屋久島生活の断片・日誌編
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No.235  実生の木のこと  H20.02.11)

私が今住んでいる家の土地を買ったときはその土地の造成が終わりかけている頃だった。南側の隣接地が段差の下になっていた。境界の杭代わりにはペンキで塗った木の棒が私の土地の平面の縁付近に立っていた。それから何年か経って家を建てる打ち合わせで土地を見に来たら境界がよく分からない。そこで家を建てるとき境界の標識をきちんと見えるようにしておいてと頼んで帰った。

Photo(左): 左の大きめの葉がトベラ、その右の小さいのがシャリンバイ  
          Photo(中): シャリンバイ 
                 Photo(右):
 播いてあるシャリンバイの実

引っ越してきた時にその標識を確認してみたら我が家の土地の平面の縁ではなく傾斜になった下側に近いところにある。土地の縁が何年かの間の雨で流れて、標識の位置が段差傾斜の下側付近になってしまったようである。傾斜の裾にありきたりにはハイビスカスが生えている。多分土が流れるのを止めるため業者が造成後に段差傾斜の下に植えたものと思われるが、効果あってかそのハイビスカスで流れた土が止まったようでその先の方はやや低くなっている。

そこで引っ越しの整理が済んですぐに、心配な境界部には石を積んだりあるいは盛り土したりした後、件のハイビスカスにならい、そこらへんに生えているハイビスカスの枝を切ってきてはその段差下に挿し木した。その後、近辺に実生の苗のような小さな木、シャリンバイ、ヒサカキ、トベラ、ユズリハなどを抜いてきては追加して植えた。ハイビスカスは成長が早く数年で大きくなる。それで他の小さな木の成長の邪魔になるかと時々切っていたら、そのうちそれらの木のいくつかは大きく成長した。

ハイビスカスの枝切りは繁ってきた夏にもしていたのだが、ハチに刺されることが二回あった。一回目のハチはアシナガバチで刺されてもちょっと痛いくらいだったが、二回目のはスズメバチらしく目に向かってくるのをよけたら目の下を刺され、ぐいっと食い込むような感じがして猛烈に痛かった。医者に行って注射してもらったが、目の周りが内出血なのかあざのようになってしまった。その後はハチ毒のショックがこわいので年一回ハチも出なくなるだろうと12月半ば過ぎてからハイビスカスの枝を始末することにした。

ほとんど1〜1.5mくらいの高さに切りそろえ枝を払う。そうしたらその根元に、植えたものではない実生らしき苗のような小さな木が生えている。多分鳥がした糞の中に食べた木の実の種が入っていてそれが芽吹いたものと思われる。高さ1cmくらいから20cmくらいのものもあるから、その年芽が出たものから何年か経ったものまであるようである。それを見て以来、私は散歩で目についた木の実を採ってきては、家の周辺の段差の下にばらまいている。虫に食われてしまうのか鳥が食べて発芽を抑制する成分が消えないと発芽しないのか芽が出る木は少ない。ドングリ(多分ケウバメガシ)とシャリンバイくらいのようである。

種をまいた憶えがないものでは、トベラ、ヒサカキ(これらは芽が出ているものや成長したものもある)、ツゲ、フトモモ(これらはもうかなり大きい)などがある。トベラやヒサカキは側で大きくなった木の実が落ちたものと思われる。シャリンバイでも種をまかないところで芽が出ているのは側の木の実が落ちたものと思われる。ツゲは鳥のおかげかもしれない。フトモモは誰かに実を貰って食ってみたことがあるから、もしかしたら私がそのあと種を捨てたものかもしれない。

これらの木の成長を見るのが楽しみである。毎日が屋久島の私が自然を楽しむのは実生の雑木を移植したり種をまいたり芽吹いたのを見たりしているときである。いまのところ南側の段差は私が枝払いをするから心配ないのだが、年に一週間くらいしか来ない隣の別荘の土地は業者が頼まれているのか年に二回くらいぼうぼうと生えた雑草を草払いする。そのとき敷地の境界付近に生えている私が成長を楽しみにしている小さな木(私が種をまいたものや他所から抜いて移植したもの、知らずに生えたものもある)を切り払われてしまうこともある。ここは一時期ごんべえの種まきみたいに植えておいたら無くなるの繰り返しのような感じだったが、それも楽しみの一つだった。


 
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