我が家の犬は生後2ヶ月余で我が家にやってきて以来初めての外泊である。多分一月くらいはペットショップにいたと思われるから放って置かれるのは経験済みで大丈夫かなと思う反面、もう昔のことは忘れて私たちに馴染み置き去りにされたと思うかもしれない。そう思って土曜朝出発しその夜食事会をして、私は翌日曜日に帰島し犬の引き取ることにし、妻は実家へ行ったり用事を足したりで後日帰ることにした。
金曜日、犬をあずけて顔も見ず建物の外へ出たら犬は一声大きく鳴いたが、こういうのにも慣れてもらわないとどこへも行けなくなる、亡くなった父も私たちが上京しなければならない時はショートステイを頼んで行ったものである、と割り切る。妻が言うには父をあずけて出かけるときの気分に似たものがある、あずけられるときのいやだけど我慢しているような感じの顔が父のそのときの顔と似ているそうである。
私は上京滞在まる一日もしないで帰島、すぐ犬を迎えに行った。建物のドアを開けるとケージの中で跳ね上がるように喜んでこちらから目を離さない。出したらはしゃいでなかなか紐をつけさせない。先生の話によるとえさを与えてもまったく食べなかったとのことである。まる二日食べなかったことになる。家ではえさを与えるとき食器に入れて前に持っていくと犬は座る、食器を床に置いてアイコンタクトをしたら「よし」と言うと食べ始める。
時に一度「よし」と言ってもまた私の顔をのぞきこんで躊躇するときがある。そういう時はもう一度「よし」と言うと食べ始める。はじめは一回で食べていたのだが勢い込んで食器を踏んでひっくり返したときに「まて」と言って途中でまたやり直すことがあったから、その「まて」が頭にあるのかもしれない。家では「よし」と言わず黙っていると食べないが、そのことを先生に伝えなかったのでまったくえさを食べなかったのかもしれない。
家に帰ってから水を与え、少しずつえさを与えていった。犬は手術疲れか居眠りしている時間が多くなったような気がしたが、行動パターンから見ればあずける前と家に帰ってからとで変わりはない。だが内面的にはストレスはかなりあったようである。家に帰ってからすぐ、はじめ古便のような太い便をした、そしてその直後黒い細便を出しその最後にぶちゅっと血の混じったような液を出した。血便みたいである。素振りからはそうは見えなかったが置いてけぼりにすねるでもなく耐えていたようである。
妻が帰ってきた水曜日には喜んで跳ね回っていつもより寝にケージに入るのが遅くなったが、翌日からは以前と変わらない二人と一頭の生活パターンにもどった。