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5月の初めのころ犬と散歩で農道を歩いていたらセンダンの木に花が満開だった。私が移住して来て初めてセンダンの花を見て趣があるなと思ったのは、散歩で集落内にある小学校の庭の県道沿いに植わっている何本かの大きなセンダンの木のそばを通った時である。下から見上げると曇り空の色に溶け込んで紫がかった白っぽいもやみたいなものがかかっているように見えた。逆光で葉が濃い緑の中に透けてうっすらとなにかあるという感じである。近づいて何かなと目を凝らして見たら小さな花がいっぱい付いているのだが、離れて見るとそれらが点描の絵のように混じり合ってそういう印象になっていたのである。センダンの花は弱い光のなかでちょっと離れて観る方が色の微妙な変化があって趣がある。
(写真は農道脇のセンダンの木だが、明るい日の中で花の白色が強く見える。私は弱い光の中でぼんやりと薄紫に見えるセンダンの花の景色が好きである。)
私はセンダンという名は知っていたし当地に来てから花も見ていたはずだが、木と花を合わせてセンダンがどういうものか知ったのはその校庭で見たときである。ああいうのがセンダンだと知ってからは、白っぽい色が林の中に見えるとセンダンだなと思って見るようになった。センダンは熱帯・亜熱帯域に自生する落葉高木で海岸近くや森林辺縁に多く自生するということである。大きなものでは直径30~40cm、高さ10数メートルになり樹冠を大きく広げるということである。それでか遠くから林の上の方に見えることがよくある。比較的近くの場合はそれと分かるが、遠くに見える山裾に白っぽい色が広がっているのも桜も終わっている時期なので多分センダンではないかと思って見ている。
秋も終わりの頃になると小豆よりちょっと大きいくらいの実が黄褐色になる。何年も前に道端に落ていた実を拾ってきて家の縁の隅にまいておいたが芽を出した気配はなかった。ヒヨドリなどが実を食べるということなので食われて発芽抑制物質がとれ糞に混じって落ちた種からでないと発芽しないのかも知れない。わが家のそばの空き地にはセンダンの木が生えてきているが、鳥が実を食って糞をしたあとから芽を出したものではないかと思われる。成長は速い木だそうだがまだ細くて低いからか花は咲かない。
センダンといえば、「栴檀は双葉より芳し(せんだんはふたばよりかんばし)」という諺がある。栴檀は発芽の頃から早くも香気を放つように大成する人は幼児の時から人並みはずれて優れたところがあるという意味だが、この諺でいう栴檀はここで言うセンダンとは違う木だそうである。ネットで見たところでは中国でいう栴檀は香木の白檀(びゃくだん)だそうで、日本でいうセンダンの木の漢字名を何らかの事情で同じ発音の栴檀という漢字に取り違えたまま今に至っているようである。恥ずかしながら私はここに到るまでそういうことを知らなかった。これまでセンダンはよい匂いがするということだがなぜしないのかと不思議に思っていたのである。
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