ということで、トラツグミだとしてのはなしである。トラツグミはスズメ目ツグミ科、大きさ30cm、東アジア、シベリア、ニューギニア、オーストラリアなどに分布するが、日本では九州以北に生息していて漂鳥または留鳥として夏は山で過ごし冬は平地にいるらしい。積雪のある地方や高地のものは冬は暖地に移動するので、例えば北海道では夏鳥ということになっているようである。
低地の雑木林や公園の林から亜高山の広葉樹林などに生息していて、冬は落ち葉をひっくり返しながら土中の昆虫の幼虫、ミミズなどを食べるということである。我が家では雨のときに芝生の庭によくミミズを見かけるから、今回のトラツグミも芝生の下にいるミミズでも探していたのかもしれない。
私は今回トラツグミの鳴き声を聞くことは出来なかった。もしかしたら夜にでも鳴いていたのに気がつかなかったのかもしれない。鳴き声についてはネットで見たところで夜中にヒーィ、ヒーィ、チィーと細い声で鳴くとか、ヒーィ、ヒーィ、チィーと細い声で鳴くとか、ヒーーー、ホーーーーあるいはツーーーという悲しげな声だとか、ヒーーーッという不気味な声だと表現されている。
さて、その悲しげで不気味な細い鳴き声にまつわるはなしである。むかしからいると信じられてきた鵺(ぬえ)という正体不明の化け物のことである。鵺(ぬえ)という化け物は日本古来から語り継がれてきた伝説の生き物で平家物語にも登場するが、頭は猿、胴は狸、尾は蛇、手足は虎の姿をしており、その鳴き声はトラツグミということである。その遠いむかし鵺
(ぬえ)と言えばトラツグミのことだったらしいのだが、鵺(トラツグミ)の声で鳴くと言われる得体の知れない化け物がいつの間にか鵺(ぬえ)と呼ばれるようになったということのようである。
また「鵺(ぬえ)の鳴く夜は恐ろしい」という言葉には鵺(トラツグミ)の声が妖しげで恐ろしげな感じがあるがその言葉は、もともとは寂しげに鳴く鵺(トラツグミ)の声が聞こえる夜は化け物・鵺
(ぬえ)のことを思い出し恐ろしい気持ちがするという意味合いで使われたものらしく、鵺(トラツグミ)の鳴き声が恐ろしい感じがするものという意味ではないようである。