屋久島生活の断片・偏見ご免のたわごと編
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No.253 屋久島(139):地縁血縁のこと(1)    (H19.10.08)

例えば選挙を有意義なものにしようとする。そのためにまずはとんでもない立候補者が出ないことが望ましい。しかし立候補を規制することは出来ない相談だから、有権者がまともな立候補者を見極めその中から自分の判断基準と照らし合わせてその時点でより良いと思われる人を選ぶことになる。そのためには立候補者の政見その他の情報が周知されることが必要であり、また有権者がそれぞれの立場と全体の調和を考えて自分なりの判断基準を持つことが必要である。そうすればそれなりに住民全体に信頼される人物が選ばれると思われる。

さて、当地では地縁・血縁が幅を利かしているので選挙が本来あるべき姿でない、政策と人物を見極め適格な人物を選ぶようにならなければいけないと見ている人もいる。地縁・血縁の支配が有権者の意志に反して及んでいるならばそれは正論である。しかし有権者が自分の意志・判断で地縁・血縁を重視しているなら、それを非難するばかりでなく少し見方を変えて見ることも必要である。

私が思うに、地縁・血縁の風土の中で地元の眼鏡にかなった人間が立候補するなら立候補者はそれなりにスクリーニングされていることになる。少なくともある程度の地元住民の意向が反映されているのではないかと思われる。また住民が今までにしてきた投票行動も地縁・血縁を重視してのことであったとしても立候補や投票の結果というのはやはり相当の住民の意向が集約されていたものと思われる。

つまり地元の大方は自分たちに有用な人物を地縁・血縁のネットワークを駆使し吟味して選んできたと見ることが出来る。そして今もってそれが主流ならそのやりかたが間違っていたとは思っていないと思われる。国政選挙や知事選挙などでも市民団体や業界その他の団体が立候補者を推薦し傘下の職員や参加者・従業員がその意向に従うのはそこらここらで見られるところである。職縁その他いろいろありそうである。それらと何ら変わるところはないと見ることも出来るのである。

そうは言っても地縁・血縁が幅を利かす風土に疎外感や疑問を感じる人たちはいるわけである。過去に当地の町議選挙などでそういう風土に挑戦した人は多分そうだったと思われる。そして思いかなわず今も雌伏している人もいると思われる。そういう人たちは大体が移住者あるいは戻ってきてそんなに年月を経ていない人のようだった。外からの目で見ればいろいろな問題が目につく。それで改善を標榜して打って出る。

私が過去に注目した立候補者の一人は選挙のかなり前から行政の不備を追求したり改善を主張したりして行政に注文を付けそれをビラで配っていたが、落選したらぱったりとそれが止んでしまったのを見ている。屋久島のオンブズマンもいろいろと活躍している様子がHPで見て取れたが最近そのHPも閉鎖されてしまった。立ち消えてしまったように見える。

地縁・血縁の風土に風穴を開けるには地道で長い継続的な活動が必要かと思われるが、名を売ってのし上がるのがうまくいかなかったらそれまでよというのでは、自分の立身が主目的で改善は名目だけだったのかと残るのは失望感である。地縁・血縁で生活が成立しているところで他のやり方で生活を成立させる手だてを提示できなければ、地縁・血縁から距離をおいても生活できる移住者あるいはそれに近い人たちの主張はなかなか浸透しない。

政策と人物本位、それを推すのに地縁・血縁はだめということになれば、新たなネットワークが必要になり、またそこに仕切り役が登場する。地縁・血縁をめぐる選挙のあり方論議は従来勢力と新興勢力のせめぎ合いという側面もありそうである。従来住民から見れば自分たちの生活基盤と密接につながったネットワークが弱くなればその影響は生活のあり方にまで及ぶと思われる。正論だからやるべしと言われれば反論しにくいが、自分の生活にマイナスになることは困るのである。否定の前に地縁・血縁の機能・効用などをよく分析する必要があると思われる。

