屋久島生活の断片・日誌編
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No.88  ロケット打ち上げのこと H14.02.11)

2月4日正午少し前、種子島からH2A-2号機が打ち上げられた。家から50mくらいのところにあるモッチョム岳が見通せる空き地に行って待っていたら小さな火の玉が白い煙を残しながら上っていくのが見えた。白昼の音が聞こえない花火の打ち上げのようだったが、煙が昇りきったその先はただ青空が見えるだけで空に飲み込まれたように何も見えなくなった。残った煙は時間とともに高度によって違う風向きにしたがい右に左にジクザク模様に乱れて消えていった。

我が家からはロケットはモッチョム岳の右に見える裾野に上がる。人の家の屋根の上方に上がるのを見るのは面白くないから木々の景色の上方に上がるのを見ようと近くの空き地で待っていた。11時半ころと聞いていたのでその前に行っていたのだが11時半を過ぎても上がらない。また延期になったかと家に帰りかけた途中近所の家のご婦人が家の草取りをしているので挨拶をした。

このあたりからロケットが上がるのが見えるので見に行っていたが上がらないので帰るところだと言うと、その人はTVで11時40何分かに変更になったと言う。そこでまた戻って待っていたら、その人が双眼鏡を持った95歳の父親を車椅子に乗せてやってきた。ロケットが見えると分かってやって来たということである。3人で待っていると今度は妻が犬を連れながら私に延期になった時間を教えにやって来た。

車椅子のご老人とその娘さん、妻と私と犬、4人と1匹で待つことしばし、そして前述のようにロケットの打ち上げを遠くから見物したわけである。引っ越してきて5年くらいの50mほどしか離れていない家のご老人と私が言葉を交わすのは初めてである。年をとると近所でもこんな偶然的機会でもないと互いに顔を合わすことはない。気軽に出かけられるところもなく、車椅子での散歩も起伏の多い地形では自由度が少ない。そういう環境にあってもロケットを見ようという好奇心の旺盛なしっかりしたご老人だった。我が家の犬、レオはそのご老人に寄って行ったがはしゃぎもせずおとなしくなでられていた。まだ生後5ヵ月半なのにもうアニマルセラピー犬のようであった。

レオ  生後168日  16.8kg

写楽の役者絵のような口を見せて寝ている

 

 


 
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