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「君が代」は天皇の統治する時代が永く続くことを願った歌なのだが、君が代とは日本という国が永く存続していくことを願う歌であると解釈されると小学生のころ教えられて以来、国歌「君が代」を歌うことについて私は疑問を持たず歌って来た。日本が存続して来た証のそしてそれが続いてほしいという願いの象徴だと思っている。
教育勅語については、冒頭の「朕惟フニ」というところから天皇がその思いを述べているという向きもあるが、朕とはそれが象徴する日本としての意味合いが強く、国民としてのある時代の望ましい姿を述べたものと思われる。ただ教育勅語が誤って使われた時代があったことは否めない。そういう時代を忌避する思いで見れば過去を美化し一定の規範を強要していると見えると思われる。
私としては、むかしから続いてきた望ましい日本のものの見方考え方を国民として受け継ぎ伸ばして行きたいということだと解釈すれば、抵抗はない。朕とか皇祖皇宗とか臣民とか國体とか皇運とか、君が代の詠み方と同じくある時代背景があっての書き方で書かれたものとしてみればよいと思われる。朕は日本の象徴だし、皇祖皇宗とは遠い自分たちの祖先のことだし、臣民とは国民のことだし、国体はそのときの国のありようだし、皇運とは国の先行きを意味して書かれたものである。
ただ私としてはそれをそのまま読んだり唱えたりするものとは思わないしまたその気もなく、ある時代の見方で書かれた書き物として見ている。論語その他中国の道徳古典に似た存在である。それらは政治的あるいは教育的に規範にすべきものでもなく、歴史的文書としてあるものだと思っている。そして日本は出版大国でいまは多様で優れた望ましい生き方を感じ得る本がいっぱい存在して参考になる。人としての生き方の見かけはいろいろあるということである。ひとはそれらを参考に自分なりの考えを構築していけばよいわけである。しかし社会あるいは国を構成するひととしての望ましい在り様というのは、結局は教育勅語のエッセンスみたいなシンプルなところに帰結するのかも知れない気もしている。
参考: 教育勅語
注1: 参考本文中の「原文、口語訳、英訳」については
(1)原文は、(本文の色)
(2)口語訳(緑色)は、国民道徳協会の訳文による
(3)英訳(紫色)は、明治40年の文部省発表による
注2: 赤色は高橋源一郎氏訳(ネット公開情報による)
(以下、参考本文)
教育ニ関スル勅語
Know ye, Our subjects:
朕惟フニ、我ガ皇祖皇宗、國ヲ肇ムルコト宏遠ニ、徳ヲ樹ツルコト深厚ナリ。
私は、私達の祖先が、遠大な理想のもとに、道義国家の実現をめざして、日本の国をおはじめになったものと信じます。
Our Imperial Ancestors have
founded Our Empire on a basis broad and everlasting and have
deeply and firmly implanted virtue.
はい、天皇です。よろしく。ぼくがふだん考えていることをいまから言うのでしっかり聞いてください。もともとこの国は、ぼくたち天皇家の祖先が作ったものなんです。知ってました?
とにかく、ぼくたちの祖先は代々、みんな実に立派で素晴らしい徳の持ち主ばかりでしたね。
我ガ臣民、克ク忠ニ克ク孝ニ、億兆心ヲ一ニシテ、世々厥ノ美ヲ済セルハ、此レ我ガ國体ノ精華ニシテ、教育ノ淵源、亦実ニ此ニ存ス。
そして、国民は忠孝両全の道を完うして、全国民が心を合わせて努力した結果、今日に至るまで、美事な成果をあげて参りましたことは、もとより日本のすぐれた国柄の賜物といわねばなりませんが、私は教育の根本もまた、道義立国の達成にあると信じます。
Our subjects ever united in
loyalty and filial piety have from generation to generation
illustrated the beauty thereof. This is the glory of the
fundamental character of Our Empire, and herein also lies
the source of Our education.