最近の動きでは合併後初めての新「屋久島町」町長選挙に向けて、有志が政策と人物本位の選挙のためにと立候補予定者の政見講演会を企画し屋久島の四ヶ所で一回ずつ開催される。すでに 三回開催済みで一回目(一湊)は参加者約100人(80人との報もある)、二回目(安房)は約230人、三回目(宮之浦)は200人ほどとか伝え聞く。屋久島の有権者数(合併可否の住民投票時)はおよそ11,000人である。4人の立候補予定者がいるが多分彼らは地縁・血縁の支持者いわゆるさくらを動員していると思われる。本当に政見・人物を実際に見聞きして比較しようという人が何人・何%くらいいたのか気になるところである。

私が思うところでは場所が遠く回数も少ない政見講演会より、立候補予定者に質問票を送りあるいは会見質疑してその回答を比較できるようにしたビラを作成配布する方が彼らの政見をその拠り所である経歴経験思想と相俟って周知させるには効果的かもしれない。論点を絞って何回か発行すればさらに効果があるかもしれない。立候補者が独自に配布するビラと合わせて見れば立候補予定者の特徴が分かりやすくなると思われる。その方が有志の目的をより達成できるように思われる。

当地の選挙では、例えば自民党総裁選のように記者会見や公開討論がTVや新聞で報道され論評されることがないから、講演会に出席しないほとんどの有権者は立候補予定者が各戸に配布するビラで主張を比較しているものと思われる。だからそれに取材報道的なビラが加わればかなりの判断情報になるはずである。

ただし投票行動への影響はいわゆる無党派層相当の移住者やそれに類する人たちに限られる可能性が大きい。それでも当選者を左右する可能性はある。しかしそもそも立候補者が地縁・血縁で推されているなら、大方の住民が地縁・血縁を重視する状況は変わらないままかもしれない。地縁・血縁が幅を利かす風土を変えるには生活基盤の改善が先決で投票行動はその結果ではないかと思われるからである。しかしそれは違う、投票行動の変化が生活基盤の改善につながるのではないかと言われれば、卵が先か鶏が先か論議に似て私はそう思うのだがとしか言いようのないことではある。

ところで下種の勘ぐりみたいなことである。政見講演会の企画者が町議選立候補をもくろんでいるとしたら、今回の活動で町長立候補予定者以外では最も名が売れたから、参会者の何割かが名前を憶えていて投票すれば当選の可能性もある。周到な布石かもしれない。[この件については、最後尾(関連ページ)の「H19.11.19のNo.256:ネットで見た町長多選のこと」の(補足)に関連記事があります。_2010.12.12記]
 

補足1: 第4回政見講演会参会者数のこと  (H19.10.10)

尾之間で行われた第4回には約260人参加したらしい。第1回〜第4回で総計800人くらいということになったようである。

補足2: 出馬しないとのこと  (H19.10.11)

本文最後尾の勘ぐり記事に対して、ご本人が出馬しないと明言されたようである。

補足3: オンブズマンのこと  (H21.01.04)

本文の中ごろに「屋久島のオンブズマンもいろいろと活躍している様子がHPで見て取れたが最近そのHPも閉鎖されてしまった。立ち消えてしまったように見える。 」と屋久島オンブズマンについて記載してある件に関連したことである。

昨日見たある屋久島関係のブログの中でかつてのオンブズマンが行政書士になっていて現在役場職員の行政関係講習会の講師をしており、対決していた行政に取り込まれたか取り入ったようだというようなことが載っていた。私は行政書士の試験に受かって事務所を開設したと聞いたとき、屋久島では対決相手だった役場とかJAとかに食らいつき仕事を得ないとやっていけないのではという気がしていたので、そのためにオンブズマンから手を引きそのHPも閉鎖したのではないかと思っていたがその直感が当たっていたかもしれない。

(関連ページ)
No.256 屋久島(140):ネットで見た町長多選のこと    (H19.11.19)
No.299 屋久島(156):地縁血縁のこと(2)
  (H21.03.25)


 
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