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  たわごと編: No.196  
  2013.11.25 料理メニューの食材偽装問題  
 
  阪急阪神ホテルズの食材偽装問題が大きく報じられるようになったら、次々うちもうちもと似たようなことをやっていたと言い出すホテルやレストランが出てきたが、屋久島のあるホテルでも社内調査である時期、メニューの屋久島鮮魚の天ぷらで素材は車海老と表示していたが、ブラックタイガーやバナメイエビを使用していたことが分かったという報道が11月初めにあった。原因はチェック体制やスタッフの理解・知識不足によるもので意図的なものではなかったと言っているようである。

どこも偽装理由は意図的でないと言っているわけだが、プロの料理人が食材を見て見分けられないということは信じがたいから、知っていながら偽装表示を正さなかったというのが真実ではないかと私は思っている。そもそも飲食業や食品製造業などでは必ずしも正確な品名を書かないことはむかしからあったものと思われる。ひとの味覚はいい加減なもので微妙な味の違いを判別したりするのは難しく、出来るひとはなかなかいないと思われる。何年か前に食品ブランドの偽装問題が話題になったことがあるが、味や食感でこれがどこのなんという種類の食材か見分けることが難しいことは証明済みである。

食材の種類が少し違っていてもうまければ良いはずだが、料理が出来合いのありきたりと変わらないへんてつもない名前では、その店の料理がうまそうだと有難がたって高い金を払ってまで食いに来るひとはいまほど多く期待できなかったと思われる。そこで料理の有り難みを増しひとをひきつける手段として、イメージで操作できる味覚で店の差別化を図ろうとメニューをおいしそうに書く方法を選んだわけである。このメニューはこの店のこういう料理のブランド名であるというのが、メニュー偽装の実際であると思われる。メニュー偽装は食材の真偽の問題ではなく、店の料理のうまさをアッピールするために店と対になった料理としての固有名詞的命名だったというのが、私の理解である。あそこのホテルのあの名の料理という意味合いなのである。そしてその料理のうまさに自信があれば、メニュー表記が可怪しかったと言われても謝罪したり返金するほどのことではないと私は思っている。

ネットで見たどこかの記事によれば、例えば葛餅やわらび餅として売られているもので本物の葛やわらび粉を使っているものはほとんどないそうだし、片栗粉だって実際に片栗の根から作っていたのはおおむかしのはなしでいまはジャガイモのデンプンだそうである。こういうことは暗黙の了解としてむかしからあったということである。他にもシシャモという名で売られているが本当はシシャモでないとかいろいろ食品名でも似た例はあるようである。そういうことを踏まえれば、なにがどこから偽装かということについては議論の余地があるということになる。食材と違い料理名については厳密で正確な表示が絶対的に必要なのかどうかということである。表示規制についてのはなしもあるようだが、本当はなぜメニューの食材を正しく書かなかったのか、その意味合いをもう少し深く分析し実態調査を行ってから規制しないと、料理は差別化のための店名を冠したへんてつもない名前しか付けられなくなるかもしれない。

補足: ネコという名のイヌ
2013.12.01
遠藤周作のだったと思うが、ネコという名のイヌ(あるいはその反対かも知れないが)という題のエッセイを読んだ記憶がある。イヌのはなしだとすれば、自分の家のイヌをネコという名で呼ぶわけである。小さなエビにシバエビという名を付けて、店でシバエビと呼ぶのもそれに似たような感じがしないでもない。エッセイと違ってユーモアとは言い難い感はあるが、自分の店の料理の食材の名前を自分なりに付けた名前で呼ぶのもあり得ると思うわけのひとつである。


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