きみたち国民は、いま、そのパーフェクトに素晴らしいぼくたち天皇家の臣下であるわけです。そこのところを忘れてはいけませんよ。その上で言いますけど、きみたち国民は、長い間、臣下としては主君に忠誠を尽くし、子どもとしては親に孝行をしてきたわけです。その点に関しては、一人の例外もなくね。その歴史こそ、この国の根本であり、素晴らしいところなんですよ。そういうわけですから、教育の原理もそこに置かなきゃなりません。
爾臣民、父母ニ孝ニ、兄弟ニ友ニ、夫婦相和シ、朋友相信ジ、恭倹己レヲ持シ、博愛衆ニ及ボシ、学ヲ修メ、業ヲ習ヒ、以テ智能ヲ啓発シ、徳器ヲ成就シ、進ンデ公益ヲ広メ、世務ヲ開キ、常ニ國憲ヲ重ジ、國法ニ遵ヒ、一旦緩急アレバ、義勇公ニ奉ジ、以テ天壌無窮ノ皇運ヲ扶翼スベシ。
国民の皆さんは、子は親に孝養をつくし、兄弟、姉妹はたがいに力を合わせて助け合い、夫婦は仲むつまじく解け合い、友人は胸襟を開いて信じあい、そして自分の言動をつつしみ、すべての人々に愛の手をさしのべ、学問を怠らず、職業に専念し、知識を養い、人格をみがき、さらに進んで、社会公共のために貢献し、また法律や、秩序を守ることは勿論のこと、非常事態の発生の場合は、真心をささげて、国の平和と、安全に奉仕しなければなりません。
Ye, Our subjects, be filial to
your parents, affectionate to your brothers and sisters: as
husbands and wives be harmonious, as friends true; bear
yourselves in modesty and moderation; extend your
benevolence to all; pursue learning and cultivate arts, and
thereby develop intellectual faculties and perfect moral
powers; furthermore advance public good and promote common
interests; always respect the Constitution and observe the
laws; should emergency arise, offer yourselves courageously
to the State; and thus guard and maintain the prosperity of
Our Imperial Throne coeval with heaven and earth.
きみたち天皇家の臣下である国民は、それを前提にした上で、父母を敬い、兄弟は仲良くし、夫婦は喧嘩しないこと。そして、友だちは信じ合い、何をするにも慎み深く、博愛精神を持ち、勉強し、仕事のやり方を習い、そのことによって智能をさらに上の段階に押し上げ、徳と才能をさらに立派なものにし、なにより、公共の利益と社会の為になることを第一に考えるような人間にならなくちゃなりません。もちろんのことだけれど、ぼくが制定した憲法を大切にして、法律をやぶるようなことは絶対しちゃいけません。よろしいですか。さて、その上で、いったん何かが起こったら、いや、はっきりいうと、戦争が起こったりしたら、勇気を持ち、公のために奉仕してください。というか、永遠に続くぼくたち天皇家を護るために戦争に行ってください。
是ノ如キハ、独リ朕ガ忠良ノ臣民タルノミナラズ、又以テ爾祖先ノ遺風ヲ顕彰スルニ足ラン。
そして、これらのことは、善良な国民としての当然のつとめであるばかりでなく、また、私達の祖先が今日まで身をもって示し残された伝統的美風を、更にいっそう明らかにすることでもあります。
So shall ye not only be Our good
and faithful subjects, but render illustrious the best
traditions of your forefathers.
それが正義であり「人としての正しい道」なんです。そのことは、きみたちが、ただ単にぼくの忠実な臣下であることを証明するだけでなく、きみたちの祖先が同じように忠誠を誓っていたことを讃えることにもなるんです。
斯ノ道ハ、実ニ我ガ皇祖皇宗ノ遺訓ニシテ、子孫臣民ノ倶ニ遵守スベキ所、之ヲ古今ニ通ジテ謬ラズ、之ヲ中外ニ施シテ悖ラズ。
このような国民の歩むべき道は、祖先の教訓として、私達子孫の守らなければならないところであると共に、このおしえは、昔も今も変わらぬ正しい道であり、また日本ばかりでなく、外国で行っても、まちがいのない道であります。
The Way here set forth is indeed
the teaching bequeathed by Our Imperial Ancestors, to be
observed alike by Their Descendants and the subjects,
infallible for all ages and true in all places.
いままで述べたことはどれも、ぼくたち天皇家の偉大な祖先が残してくれた素晴らしい教訓であり、その子孫であるぼくも臣下であるきみたち国民も、共に守っていかなければならないことであり、あらゆる時代を通じ、世界中どこに行っても通用する、絶対に間違いの無い「真理」なんです。
朕、爾臣民ト倶ニ拳々服膺シテ咸其徳ヲ一ニセンコトヲ庶幾フ。
私もまた国民の皆さんとともに、父祖の教えを胸に抱いて、立派な日本人となるように、心から念願するものであります。
It is Our wish to lay it to heart
in all reverence, in common with you, Our subjects, that we
may all thus attain to the same virtue.
そういうわけで、ぼくも、きみたち天皇家の臣下である国民も、そのことを決して忘れず、みんな心を一つにして、そのことを実践していこうじゃありませんか。
明治二十三年十月三十日
The 30th day of the 10th month of
the 23rd year of Meiji (1890)
御名御璽
(Imperial Sign Manual. Imperial
Seal)
(以上、参考本文)
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