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  日誌編:  No.041  
「学校が教えない本当の日本史」_単なる歴史副読本ではない 2020.11.09
 
私が購読しているメルマガの筆者が本を出したということで、その本「学校が教えない本当の日本史(伊勢雅臣著・育鵬社/扶桑社刊)」を購入し読んでみた。日本が本来どの様な理念に基づき成立し維持されてきたのかという日本の歴史の根幹をおろそかにし、差別と搾取の歴史であったように決めつけているようないまの歴史教育の内容を史実に沿って検証するというのがこの本の目的だと序章にある。


そして、辺境民族征服史観についての章では(千何百年前からアイヌは強制してではなく同化・融和・共生してきた)、キリシタン迫害史観についての章では(信仰を優先し封建制へ抵抗したのが理由ではなく、ヨーロッパ勢力の日本植民地化に布教を手段として加担するカソリックを排除しようとした)。
また、階級搾取史観についての章では(農民の苦しさについて気候変動の影響での凶作や飢饉があった不安定な時代状況のみを重視しているが、そういうときの救済努力はよくなされたし、農民自治制度が整っていて米作の年貢以外の仕事の収入は無税で大方はそれなりに豊かな生活が出来た)。
沖縄差別少数民族史観についての章では(沖縄は少数民族というのは中国の扇動による。沖縄県になって以後の沖縄への思い入れと施策、沖縄戦以後の沖縄への思いと努力を知る必要がある。沖縄は差別されて来たわけではない)と、
それぞれ史観の束縛を離れいろいろな史実を知り、本当の歴史を知る努力をしなければならないと述べている。

私がこの本を読んでの感想だが、これは歴史副読本というようなものではないということである。日本史を題材にした日本版「FACTFULNESS(ファクトフルネス)」だということである。以前、私は「FACTFULNESS(ハンス・ロスリング他著;上杉周作他訳;日経BP社)」という本を読んだことがあるが、その本は思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣をつけよということを説いていた本だった。「学校が教えない本当の日本史」で筆者が言わんとしていることもそれと同じで、歴史を語るには史実を取捨選択するのではなくすべてを見てそれらから本当の姿を見通せということである。史観のようなある種の思想あるいは思い込みを前提として歴史を語るなということである。史観を強調する連中はそれである種の権力を志向しているかも知れないから注意しなければいけないということでもある。


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