屋久島生活の断片・偏見ご免のたわごと編
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No.256 屋久島(140):ネットで見た町長多選のこと    (H19.11.19)

合併で誕生した新・屋久島町の町長選挙が11月11日行われた。投票率89.95%で開票の結果は、日高十七郎氏3011票、A氏2832票、K氏2659票、S氏1447票で、平成元年以来屋久町町長をしてきた日高十七郎氏が屋久島町町長としては初当選、旧・屋久町の住民から見れば現職が連続当選・多選という結果になった。

今度の町長選では地縁・血縁ではなく政策・人物本位で選ぶべきと有志が政見講演会を企画し8月頃から10月初め頃までに4回開催された。その後の有志らしき人たちの情報発信を見ていると、前屋久町町長の多選を阻止したいというのがそもそも根本にあって、そのために他の立候補予定者の現職に対するハンデをなるべく減らそうという意図があったようにも思える。

講演会がすべて終わった後から、有志の一人が立ち上げた掲示板などでの物言いが地縁・血縁によらない選挙をと呼びかけるよりは、地縁・血縁による結果と思われる現職の多選を阻止しようというキャンペーンに変わって行ったことからそういう感じがする。そして次の選挙には、自分たちあるいは自分たちと意をともにする人物を町会議員に立候補させようというはなしまでではじめているようである。

ネットで見ていた限りでは今回の選挙について、多選阻止あるいはそれを意識していると思われる意見を述べていた人がほとんどで、現職寄りの意見を持つ人の情報発信は少なかったようである。だから多選阻止意識が盛り上がっていると思われたのだが、選挙結果を見るとその広がりは一部にとどまったようである。ネットで意見表明する人は当地ではそんなに多くないネット利用者の一部に限られるから、サンプルとしては偏っていて全体を代表するものではなかったということかも知れない。

また、屋久島の住人も首長の多選で行政が堕落したり停滞したりする可能性があることは一般的認識として誰も否定はしないと思われる。多分ほとんどの人がそれは分かっている。しかし結果は現状のようになった。少なくとも現職を落選させるほど多選の弊害を感じていないあるいは現職を当選させるほどまだ期待すべきところがあると思っている人も多くいたということである。

ここで今回見られたネットでの多選阻止の盛り上がりを多選阻止活動と見ての感想である。屋久島町で今回の状況下で多選阻止を叫べばそれは、現職は立候補するな、あるいは現職を落選させようということである。現職は立候補しないとは言わないからつまりは、多選阻止活動は現職を落選させるための活動だったはずである。

しかしネット中心で意見交換するだけでは泥臭い現実の活動がともなわない。活動の成否は具体的にどんな作戦を実行するかにかかっている。だが多分そういうものはなかった。だから今回の多選阻止活動は成功しなかった、という見方も出来る。例えば対立候補を一人に絞るよう調整する、現職の票を切り崩す、応援候補の票集めをする、などの活動がともわないと成功は難しかったのではないかと思われる。別の言い方をすれば例えば市民グループの活動のような組織化された活動実体はなかったみたいだということである。

ところで、次期町長選挙では現職・多選町長が引退するらしいから、とりあえず多選という状況は発生しない。しかし、現職に似た考えの人物が当選して多選同様の状況が相変わらず続けば、今回の多選阻止活動が指摘した弊害は解消されないままという可能性はあることになる。となれば、今回の多選阻止活動が思いつきの一時の空騒ぎでないならば、その課題は必然的に多選を産む風土の改革というようなことに変わって継続されていくはずである。

そして多選批判意見で言われていたように地縁・血縁が多選の要因になっているかもしれないとなれば、はなしは集落のあり方にまで及ばざるを得なくなる。となれば、従来地元住民と新興勢力との対立が避けられないかもしれない。そこまで考えての地縁・血縁批判、多選阻止の活動だったかどうか、私は知らない。次回の町議会議員選挙に向けての動きが出て来るころ、その方向性を明らかにした次の活動が見えて来るかと思われる。
 

付録: 集落自治組織のこと  (H19.12.26)

10月17日付けの屋久島関係のあるブログに(区すなわち集落住民任意参加の団体である)集落自治組織に関する記事があった。初めての屋久島町町長選の立候補予定者の複数が政策として「集落自治組織に、行政の一端を担ってもらう」ということを挙げているが、それは一見今はやりの住民参加型の行政を目指しているように見えるが、陰に何か胡散臭いものを感じると疑問を呈しているものである。

その疑問点を私なりに読み取って挙げれば、以下のようである。

1)役場は地域住民へ国が定めた水準以上の行政サービス(防災・教育・福祉・生活基盤整備)を提供することが第一の使命である。それを実施してなお余裕があるときは、首長の独自政策を展開可能となる。そのときに集落自治組織をどのように活用しようというのかはっきりしない。

