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  たわごと編: No.87  
  2012.01.23 おとなになったと思ったのは  
 
  昨年暮れTVで何処かのチョコレートのCMを見ていてら、女三人旅の列車の中での会話シーンがあってそのセリフが記憶に残った。宮沢りえ、大塚寧々、木村多江が出ているCMである。宮沢りえが言う「自分がおとなになったと思ったのは、親の弱さを知ったとき」というセリフである。私が親も実態は自分と変わらずいろいろ悩んだり苦しんだりして来たということを知ったり、将来不安、健康不安に怯えつつ残りの人生を私に委ねていることを知ったのは両親が私の扶養家族になって何年かしてだった。私が30歳になる前だった。しかし私はそれを知ったからといって自分がおとなになったと思った記憶はない。どういうときおとなになったと思うかは人それぞれであると思われる。

それはそれとして、おとなになったと思うときについてのことである。何かの時に親の弱さを知ったということはその時までは親は強いものだと思っていたわけである。自分の経験から言えばどうもこどもには、それが自分の作り上げたお化けみたいなものかも知れないのに親は大きく見える。幼いうちは親の庇護のもとに育てられているのでそう感じるのは当然である。それがだんだん成長してくると自分を認めさせようとするようになって、それが反発心として現れる。反抗期ならそれは成長の証となる。

しかしその時期を過ぎても自分に自信が持てないと、かなりの年になっても何かに付け自分が正当に評価されていないという思いが消えず、親の何の含んだ意図のない物言いに怒りをぶつけたりして、親を過剰に意識し続けることになる。そういう人間があるとき何かの切っ掛けで親の弱さを知ったとする。それでおとなになったと思うには、その時までに他のもろもろのおとなになったと思える条件をクリアして来ていて最後に親の弱さを知ったことによるのではないかという気がする。CMで宮沢りえが言うおとなになったと思ったときとはそういう背景がなくては来ない。もろもろの条件をクリアする順番は人によって違うからおとなになったと思う切っ掛けは人それぞれだと思うわけである。

さて次は、親の弱さを知るときについてのことである。親の弱さを知る前のこどもは、親は自分の言い分を何でも許すはずだとか、なんにも言わなくても自分のことは理解しているはずだ、そしてこどもは自分勝手に何かする一方、親は聖人君子みたいに高潔で包容力があって自分勝手はしないと思っている一面がある。これもお化けみたいなもので、自分の想定している振る舞いをするものだというのは思い込みである。こどもを独立させればそこが他人の始まりである。親はそれなりの距離感を持って見守る。それを理解できていないと、自分の思い通りあるいは予想通りに動かない親が許せず、自分の想定する言動をさせようとか言うことをきかせようとかして親に突っかかったりする。そして病気などになったあとで親の弱さを知らないでいたことを後悔することになったりするのである。

おとなになったと思うかどうかは別にして、親を過剰に意識せず距離をとれるようにならないとこどもはなかなか親の弱さを知るようにならない。分かっていると思ってはいてもなかなかできないのだが、他人を見るようにしてありのままを見られるようになれば、幽霊の正体見たり枯れ尾花である。自分と変わらない人間がそこにいるのである。自分が思ったり感じたりしていると同じように親もそれなりの感情を持っている。いろいろ悩み苦しみ嘆き自分中心の欲望も持つ自分と変わらない人間である。その親が自分と違って先細りの人生にさしあたっているのが見えるようになって親の有り様をありのまま受け入れて付き合って行こうという気になったら、そのときが親の弱さを知ったときではないかという気がしている。

補足: 他人を見るようにしてという意味
(2012.05.14)
本文最後段に「親を他人を見るようにしてありのままを見られるようになれば」と書いているのだが、今日読んだ本の中にあった「キリストの言う隣人愛」のレベルに達すればということと通じる感じがする。

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