My logbook : 屋久島方丈記 
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  たわごと編: No.130  
  2012.10.29 既視感があるiPS細胞移植の成果主張  
 
  森口氏のiPS心筋細胞移植の真偽が話題になっている。山中博士のiPS細胞研究開発のノーベル賞受賞の発表に合わせるように出現した話題である。話題の出処の新聞ニュースは誤報とのはなしに落ち着いてきているようだが、森口氏は発表のほとんどは嘘だと認めながらも一例は移植手術し成果を得ていると言い張っているようである。真偽はいずれ検証されるだろうが、私はこの話題に関する一連のニュースを聞いていてむかしのある出来事に感じたと同じような印象を持った。

私はむかし十数年ある会社の研究所に勤務していたのだが、そこである人が学術解説書に出ているある分野のある課題に関しての解析プログラムの雛形・サンプルを真似しちょっとパラメーターを自分好みにしたシステムを作った。そしてそのシステムで計算した結果のモードが実際現象と似ているとして成果が出たと主張していた。私の関係する仕事にはそういうシステムがあれば便利である。そこで実際に使用してみると、それらしき結果は出るのだが、実際現象と対応が取れない。あるケースでは部分的にモードが似るがあるケースでは異なったモードになる。そして数値は実際とかけ離れている。となればまだ実用レベルではないということである。

それを指摘するとケチを付けられたと怒るだけで検証に応じない。学術書に出ていたプログラムをコピーして作成したシステムで計算したら何らかの結果は出るものである。その結果が実際の考えられる現象とそれぞれ対応がとれなければ成果とは言い難い。私はそのシステムを信じなかった。だが当時はまだよくコンピューター解析の名に眩惑されその中身の良し悪しを見極められない上司がいたものである。そういう上司が成果と認めその人に海外の学会での発表機会を与えたが、プログラム自体を公開するでもなくただこういうことをやって結果が出たということだけだったからか何の反応もなかった。そして本人もそれだけで実用化の努力はせずただその人の実績作りに終わってしまった感があった。私が会社を離れてから聞いたところではその人はその後どこかの大学の教師になったということである。

森口氏のiPS心筋細胞移植の成果を言い張るニュースを聞いて私はそのことを思い出していたのである。勿論やってもいないものをやったという捏造は論外だが、山中教授のiPS細胞の技術を応用して作成した心筋細胞を移植したというのが本当だったとしたら、雛形を真似したシステムで見かけの成果を出して実績作りをしようとしたとの印象を持ったむかしの出来事と同じではないかという気がしたのである。たった一件だけでもやったというそれだけを言い張るのを見てそんな印象を持ったのである。 
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