私が鳩山首相の普天間基地移設に絡む沖縄訪問に関して抱いた感想のことである。
外交・防衛にかかわることは、意義や経過の理解と深い考えなしにまた確かな展望なしにあるいはまた口先での人気取りや思い付きで具体的な公約をすべきではない。普天間基地移設問題に関する鳩山首相の思いは善意からであっても、不可能を口にして期待を煽ることで自身と政府の信頼を損ねてしまった。いまや選挙前に党首として発言していた具体策(国外移設最低でも県外)はいわゆるマニフェストをオーバーライドする覚悟の約束でなかったことが明白になった
、というものである。
また海兵隊の駐留意義について勉強不足のなかで国外あるいは県外との誤った判断をしてしまったと言うに至っては、戦争を始めた後で情報を誤認して開戦判断をしてしまったと白状しているに等しい。どうしようもない指導者がいて、耳障りの良いことを言って期待を煽ってきたが実現できない現実に抜き差しならなくなって変なことをしでかす、そんな国にならないかと不安になる、というものである
以上、私が鳩山首相の普天間基地移設に絡む沖縄訪問に関して当初抱いた感想である。
しかしこれは表面的な見方なのかもしれない。鳩山首相の普天間移設問題提起の当初から今のような状況は必至で国外以外に決着しないという見方もでていた。鳩山首相は世論などに打たれ打たれしながら最終的には国外を落としどころに狙っているという見方である。
私は「偏見ご免のたわごと編:No.321・これからに不安のこと」にリーダーについて世論などとの調和に気配りしながら、なんとなくことを進めて最終的には国民の信頼に応える結果を得なければならないこともでてくる。世界を相手になんとなく思い通りの方向へ持って行ったり自国民や反対勢力をなだめすかす芸も必要になる、というようなことを書いている。もし鳩山首相がそういうリーダーであったなら私の感想は変わったものになる。
大石内蔵助に似て思いを胸に秘めて人の目を欺き非難に堪えて最後は本懐を遂げようとしているのではないかということになる。外務大臣、防衛大臣、官房長官、沖縄出身の与党議員が沖縄か一部県外の移設候補地を挙げてきたり、また首相自ら沖縄訪問で沖縄に負担の継続を求めたのは、地元の反対の動きを盛り上げるためにやっていたように見えないこともない。国内でどうしようもないという状況を作り出して、日本の意思は国外移転、米国とはプロセスや金その他の条件の協議をすると表明する。
地元合意は米国の条件でもある。国内は移転反対一色に近いとなれば国外へとのはなしも避けられない。テニアンが手を挙げている。米国が最終移転を目指すグアムへのプロセスと金の問題にして米国にボールを渡す。それを落としどころとしているのではないかと思われる。米国の決断で移転が決まれば利権がらみの連中も黙るしかないということになる。元防衛次官守屋氏は移転候補地決定に際し一番大変だったのは利権の調整だったと言っていたという情報を見たことがある。このあたりをクリアすることまで気配りしているかもしれない。
私は「偏見ご免のたわごと編:No.321・これからに不安のこと」に宮城谷昌光の中国の春秋戦国時代の優れた人物を主人公にした小説を読んだことがあって、移動手段も限られ何年かに一度くらいしか会うことのないと思われる優れた相手に邂逅し、互いに相手を見てあいつは信ずるに足ると認め合って後はその判断に基づいてものごとに対応していく。そして一時裏切られているように見える状況になると人を見る目がない者たちは騒ぐ。しかし最後は互いの暗黙の約束が果たされていくというような展開があったような記憶がある、と書いている。
鳩山首相がオバマ大統領と会って信頼してくれと言ったという話があるが、鳩山首相はオバマ大統領が邂逅した優れた人物として互いに認め合っている関係になったと考えた結果の言葉かもしれない。国外移設最低でも県外
、5月末決着が軽薄な約束でなかったと思いたい気持ちもある。
No.321 これからに不安のこと
[H21(2009).10.12)]
No.334 マニフェスト選挙のこと [H22(2010).03.08]