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  たわごと編: No.448
 
  2018.02.19 老人の取扱説明書_最近話題のことがない  
 
  「老人の取扱説明書」(平松類著・SB新書)を読んだ。高齢者のいわゆる困った行動は大体が老化のなせる業なのでそれを知り周囲が適切な対応をとれば高齢者と周囲と互いの気持ちのすれ違いやイライラが軽減できるということを具体的な事例をもとに説明している本である。

本の対象者として、高齢者を抱える家族、将来高齢者になる不安を抱えているひとあるいは既に高齢者のひと、そして高齢者とかかわる職業のひとということだが、私や妻は自身が既に高齢者であるというところに該当する。しかしまだ困った行動をしているというほどではない高齢者の範疇にある。私はそう思っている。そしてこの本で自分の老化がどのくらいの程度でそれが進行しないようにするにはどうすればよいのかあるいは進行はやむを得ないとした場合どのように受け入れながら齢を重ねて行けばよいのか、すなわち自分をどう取り扱っていけばよいのか知ろうと思ったわけである。

私が知りたいことに関連したところでは、「物音、寒さや暑さ、かゆみ、痛み、簡単に起きてしまう」という項目がある。睡眠に悪影響するものとして挙げたのだと思われるが、私の関心は睡眠とは関係ない。私の関心は高齢になっていろいろなところが痛くなったりするのだが、こういうところはこういう理由で痛くなる、それは心配ない痛みだからこうして凌げというような内容である。高齢になって致し方ない痛みとそうでない痛みの区分けとその取扱いについて期待したのである。痛みを訴える高齢者の家族や介護・看護に当たるひとたちは困っていないのだろうかと気になってしまった。

もう一つ私が関心を持っていることは、性に関することである。性関連と思われるところは「高齢者も実はアダルトサイトをよく観ている」というところだけで、アダルトサイト詐欺や出会い系サイトで高額請求されやすいので高齢者本人が困った事態になったら隠さず正直に周りに言うようにまた周りは責めないようにという無駄金遣いの心配の項目くらいである。

しかし私は昨今報道されているシニアストーカーやTV番組で話題になった高齢者の性の問題がどう説明されているかに関心があった。しかし皆無だった。そこで私がネットで調べたところでは、シニアストーカーについては、高齢者が最近増えているというはなしはウソでストーカー事件の総数が増えているため高齢者の事件数も増えているだけで、5年前からストーカー事件全体に対する高齢者加害事件の割合は1割弱でほとんど変わりなく推移しているそうである。

シニアストーカーの話題を提起したらしき記事には、何かを求めていて疎外されている高齢男性がレジなどで自分より年下の女性が優しく接してくれたのを自分が好きに違いないとか錯覚してしまうことは少なくないというようなことが書いてあった。しかしストーカー事件としては高齢者の率は増大していないのだから高齢者を集中攻撃する理由にはならない。

ただ男女を問わず優しくしてくれる異性には高齢になると錯覚しがちなのは理解できる。この本にもあるが「高齢者は物事のいい面を見がち」ということだと思われる。私の今は亡き父はひとに優しかったから自分にはその気はないのに女性から好意を抱かれることがあった。その血を引いている私も男女の仲のではないただの好意で言ったことが女性に間違って取られているなと感じたこともある。こういうことは老若男女を問わない感じがするが、一応本では取り上げたらよかったなという気がしている。

もう一つの高齢者の性のことである。介護施設での性問題とか生涯セックスなどが最近話題である。高齢者自身が意識するとしないにかかわらず高齢者と性の問題は切り離せないものと思われる。こういう問題がもとで困った行動を起こしたり周囲が心配させられる心身の変調を来したりしているかも知れない高齢者はいるはずである。しかし性の問題はあまり大ぴらに話題にすることが出来ない風潮が特に日本では強い印象がある。

この本では、金銭問題として「高齢者も実はアダルトサイトをよく観ている」という項目を挙げているが、性問題に関連した記述はない。しかし配偶者を失ったり家族と同居していたりで周囲のひとの耳目が気になる高齢者はいると思われる。それが性の問題を隠したり表面化しないまま鬱屈した状況になることは十分考えられる。高齢者はセックスに関心がないはずであるとのいままでの概念を捨てて高齢者の行動や思いを理解するようにしなくてはいけない感じがする。私はその辺のことに一番関心があったのだが、何も書いてなく期待外れだった。


補足: 
高齢者の性問題の調査研究紹介_ネット記事から
2008年の記事だが、フィンランドの研究チームの55~75歳の1000人近い男性についての調査研究の発表では定期的な性交渉は中高年男性の性的不能予防に重要な役割があるということである。

2015年の記事では、イギリスで行なわれた研究で、60代、70代で満足できる性生活を送る者は頭脳明晰で記憶力にも優れているという結果が発表されたということである。そして70歳代の半数以上の男性と、3分1以上の女性がまだまだ性的に現役であり、これらの人々の3分の1は少なくとも月に2回はセックスしているという結果をも出ていたようである。

またこれも2015年の記事だが、オランダのアムステルダム自由大学メディカルセンターの研究チームが、58~98歳のオランダの男女約1700人に対して現在の性生活とセックスの必要性について聞込調査と記憶力から抽象思考能力まで全てを測定する一連の認知テストを行なった結果では、高齢者の多くが日常的にセックスを行なっており、性生活に満足しているひとやセックスの重要性を自覚しているひとは認知テストの成績が良いという傾向があることが判明したということである。

2017年の記事では、英国の大学の研究チームが性交渉の頻度を増やすことが、認知力を高めることにつながる可能性があるという研究を発表したそうである。ただし、セックスが脳の機能を良好に保つのか、あるいは認知機能が良好なひとがセックスを続ける可能性が高いのかといった関連については十分に解明されてはいないのでセックスは万能というわけではないが、社会レベルで高齢者はセックスしないのではないかという既成概念にとらわれず健康や生活の質にも影響することに配慮していく必要があるということである。


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  No.444  セクハラ_カトリーヌ・ドヌーブの心配  (2018.01.22)

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