2)役場がやらなければならない仕事を集落自治組織に労賃を支払って下請けさせるのではなく、集落自治組織に独自の判断で本来役場がしなければならない仕事分野を裁量する権限を付与することを意味しているなら地方自治法上許されないのではないか。

3)区長は区組織に参加の一部住民の選挙(参加世帯毎1票)で選ばれる集落もあるし、無投票というところもある。区長以外の役員では区長同様の選挙あるいは区長指名がほとんどで、公職選挙法に準じた選挙もされていない。民意を受けて法律に基づいた行政サービスを提供する組織として集落自治組織は問題がある。

4)住民の親睦や互助のための任意団体である集落自治組織と地方自治体とは求められる姿には違いがある。

「集落自治組織に行政の一部を担ってもらう」と言った立候補者は、こういうことまで考えて政策提示していたのかと気になるところである。私は地縁・血縁の影響の濃い集落自治組織の支持を当てにしたまやかしの政策だったと見ている。

はなしは変わるが、集落自治組織という点で印象に残ったことがある。町長多選批判勢力のブログなどの中で町長多選の選挙結果が出た後、今後の町長多選を許す風土の改革に区長など各集落の有力者に期待するような記事が見られたが、地縁・血縁による選挙を批判していながら地縁・血縁の組織に期待するのは矛盾している。また彼らが批判している多選支持派町会議員が集落自治組織の有力者である可能性が高いと思われる。件の立候補者も多選批判勢力も集落自治組織の認識にこなれていない面がありそうである。
 

補足: 私のことらしい  [2010(H22).12.12] 

今日あるブログのコメント欄に町の行政変革を求める態度について書き込みがあるのを見つけた。投稿の出だしにある「私は実名をあげて行動を起こしている。これを議会議員選挙のための売名行為と捕らえる人が居る。世の中勘繰りと、悲しいさがを持っている人も居る。」と ここで非難している対象の人あるいはその一人は私のことではないかと思われる。 最後尾の(関連ページ)にある「H19.10.08のNo.253:地縁血縁のこと(1)」に書いた以下のところが気に障っているのだと思われる。

「ところで下種の勘ぐりみたいなことである。政見講演会の企画者が町議選立候補をもくろんでいるとしたら、今回の活動で町長立候補予定者以外では最も名が売れたから、参会者の何割かが名前を憶えていて投票すれば当選の可能性もある。周到な布石かもしれない。 」というところだが、 これは皮肉で言ったものである。本気で立候補したら当選すると思ってはいない。企画者があまりにも自分の名前を押し出し過ぎるので言ってみたのである。 でもこれだけ時間がたった今も気にしているということは、実は当たっていたのかもしれない。

上記本文にある「講演会がすべて終わった後から、有志の一人が立ち上げた掲示板」の管理人がその企画者である。私はその掲示板を閲覧していたが、誰かが意見を言うと、自分の意見が一番とばかりにそれを論評する。そして自分を押し出してくる様子から、議論が深まらない。あまりに自分が偉いと思いすぎ みたいなのである。

そこで掲示板もそろそろ終局かと思われるころ、以下の投稿を私はした。皮肉の続きみたいなものである。

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タイトル:掲示板活性化のために  HN:登校拒否生徒X
政策論議についてはユニークな投稿者が少なく、また管理人の求めるような投稿がなかなか出てこないし議論も深まりませんでした。管理人のそのあたりを気にされているコメントもありました。私は管理者が旅行に行くのを待つのではなく、早めに掲示板管理者を移行した方がよい気がしています。
特に当初の掲示板の進行具合を見ているとスズメの学校のように、先生がムチを振り振りチーパッパだったから生徒が集まらなかったのではないかという気がします。人の意見に対し自分の意見が一番だ、どうだというような感じではちょっとした意見を言う人はいなくなってしまうのではないでしょうか。先に意見を言った投稿者に管理者がカウンターパンチを浴びせ自分の力を誇示していたように見えてしまいました。それで投稿拒否する人もいたのではないかと思います。
自分の意見を一番と知らしめたいなら人に書き込みをさせる掲示板である必要もないと思われますので、自分の意見はこれだと開示する通常サイトを別に立ち上げたらどうかと思います。掲示板についてはさらなる上から物言う管理者対投稿者という雰囲気一掃に期待します。
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(関連ページ)
No.253 屋久島(139):地縁血縁のこと(1)   (H19.10.08)
No.299 屋久島(156):地縁血縁のこと(2)
  (H21.03.25)


 
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