屋久島生活の断片・日誌編
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No.282  浮釣木のこと  H21.11.30)

10年近く前に、向かいに引っ越してきた家からチロリアンランプという20cmくらいの苗鉢をもらった。そのころその名をロマンチックに思ったが実際に花の咲くのを見たことはなかった。庭に植えたがその年に花が咲いたような記憶があって結構成長が早い。伸びた枝を切っては挿し木して増やしたのだが、木のように上に成長すると言うよりは草のように横に広がってくる。まちがって芝生の縁のあたりに植えたためか庭の風情にそぐわない。

そこで敷地の縁あたりに移した。延びてきた枝を棒に絡めたりしても1.5mくらいより上には行かないようで横にたれている枝を横方向にガイドしてやるほうが先端が伸びていく感じがする。いまのところ大部分は地上0.5〜1mくらい間の高さで茂っている。我が家では日陰の存在になってしまったが、当地は温かいからか花は年中咲いている。

花の印象としては、中国風の飾りちょうちんのように私には見える。赤いちょうちん本体の下に黄色い飾りがぶら下がっているように見えるのである。チロリアンランプと言われるともっと淡い感じがして強い日の中が似合いそうな赤い色にそぐわない感じがするのだが、チロル地方の山小屋で灯されるランプの形に似ているところから流通名として付けられたようである。チロルと言われればなるほどという形のようだが色についてもそうなのかどうかは分らない。

このチロリアンランプは当初は草花の一種かと思ったのだがネットで調べたところでは、浮釣木(うきつりぼく)というブラジル南部原産のあおい科アブチロン属(イチビ属)の半つる性の常緑低木ということである。釣り糸に垂れ下がる浮きのようにも見えるところからか浮釣木(うきつりぼく)とも呼ばれるようになったらしい。ブラジルでのことか、むかしはこの木の繊維を使って布や繊維を作ったというはなしもあるらしい。また「アブチロン」の語源はギリシャ語で家畜の下痢止めという意味だそうだから家畜の下痢止めに使っていたのかもしれない。

この花木は浮釣木(うきつりぼく)、チロリアンランプの他にショウジョウカ、雪中花、ホクチガラ、黄麻(いちび)、フラワリングメイプル、インディアンマロウといろいろな名があるようである。

似たような垂れ下がる草花にケマンソウやフクシアがある。ケマンソウは中国・朝鮮半島原産の多年草(高山植物コマクサの仲間)で名前は寺院の堂飾りの華鬘(けまん)見立てて付けられたということだが、花茎に花がついている様子が釣り竿に鯛がたくさんかかっているように見えるところから鯛釣草という名でも呼ばれている。またフクシアは熱帯アメリカ原産赤花科フクシア属、釣り下がる花を釣りの浮きに見立てては釣浮草(つりうきそう)、イヤリングに見立ててはレディー・イヤドロップスという名でも呼ばれている。ということだが、いずれも釣りから連想した名もついているようである。


 
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