|
|
春闘についての感想である。政府からのプッシュもあってか、今年は大手企業多数での賃上げ回答が話題になっている。TVである大手の企業が開発投資もしたいが従業員のやる気を期待して賃上げの決断をしたと語っていた。一方では賃上げをする大手の下請け企業ではコストダウン要請が来て賃上げどころではないというはなしもある。
大手が賃上げしたとして、その原資は社内合理化、購入コストのダウン、製品値上げということになる。自分たちで売値を決められるから製品値上げはしようと思えば出来る。社内合理化は自分たち社内発生費用の低減であるから自分たちの仕事を工夫すればなにがしかできる可能性がある。そして購入コストのダウンである。自分たちの仕事のための購入コストは社内合理化ですべきものであるから、購入コストのダウンとは自社製品に組み込む部品の納入価格低減ということになる。納入価格低減には自社の仕様見直しによってもできるが、これも社内合理化アイテムであるから、納入価格低減とはつまり下請けなどの納入業者に値下げを要求するということになるわけである。
ここで大手企業と下請け・中小の賃上げの関係についてである。分かりやすく例えば下請け企業が大手としか取引のない系列企業だとする。大手が値引きを要求しなければ社内合理化で大手同様の努力を前提にして賃上げできるかもしれない。またこの下請けも材料などの納入品値引きを出入り業者に要請しなければその出入り業者も賃上げが出来るかもしれない。しかし下請けに順次納入価格の値引きを要請すると下請けは順次連鎖的に賃上げが難しい状況に追い込まれる。つまり顧客から製品価格を下げてくれと言われず反対に値上げを決められる大手以外は、賃上げにハンディキャップがあるのである。
私は、大手賃上げから中小に波及というシナリオを実現するためには、賃上げに付随して下請けに納入価格の値引きを要請しないことが必要で、政府は大手に納入価格の値引き要請をしないことも合わせて賃上げを要請すべきだったと思っている。そしてもし大手が賃上げ後製品値上げをした場合には、下請けの納入価格についてもその品物の寄与分を値上げしてやるようにするのが大手の責任のように思える。しかしあるいはそして、それでは買い物売り物の価格水準は平行移動的に上がるだけに近いので、賃上げの効用はあまりないということになって、いっときの賃上げ感に浸っただけになるのである。
私の経験では従来、大手が製品を値上げをする。その一方で下請けには納入品の値下げ要求が来る。そして下請けやその従業員はしがらみで値上げされた大手の製品を購入する。下請けやその従業員は自分たちの安くした品物が組み込まれている製品を今までより高く買うハメになるのである。開発力のある大手あるいは中小が新たな価値の製品を生み出さない限り、賃上げの効果は一時的に終わるのではないかと思うわけである。
(関連記事)
屋久島生活の断片・偏見ご免のたわごと編:
No.216 巧妙な仕組みのこと
[2006(H18).08.05]
. |
|
|
|