My logbook : 屋久島方丈記 
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  日誌編 (with photo) ・ 偏見ご免のたわごと編  
  たわごと編: No.17  
  2010.10.04 最近の時事問題二つ  
 
  1: 自分の足を食うタコ
菅総理は社会保障分野の介護・医療事業を成長産業にするという政策を掲げている。介護・医療業界に税金を投入し雇用を創出すれば、従事者の消費が経済を成長させる。増税して税金を投入しても、増税分は国民所得の増加で賄いうるようになる。と言っているようである。

介護・医療に従事していない私のような余裕のない人間は支払う税金が増えれば、収入は変わらないのだから当然消費が減ることになる。介護・医療以外の業界で介護・医療業界従事者のみの消費に依存する業界では所得は増えるからその従事者の消費も増える。その他の業界では所得の増える減るは介護・医療業界やその従事者とのかかわり具合によりまちまちである。つまりメリットあるいはデメリットを受ける両方の立場が存在するわけである。要は全体で見れば、税金投入分によるプラスの経済効果と、その恩恵に浴さない人たちあるいは業界の消費減退によるマイナスの経済効果のどちらが大きいかということが成否の鍵である。介護・医療業界とその他すべての業界(そのうち特に輸出産業が気になる)でのプラス・マイナスがどうなるかということである。

私はその政策を聞いて、多分タコが自分の足を食うに似た政策かなという感想を持った。タコの活動エネルギーも必要だから食った足の100%がエネルギーになるとしても元の体に戻るだけの栄養にはならないように、国が経済成長の果実たる税金を投入した(タコが外のエサを食った)わけではないから、増税した税金を投入しながら(足を食いながら)経済成長はしない(痩せていく)はずである、と直感的に思ってしまうのである。増税しないで税収が増えるなら経済成長しているとすぐ分かるのだが、国全体として、各分野の経済成長プラス・マイナスの効果を評価して本当に成算ありということなのかどうかの見通しがはっきりしていないから危惧を感じるのである。

2: 尖閣と危機管理
9月に発生した中国の領海侵入漁船と海上保安庁巡視船との衝突事件では、ビデオがすぐに公開されなかった。北朝鮮の不審船のときとかシーシェパードの調査捕鯨妨害の傷害事件のときはすぐビデオが公開されたような記憶がある。相手が何か言う前に相手に非がある証拠を先手をとって公開して、その事実を前提の非難の応酬をしていけば両国であるいは国際的に印象が異なってくると思われる。なぜ公開しないのか。すぐ公開できないのは、言い分に反することが写っているからではないかという疑惑を持たれ相手の強気を増長させてしまう気がする。

政権を狙う党は、政権をとる以前から外国と衝突する可能性のある問題その他国益の絡む問題については、国の方針の継続性を考えつつ、自分たちの考えを盛り込んだ統一見解や対処の仕方についての計画を持っていることが危機管理として必要である。そして政権をとった後、内閣・政府・与党・実務機関などにそれを徹底しておかなければ、一旦ことあるときの国あるいは政府の対応に迫力がなくなる。

当然、外国と見解が相違し何かのきっかけで具体的作戦を実行しなければならなくなったときには、どうするという行動計画案をきっかけとプロセスを含めいくつものケースについて検討してあることが大切である。完璧でなくとも泥縄式でなければ対応に余裕も出てくる。閣僚や実務機関がそれぞれ異なった見解で国益に絡む問題に対処するのではなく、政府としての統一計画のもとで行動をとるべきという気がする。それが感じられないので一国民としては不安である。

今回の中国の対応を見ているとその内容の善し悪しは別にして、先手を取り言うべきことを言って世界中に情報を発信し正当性を主張しているし、日本に順次計画的にプレッシャーをかけているように見える。そしてそれが国家として統一された行動になっているように見える。

一方日本はやるにあたっては、嫌な国だが北朝鮮のように相手の非難と制裁に耐えて自国の主張を貫いていくという覚悟を持って、今回の行動を開始したとは見えない。国の統一戦略に基づく具体的作戦計画があり、こう進めて行けば成算あるいはこういう落としどころがあるとの判断から、中国人船長の逮捕に踏み切ったとは思えない。きっかけとなる事件が起こったらまずそのきっかけにどう対処するということからして考えていなかったように見える。
 
 
 
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