屋久島生活の断片・偏見ご免のたわごと編
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No.289 町内会のこと  (H20.11.17)

先日(2008年10月28日〜30日)の日経新聞に「見知らぬ町内会」という特集記事が掲載された。この特集は今年4月最高裁で町内会・自治会が「会費に寄付金を上乗せして強制徴収するのは違法」と確定したのを機に企画されたのではないかと思われる。以下その内容を私の受け取り方で紹介し、あわせて私の住む地域の町内会のようなものについてのはなしも紹介する。

28日の記事には、「町内会って何」、「意味あるの」として、はじめにあるところでは町内会を廃止したが「なくても困らず驚いた」というはなしがでてくる。特集では町内会は真に住民に必要なのか、あるいは真に住民に役立つ町内会とはどうあるべきなのかという問題を提起しようとしているようである。

町内会や自治会は住民の親睦組織で、自治体の広報誌配布やゴミ置き場の管理など公共サービスを担う任意団体と定義している。かつて町内会は「全世帯加入」が前提だったが町内会の役割の減少や担い手不足で今やその前提は崩れている。その原因は、町内会が支えてきた冠婚葬祭や清掃など地域の共同生活部分を企業などが担うようになり人間関係が希薄になったためと見ている。

また町内会が必要と住民が感じる場面が減るなかで、行政サービスの一端を任せてきた自治体も「町内会だけに頼れない」と姿勢を変えてきたことも一因と見ている。高齢者支援や犯罪、災害への対応など多様な地域の問題にいまの町内会・自治会では対応できないからである。そして福祉や防犯など地域の課題解決を担うため町内会とは別に他の地域組織(例えば「地域協議会」)が新設されるところも出てきている。町内会のないところの一例では、そういう地域組織は地域住民に役立つことにだけに徹し、行政の下請けをしないが必要なことは自治体が行うので、町内会がなくても住民に不都合はないということである。

29日の記事では、「町内会費って何」ということで理由の分からない費用についての問題をあげている。最高裁で「会費に寄付金を上乗せして強制徴収するのは違法」と確定したが、寄付金上乗せに反対すると脱会しなければならず、そうするとゴミ置き場も使えなくなるというおかしなところもあったらしい。寄付金の問題は赤十字など「募金を求める側が町内会・自治会を集金マシンにしている」ことに責任の一端があるようである。

町内会費の使途として、日赤や赤い羽根募金への寄付のほかに、上部組織の町内会連合会や防犯協会、防火協会などの会費という上納金などもあり、住民のために使われる会費の使途としては分かりにくいものになっている。そして分かりにくい支出に「回覧板や掃除当番など町内会の仕事は負担ばかり、町内会費がどう使われ生活に役立っているかはまったく分からない」と言う人もいるようである。最高裁判決を機に町内会の支出に不審の目が向けられ始めており「そのお金本当に必要?」の疑問に答えられないと町内会の空洞化はさらに進みそうだと見ている。

30日の記事は、真に必要な町内会とは何かという内容である。町内会とは住民が真に必要なことをやれる交流の場のはずなのだが、行政組織として生まれた経緯から今も行政業務や募金を任される町内会の多くは、前例を踏襲し受身のままが実態である。

住民が真に必要なことをやれる町内会にするには、行政と住民、各種団体(NPOなど)を上下関係でつなぐのではなく対等に連携する組織に生まれ変わることが必要とのことである。住民が動かなければ行政にその必要性が認識されないし各種団体との協力関係も見えて来ないからそういう性格にする必要があるということである。

災害など突発事態発生時に頼れる近所・地域が必要なのは誰でも理解している。そういうとき自分で出来ることだけでは限りがある。生まれ変わった町内会が必要ではないかということのようである。以上、記事の紹介である。

さて、屋久島の町内会というべき集落・任意団体としての区のことである。通常集落名である地名をかぶせて○○区と称されている。住民は区民と呼ばれている。区は住民を会員とする住民の福祉増進と親睦融和を図ることを目的としている任意団体である。田舎だから都市の町内会と違ってある程度は地域の共同生活部分を担う機能が残っているという印象はある。以下、我が区について私の知るところである。

区は町や公共機関の事務・業務を一部有償受託している。また我が区では電気事業という収益事業を営んでいる。区の収入は事務・業務受託費、区計画事業への町からの補助金、寄付金および区民からの徴収区費(いわゆる町内会費、年19,200円)からなる。

区の支出は区運営事務経費、区行事実行経費、受託事務・業務経費、事業執行経費、および役員報酬からなる。区運営事務費、区行事実行経費は完全持ち出し、受託事務・業務経費、補助事業執行経費は受託費や当該補助金収入の範囲内でまかなわれる。区独自経営の事業執行経費はその収入に対し微々たるものである。即ち区は電気事業で相当の利益をあげている。そしてその利益の大部分を外灯電気料など区共用電気料および職員手当てという名目で支払われている主要役員の報酬に引き当てている。

我が家で今年、区関係でサービスを受けたのは、町からの受託業務である町報類の配布と農協からの受託業務の電気検針である。そして多分ゴミステーション利用もである。この一年では区独自の我が家に対するサービスは家の近くの街灯の維持とその電気代および集落連絡放送(たまに自分にも関係する事項がある)だけだと思われる。あるいは夏に農道草払い行事(これは町の行事予定に載っているから町の行事みたいである)があり、これは自分たちの利用する道路でもあるから出役するが、区から草払い機用燃料のほか各人にパン1ヶとジュース1缶支給されるので、パン1ヶとジュース1缶もあると言えないことはない。

話し変わって、H19(2007)年の初めての屋久島町町長選で立候補予定者の複数が政策として「集落自治組織に、行政の一端を担ってもらう」ということを挙げていた。それは一見今はやりの住民参加型の行政を目指しているように見えたが、陰に何か胡散臭いものを感じていたものである。

そして今回、日経新聞の「見知らぬ町内会」という記事を見てなぜそういう感じがしたか分かった。「行政の一端を担ってもらう」というはなしは、行政はその為すべき仕事を他に任せず、地域組織は真に住民が必要なことに徹して、対等な行政と地域組織になるという方向性に逆行する。区に「行政の一端を担ってもらう」というはなしには、区の役員・長老に対する影響力を強化し選挙地盤化しようとする意図が隠されているという感じがしたからだと思われる。

補足: 集落区長の位置づけのこと  (H21.03.16)

昨日配布された屋久島町の議会だよりに集落と行政の関係についての質疑内容が紹介されている。ある質問で集落の区長は町長から駐在員として任命されているが、それでは任意団体・集落の長である区長がその集落区域の行政側職員でもあることとなり集落が町行政の下にあることになる。対等なパートナーとしての位置づけになるように変えるべきではないかと質している。

それに対して町側あるいは町長は、運用上理解しがたい面もあると認めているが、駐在員会(多分区長たちの集会)で改善提案が無いので順調に機能していると思われるから見直す考えは無いという意味の回答をしている。区長側は従属関係に染まりすぎてそれが当たり前と思っているのかもしれない。そして町行政側はそれをよいことに利用し続けようとしているように見える。

No.2 集落のこと(1)
No.185 集落のこと(2)


 
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