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  日誌編 (with photo) ・ 偏見ご免のたわごと編  
  たわごと編: No.25  
  2010.11.29 「暴力装置」発言騒動  
 
  国会質疑の中で、仙谷官房長官が自衛隊は「暴力装置」と発言したことに対し、野党質問者が問題視して撤回と謝罪を要求したら、、「実力組織」と言い換えた上で発言を撤回し自衛隊に謝罪すると答弁し、菅首相も官房長官の発言について自衛隊のプライドを傷つけたと謝罪の意を表したことに絡む感想である。

「暴力装置」という言葉は政治学や社会学の専門用語として一般に使われているということなので、そういう観点から見ればその発言に至る経緯やその後の会見などでの説明から、答弁の中で「暴力装置」という言葉を使ったことは論理的には問題になるとは思われない。

しかし学問としての言葉との断りなしに政治の場で「暴力装置」という言葉が使われると、それがかつて自衛隊を違憲と批判する立場から使用されてきた経緯があるから、そういう批判に対抗してきた政治家や政党あるいはその支持者そして自衛隊から見れば、自衛隊を統制している政府・内閣のナンバー2が何を言うかということになる。

またその言葉を学問に関係ない一般人が聞けば、日常許されない暴力行為をする組織みたいな意味合いにとってしまって、いわゆる暴力を連想させるような表現をその組織を統制している政府・内閣のナンバー2が言うとは何事かと批判するものも出てくる。

さてここで、官房長官や首相や野党質問者が「暴力装置」という言葉をどう認識しているかということが私としては気になるところである。学問的意味にとっているのではないことは、そういう釈明もなく騒動になっているのだから別の認識でいることは間違いないと思われる。

考えられるのは、官房長官や首相はその立場にありながら、かつての左翼活動家などが自衛隊や警察を揶揄・誹謗する言葉として使用した「暴力装置」すなわち打倒すべき体制に属する組織である「暴力装置」という感覚が抜けておらず、自衛隊が自分たち政府とは別物的な意識が根底にあってのことではないかということである。そこで追求されると、後ろめたくて発言を訂正したり謝罪したりしたものと思われる。多分野党質問者もそのニュアンスを感じて追求したものと思われる。

他のケース、最も駄目なケースとしては、ただ暴力という言葉に反応して野党質問者が自衛隊のイメージを貶める発言だと噛み付いたとした場合である。官房長官は政治的経緯での追求であるとして訂正・謝罪発言をしたことはその後の会見などでも明らかなようだが、自衛隊のプライドを傷つけたというその謝罪の言葉から首相はもしかしたら学問的のみならず政治的観点の認識もなくただ暴力という言葉遣いが良くなかったという認識だったかもしれない場合である。

今回の「暴力装置」発言騒動では、官房長官は政治的か学問的、野党質問者はミーハー的か政治的、首相もミーハー的か政治的のいずれかで、各人そのいずれかは定かではないが、各人のいずれか同士が組み合わさった騒動だったように見える。この問題にコメントをする他の政治家たちも自分の言い分に都合の良い認識をもとに発言していたような印象である。

いずれにしても、政治家はその言葉の根拠・背景をはっきりさせてものを言ってもらわないと、騒動になるということである。そして官房長官がなんか聞いたふうな言葉を不用意に使ったことが発端の今回の騒動で、政府・内閣や政治家のあいだでの認識の曖昧さが浮き彫りになって政治家などの実態が現れた気がするが、特に政府ナンバー1と2の意識の根底に自衛隊など自らが統制する「暴力組織(学問における専門用語としての意味の)」に対し第三者的距離感を持っていそうなところが気になることである。
 
 
 
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