|
|
11月の下旬に出たあるメディア・サイトのコラムで家庭の教育費高騰と奨学金返済滞納などの問題に触れ国は教育にもっとお金をかけよと主張している記事を見た。この20年間で親の収入低下と入学金や授業料の高額化が相俟って、いまでは大学生2人に1人が奨学金を利用する状況になっているが、就職状況の悪化で借りた教育資金を返せない人は急増し奨学金滞納者とその延滞額も年々増加しているそうである。教育費を親任せにするシステムで卒業後も借金地獄で苦しむ。こういうはなしは国民の教育機会に悪影響を及ぼすことになる。そういう状況を作っているのは国が教育に金をかけていないからで、国民の教育すなわち人間的発展に金をかけないと日本の未来も発展しないと警鐘を鳴らしている。
また、貧しい親が子に奨学金を貰わせず教育費を必死で捻出している家庭の例も挙げられていたが、なぜそうするかと言えば、奨学金返済の厳しさが金の問題だけにとどまらず可能性ある人間の生き方にまで影響をおよぼすことになるから子どもが借金地獄に陥るリスクを避けるようにと奨学金を貰わせなかったようである。奨学金を貰うひと貰わないひと、いずれにも教育資金に苦しんでいる家庭はあるということである。記事では日本は国の礎である教育に未来投資して親の所得や仕事・社会的地位で子どもの人生の選択肢が制限されることのないようチャンスを均等分配する社会にしなければと主張している。私は学ぶ意欲のないものまで見栄の大学卒資格を得るような大学全入の現状には批判的だが、本当に学びたい人間がそれを諦めてしまっては日本の未来を暗くすることになるという気持ちはある。
さて私について言えば、親が教育費を出すこと自体叶いそうではなかったから奨学金を貰う貰わないの論議以前の状況だった。高校を授業料免除で奨学金を貰いアルバイトをして卒業した私は親の金を当てにしない進路を選んだ。そして紆余曲折はあったが幸いにもそれなりの仕事につくことは出来た。しかしその経過は私の生き方にかなりの影響を及ぼした。裕福な家庭か否とか出自や地位などをバックにして一見正論に見えるようなことを言いつつ自分のやり方を押し付けるものに対しては反発心を抑えがたいときが多々あって、そのため機会を逸したと思うことは結構あった。また反面自分のことばかり考えてひとに責任を転嫁して立ちまわるようなことをしたこともある。あるときそれにわれながら嫌悪感を覚える出来事があって、以後はお見通しながら優しくという生き方を目指すようになった。しかしその域に未だ程遠く、いじけた反骨精神を恥じ後味悪い気分になるときがないことはない。
私はこどものころから成人するころまでは暗澹たる将来しかないものと思って過ごしていたが、いまはかつての自分には夢のような生活を送っている。それなりに社会に貢献しつつそれなりの暮らしが出来たような気がする私は幸運だったということになる。そして自分が子ども時代に感じていたなぜ社会的チャンスが均等に分配されないのかというような思いは尾を引いている。私も誰もが能力と意欲があればチャンスが得られるような社会・国になってほしいと思っている。
しかしまたそれが実現したからと言ってそれだけで人生選択が無限ということはあり得ないし念願の選択で成功するとは限らない。機会均等でも人生の選択肢は制限される。どんなひとでも自分の意欲と能力や努力とその結果が解離することは当然ある。チャンスを得ようとする一方では能力と意欲についてひとそれぞれのある時期でその限界を知って自分なりの人生を選択する諦めも必要になる。最近ネットの記事で大金持ちなど世の中の成功者と言われるひとに聞いた結果を見たことがあるが、彼らでも自分で決める生き方が出来なかったひとはその人生が幸せだったとは感じていないらしい。ということは、どんな境遇でも自分がしたいようなそれなりの生き方が出来ればそれなりの幸せがあるということのようである。
(追1): ホリエモン、借金してまで大学進学に否定的意見
あるブログに2014.11.28のテレビ(TokyoMX)の番組でのホリエモンの借金してまで進学することはないという発言を紹介し話題にしていた。賛否は別にしてそこでのホリエモンの発言と言われる言葉は以下のようだったらしい。
全国大学院生協議会が26日発表した調査では、大学院生の4割以上が奨学金を借り、その4分の1近い利用者の借入額が500万円以上という状況らしい。番組でそれを踏まえて借金返済のため風X店でバイトをする女子学生が増加しているということを紹介したらホリエモンはこんなことまでして大学行かなきゃいいんですよとコメントしたということである。また大学の選り好みをしなければ誰でも入学できるとさえ言われている状況で、お金だけ払って下の方の大学に行くのなら何の意味も無いとも主張したそうである。そして大学に入っても勉強をしないんだったら意味が無い、借金して風X嬢にまでなってバカじゃないのと批判したらしい。他の出演者の大学はともかく大学院まで進んだ人なら将来をちゃんと考えているのではないかとの意見にも大学院生も沢山知ってますけどぼやっとしてますよと一蹴し採用する企業側としては聞いたことの無い大学を卒業してますって言われても何の付加価値にもならないと言っていたらしい。
(追2): 鹿児島県の大学進学率_全国で47番目
町報と一緒に毎月配られる地元小学校の学校だよりの12月号に鹿児島県の大学進学率は32.1%(全国平均53.9%)で全国で47番目という新聞記事を紹介してあった。そして大学進学が全てではないが将来のキャリアアップや職業選択に支障を来たさないかと心配するコメントが付いていた。そういう問題意識からかその小学校の教育課題の一番目は学力向上としているようで、生徒たちにはその発達段階に応じて勉強は誰のために何のためにやっているのかということを考えさせたいともあった。
(関連記事)
屋久島生活の断片・偏見ご免のたわごと編:
No.38 教育のこと [2001(H13).02.05]
屋久島方丈記・偏見ご免のたわごと編:
No.431 教育費無償化_人材の序列がなくなることはない (2017.10.23)
. |
|
|
|