屋久島生活の断片・偏見ご免のたわごと編
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No.216 巧妙な仕組みのこと  H18.08.05)

松下やキャノンなど大企業が偽装請負をして問題になっている。大企業は自分の利益のために結構自分勝手なずるい仕組みを巧妙に仕組んだりするものである。官僚が勝手放題に自分たちのために金を使えるようにと法律に仕掛けをするのと同根である。

私も大企業に働いていたのだが、相手の身になれば文句を言いたいような不利な条件でことを押し付けていると感じがしたことがいくつもある。疑問を感じながらもお人よしでは会社でやっていけないと口封じされて今に至っているが、有能といわれる人間や優秀といわれる会社などには道義に悖ることを平然とする冷たい一面もあるものである。

私が見聞きした巧妙なしくみの一つ目の例である。部品を購入している親会社が納入部品の価格低減のために関連会社に自社の品質管理賞に挑戦させる活動をしているのを見聞きしたことがある。親会社の心証を良くしないと商売に差し障ると思うから大抵の関連会社はその活動に参加する。

受審用の改善プログラムを日常業務と別に休みを返上してやらねばならない。日常の業務にも受審のためだけのような追加作業が波及してきて、従来の仕事をこなすだけでも大変な現場に負担を強いる。大体自分たちの業務を自分たちのやり方を改善してきて上場もして今の会社があるのである。だから関連会社は良いとこ取りはする気はあっても今まで築いてきたやり方を根本から変える気はない。

私が見てきたところでは、賞を貰ってしまえばこっちのものという感じである。賞を貰いましたと宣伝はするが親会社以外には通じないから、現実の取引に支障のない活動は消滅してしまう。親会社も活動が終わればいくら安くするか、それだけである。それでも形式上定期的に親会社のフォローがあるが、その場凌ぎでそれように活動を設定して凌ぐのである。その分、通常より負担が増すから、関連会社にとっては迷惑な話である。

親会社が関連会社を締め付ける一方で、自社のアッセンブリー製品の不具合が納入部品に悪さをしても、自社生産部分の改善を避け納入部品で問題を解決することに熱中する。自分たちは人に教えたようなやり方はやらない。自分たちに都合のよいやり方で対応をするのである。それで品質管理賞が自分に都合のよいように周りを動かす仕組みだと見えてくる。そうでない振りをして品質管理賞に挑戦させるのは、親会社あるいはその購買部門が納入コストを削減させるための方便、自社に忠誠を尽くさせる踏み絵みたいなもので、安くすれば仕事をやるということに過ぎないのである。

親会社も始めたむかしは関連会社の実力不足に困って育成に乗り出したのだろうが、時が経つと親会社の有能といわれる人たちが関連会社育成活動の趣旨から離れ自分たちの成果目標を達成するために、その目標に疑問を持たせずただただがむしゃらに活動させる道具に変質させたのではないかという気がしたものである。

もう一つの例である。承認申請という仕組みである。大企業が製品を企画し、開発し、組立生産する。部品会社は要求仕様にあった機能部品を開発し、大企業が採用を決定したら生産納入する。そういうなかでのはなしである。

部品自体を実際に開発する技術は部品会社が持っている。大企業は採用を決定する前に承認申請資料と称して仕様適合を示す図面やデータなど以外の部品会社のノウハウを吸い上げる。大企業ははじめて開発する部品についてあまり良く知らない。だが製品のモデルチェンジやクレーム対策などの度に発注先変更を匂わせたりして詳細資料を提出させることを繰り返し、ノウハウを十分蓄える。

そして自分たちが自信を持つようになると裏で蓄積したノウハウをちらつかせながら競合部品会社に同様の機能部品を開発させるようになる。それと並行して原価低減と称して部品会社に納入価格の低減を要求するようになる。そして部品会社数社を操りながら大企業の原価低減、即ち部品納入価格の低減を図る。技術召し上げのずるい仕組みに見えたものである。

もう一つ大企業が部品会社のノウハウを吸い上げるやり方がある。共同開発と言う。生産発注をちらつかせながら部品会社の技術者を出向のかたちで差し出させたりして、製品本体の部品とのインタフェース部分まで部品会社に開発させてしまう。労力を節約しながらノウハウを吸い上げ蓄積できる。

あるいはまた部品会社への技術支援をうたった共同研究開発というのもある。大企業の研究所などで開発をしている新製品に部品会社の機能部品が必要な場合に声が掛かる。技術支援の意味は開発している新製品があってそれに必要な部品への要求仕様がシステムがらみで分かるという理屈である。あいまい仕様で部品会社が開発しては研究所に持ち込み製品に組み込んでの評価を受ける。その評価情報も技術支援の一つと言うことになる。

殆どの場合、部品会社の方は開発する労力を低減できるような技術支援やノウハウが得られるわけではない。要求仕様をつくれないから部品会社に共同研究開発を求めている。また部品会社にとっては商売に当たって大企業の心証を良くするための労力提供サービスの一面もある。部品納入利益を大企業に事前還元させられているのである。

外国の大企業の例である。日本の会社のあるシステムをライセンス生産していたのだが輸入していた純正の構成部品が高いから、同等部品を国内部品会社に作らせることにした。しかしそこは技術がない。道義的には止めるべきという意見が社内外にあったが私が出向していた関連会社でその大企業から頼まれトップがその部品の開発を請け負ってしまった。それが私に回ってきていやいややった経験がある、今でも後味が悪い。そのとき、道義に悖ることをする会社は、トップや有能と称される押しの強い人たちが道義を守る意識が低いということだと思ったのである。そういう人たちは自分が邪悪だという意識がなく道義に悖ることをするので始末に悪い。


 
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