込むことによる影響をいわゆる自然にどこまで許すかということである。私の見るところ縄文杉は観光地である。前述の登山道路工事や上下水道工事や照明工事あるいはロープウェイ工事も許されて良いのではないかと思っている。縄文杉登山道周辺の自然環境を適正な状態で後世に引継ごうと言うなら、人工範囲を明確に見えるかたちにしてそれ以外には人が入り込まないあるいは手を加えないように維持するのが適正な状態でということだと思われる。

以上が感想だが、私はこの感想に基づき意見を記入してアンケートを提出した。意見を書かせるのではなく選択肢を選ぶことが主体の任意提出のアンケートの集計結果がどれだけの重みがあるのか分からない。結果が公表されるだろうが住民投票結果もどきに扱わないようにした方がよいと思われる。このアンケートが何かの根拠・証拠として利用されたらヤラセみたいなものだと思ったほうがよい気がする。

補足1: 観光と環境両立に腐心だって
2011.08.01
本日の日経新聞に「世界自然遺産、国内4件に・観光と環境、両立に腐心」という記事が出ていた。私の見るところ、地元が世界自然遺産指定を望んだのは観光による地元振興のためである。それなのに観光客が多くなったら観光客を規制しようというようなはなしが出てくる。それなら世界自然遺産指定を求めず環境保護対策を世界自然遺産指定レベルでやればよかったのである。世界自然遺産指定の権威に頼らなくてもよいわけである。世界自然遺産に指定されれば観光客が増える。それは想定内のことだからはじめからその対応を考えておくべきものだったはずである。それを今になって観光と環境両立に腐心と言うのはおかしいはなしである。また世界自然遺産指定の条件に観光と環境両立対策についての審査が含まれていないように見える。制度に不備があるのかも知れない。
(注) 世界遺産を守る持続可能な観光計画
2014.02.06
2001年の世界遺産委員会では、「世界遺産を守る持続可能な観光計画」の作成が行われたようではある。そういうネット記事を見たのだが審査に影響するものか否かは分からない。


補足2: アンケート集計結果
2011.08.12
本日わが家に配布された町報8月号に集計結果が出ていた。集計数362人(対6月有権者数の3.22%)だそうである。アンケートする目的自体に疑問があるが、それを置いても政策判断用アンケートとして成立しているとは思えない数字である。

(参考: アンケート設問)
Q2: 登山者の増加により、登山道での離合回数の増加や休憩利用の場所が拡大していることで、登山道周辺が踏み荒らされ、土壌の流出、裸地の拡大、木の根の露出が目立つようになりました。縄文杉登山道周辺の自然環境を適正な状態で後世に引継ぐ必要があると考えますか。(回答選択肢:1.必要である/2.必要でない/3.その他/4.わからない )
Q3: 登山者が集中すると、縄文杉デッキが大変混雑し、写真を数枚撮影する時間しか滞在できないこともあります。屋久島町では利用人数を制限することで、デッキ上で少しでもゆっくりとした滞在時間を提供したいと考えています。このことについてどのように考えますか。(回答選択肢:1.利用者一人一人の満足感を向上させる環境を提供するため、利用者数を制限すべき/2.利用者には混雑をがまんしてもう/3.その他/4.わからない )
Q4: 大株歩道入り口のトイレの利用実態は処理能力を超え、トイレ待ちの行列や故障が多発しています。また、高塚小屋トイレのし尿は山岳部保全募金を財源に人力搬出していますが、募金率が低いために、搬出回数の調整を行う必要があります。屋久島町では、衛生的な維持管理のため、ピーク利用にあわせたトイレ整備ではなく、利用人数を制限することを考えています。このことについてどのように考えていますか?(回答選択肢:1.トイレの設置数は基本的に現状維持とし、利用者数を制限すべき/2.利用者数を制限した上で、屋久島に適したトイレ整備を検討すべき/3.トイレの増設を優先すべき/4.し尿の自己管理のために携帯トイレを義務づけるべき/5.その他/6.わからない)
Q5: 屋久島町では、縄文杉登山を満喫できる環境を維持し、さらに縄文杉登山の魅力をPRするため、登山者数の少ない日への積極的な利用促進を行う方法として、人数の上限を設定した事前予約制を考えています。このことについてどのように考えますか。(回答選択肢:1.、事前予約制を行うべき/2.事前予約制は必要ない/3.その他/4.わからない )
Q6: 屋久島町では、将来的な立入制限の人数を自然環境への負荷の軽減と利用環境の改善を目的に1日あたりの利用人数を420人(日帰り360人、宿泊を伴う者60人)に設定しようと考えています。このことについてどのように考えますか?(回答選択肢:1.、適当な人数と考える/2.設定をする必要がない/3.人数をもっと少なくするべき/4.人数をもっと増やすべき/5.その他/6.わからない)
Q7: 利用人数の制限を設定しようとする場合、現行案の目標人数での実施時期は、いつ頃が適当と考えますか?(回答選択肢:1.、早急に実施すべき/2.観光客の動向を見ながら2~3年後/3.その他/4.わからない )
(以上、アンケート設問)


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