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(10月22日の衆議院銀選挙に向けて原発ゼロを主張する勢力もいる。私は原発ゼロが成立するならそれが望ましい。将来的にはそうあってほしいと願っている。ところが世の中はもっと電力を必要とする時代になって行く、原発以外では対応できないのではという見方もある。EVシフトはその最大要因のようである。)
アメリカやイギリス、フランスそして中国でEVシフトを強制するような動きが報道されている。よく言われているEVのエネルギー効率は80%という値は電気で走行する際のエネルギー効率のことで、実際の天然ガスや石炭から発電する際にはエネルギーロスが出るので、発電所含みのエネルギー効率は40%を超えることはないらしい。それでもガソリン車の15%くらいよりは格段に良い。EVは発電所まで含めたエネルギー効率でもガソリン車などの石油系燃料車を大きく上回り、なおかつEV自体は排ガスを出さないというわけである。しかしEVに充電するための電力供給に発電所が必要でそこでCO2を出すという批判もある。
私は以前から全車EVシフトをしたら電力供給に支障を来足すことにならないかあるいは発電によるCO2がどのくらい低減されるのかに関心を持ってきた。EVはいまのところ充電時間が長いらしい。現在は、高速充電設備でも20~30分、通常の家庭設備ではフル充電に5~8時間かかるということらしい。将来は高速充電設備で10分くらいでフル充電できるようにする研究が進んでいるとのことであるが、EVは現状まだ家庭で夜間充電するのが基本のようである。
そこで、まずどのくらいの電力供給が必要になるかの試算をネットで調べてみた。
1: 欧州環境機関の報告を基礎にした試算
欧州環境機関(EEA)の報告では、欧州の自動車の80%がEVになると150ギガワット(GW)の発電能力が必要になる。EUの人口は約7.4億人で日本の6倍なので単純に人口比でみれば、日本では25GW=2500万キロワット(KW)が充電のために必要な発電量ということになる。(100万KWの原発25基分相当、しかし日本の平均的な原発の稼働率は50%ということなので、日本の自動車の80%をEVに転換するには50基の原発が必要という計算になる。)
2: 日本の学者の研究と言われている試算
ある時期の例で日本の乗用車は約7000万台、台当たり走行距離は約8700km。EVの電力効率6km/kWhとすると、EVの消費エネルギー(年間消費電力)は約87GWhで日本の年間消費電力の約10%になるということである。
充電のために必要な発電量(EEA方式)では、25GW(2500万KW)の発電能力(発電設備)が必要ということになるのだが、年間消費電力(日本の学者方式)では、年間消費電力がいまより約10%増えるだけでそんなに発電設備の増強は必要ないということになるようである。しかし発電能力で見るか消費電力で見るかという異なった前提での見解のどちらが妥当か私には理解しにくい。私としては発電設備をどのくらい増強する必要があるかの方が納得しやすい。
日本の学者方式に批判的なひとのネット記事では、夜間充電5~8時間が通常家庭の使い方だから、乗用車約7000万台(80%EVシフトして約5600万台)のうち2000万台がその夜間のある時間帯同時に家庭用充電設備(消費電力は3000W)で充電するとしたら6000万kW(60GW)の電力が必要になると言って疑問を呈している。私も実用条件を踏まえたこの意見には納得である。EV以外の電力消費が夜間少なくなったとしても、例えば半分の30GWくらいの発電能力の増強は必要なのではないかという気がしてくる。
日本全体の発電能力は約22600万kW(原発を除くと約17500万kW)だそうである。30GW必要となったならば、EV分の稼働率100%としても現在の13%くらい増しの発電能力が必要ということになるわけである。また30GWはEEA方式での25GWの試算とも符合する。原発増設が見込めないとなれば、現状の原発以外の発電設備で17%くらいの増強が必要なようでその分CO2も増える可能性はあるが、石油系燃料車が減った分よりはかなり少ないのかも知れない。
以上が私の現時点での理解だが、EVシフトは発電所増強問題でもあるようである。いま各国にEVシフト強制の動きが出てきているが、どのくらいの割合でEVシフトを想定しているのか気になっている。発電所不要(とは言ってもエネルギー源製造のためにはいくばくかの発電所電力を消費するはず)のEV各方式とか石油系燃料車との住み分け比率の議論が今後出て来るのではないかという気がしてならない。
補足: 固体電池が2020年頃までに開発されるらしい
2017.11.05
今日のテレビ番組を見ていたら、大きさ半分くらいになって充電時間5分くらいの固体電池というのが開発中ということである。充電時間8時間が5分になれば100分の1の時間で充電できるようになるわけである。家庭用にもし5分で充電可能な高W数の充電器設置が普通に出来るようになれば、同時充電自動車台数は夜間の時間内で分散させられるので必要発電能力も少なくなる。それなら日本の学者の研究と言われている試算も成立するのかも知れない。充電器や電池そしてEVの現実的仕様ミックスでの全日本想定の運用シミュレーションがなされている試算なのかどうか知りたいものである。
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屋久島方丈記・偏見ご免のたわごと編:
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No.495 離島ではEVよりHVか_屁理屈をこねる (2018.12.24)
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