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  たわごと編: No.251  
  2014.11.03 老後破産と煽られて  
 
  10月中ごろ見たあるブログに9月末に放送され私も見たNHKスペシャル「老後破産の現実」に関する記事があって、それによると独居老人600万人の半数が年120万円未満(年収120万円は生活保護水準以下)の年金で暮らしているそうである。また日本各地の高齢世帯を調査しているある大学の教授の推定では日本全国に低年収の高齢者は300万人だそうである。65歳以上の高齢者は日本全国に3200万人だからおよそ10人に1人が老後破産の状態にあるという計算になるということである。

高齢者26%以上という私の住む集落の高齢者は170人余(2010年)だが、周囲を眺めても老後破産している高齢者は見当たらない感じで実感がない。それをあけすけに言えない問題の性格上かあるいは現実に見る姿が問題と定義されている破産に抱く私のイメージと隔たりがあって実感出来ないのかも知れないが、本当に10人に1人かどうか疑問に思ってしまう。(2012年の当地のあるひとのブログによれば、屋久島町の生活保護者は全員65歳以上とは思われないが207人ということである。また2010年の人口データでは65歳以上3,800人余である。10人に1人ということはなさそうに思える。)

またNHK番組の老後破産例の取材では個別の家庭の事情によって苦境に陥った例を見せていた。しかし私の印象ではその例で全体を論じることができるような感じはしなかった。老後破産の状態にあるという300万人が本当に全員120万円以下のお金しか使っていないあるいは使えないということなのか、他に手当できるお金は持っているが収入が120万円未満なのか、換金できる資産を持っているが換金していないからなのかあるいは援助者がいるのかいないのか、例だけを見ていてはよく分からない印象だった。

本当に他に保有資産もなく年に120万円未満しか使えるお金がないということならば、NHK番組の言うように何か保護の手立てを講じる必要があるだろうが、実際のデータはどうなっているのだろうか。マイナンバー制度が施行され国民全員が収入と資産を隠せない状況になれば保護すべき老後破産者の実際が見えてくると思われる。あいまいな実態把握の取材例を見て感情的にただかわいそうだからとやみくもに保護のはなしに行くのは問題のような感じがした。

またあるブログを見たら、年度は分からないが個人資産(金融資産含む)の年齢層別分布で60歳以上(人口35,937千人・約3,600万人)の世代の一世帯当り世帯主資産額は103,362千円・約1億円)で、他の世代の同様データとこのデータから計算すると60歳以上の世帯主の一世帯当たり個人資産額割合が全世代に占める割合が71.9%になる。多額の資産保有者が平均を押し上げているにしても個人資産は60歳以上の世代に偏在しているということになるそうである。

そしてまたあるブログでは、この資産偏在データなどを理由に高齢者はかわいそうなのだから国がさらに金をつぎ込むべしと言っているように見えるNHK番組はおかしいのではないかと疑問を呈している。多額の資産を持っている高齢者世代が同世代の本当に困っている人たちを支えるべきではないか、さらにはいま高齢者を支えている世代の負担を軽減してやるべきではないかということである。例えば負担出来るひとについては医療費負担は現役世代並にするなど高齢者だからと一律低負担で提供している社会的サービスのやり方を見直してもよいのではないかというようなことである。NHK番組は高齢者対策にさらに国が金をつぎ込むべしと言うだけのようで、片手落ちの論議である。税金で助けてあげなくてもいい裕福な高齢者の貯金を殖やすために社会保障・福祉費用を膨張させ、未来ある子供・若者達ひいては未来の国作りのために使われるべきお金を浪費するのはいかがなものかと批判している。

一方メディア関係のネット記事を見れば、老後破産と脅された現役世代がそれをどう回避すべきかという論点が多い印象である。老後資金をどう準備するかとか、どう老後を過ごすべきかというようなことである。ある記事では、老後は子や孫と縁切りせよというのもあった。愛情・気持ちだけは分け与えても、金銭的には縁切りしないと老後破産しかねないというはなしである。これには私も共感するところがある。退職時に平均寿命までに年金込で1億円は必要だからそれに見合ったお金を貯めておけというはなしに落ち着かない日々を過ごしてきた。またいまは私のしてきたと同様に子が死ぬまで自分たち親の面倒を見てくれるという前提(例えば跡取り息子というような概念)は、労働人口の流動化と核家族化で消滅してしまったから自助努力で死ぬまでの暮らしを賄わなければならなくなった。私も出来る範囲で準備してきたが、常に将来不安が頭を過る。

高齢者にひとにより多寡の差はあれそれなりに資産が偏在しているのは、それまでに働いたり努力してきたからであって、いまの現役世代も多分資産をそれなりに保有した高齢者になるのだと思われる。しかし現役世代の人口が減少し増えた高齢者のためさらに負担を求められればそれが叶わないかも知れない。やっぱりNHK番組を批判するあるブログの言うように、マイナンバー制度で全国民の収入・資産を透明化して負担できる高齢者世帯には現役世代並みの負担その他をしてもらうことを考えなければいけないように思える。NHK番組が福祉が行き届いていないと言うのは煽りかも知れないが、現に老後破産不安をもたらしている状況があるのは間違いないと思われるから何らかの改善は必要である。改善策は将来高齢者となる若い世代を含め全世代が納得するものにして欲しいが、高齢者になる過程を経てきた私としては公平・公正のみならず将来不安(節約志向になりすぎる一因でもある)から開放されるような施策が重要だと思っている。


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