屋久島生活の断片・日誌編
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No.44 食事処酒処のこと (H13.03.19)

今はもう店じまいしてしまったが我が家の近所に本富亭(もっちょむてい)という食事処があった。数km径の範囲ではここが一軒だけだった。建物はそこの主人が建てたということである。壁部分は石を積み上げてある。ランドマークになるほど周りから目だっているわけではないが屋久島では本富亭に来る道をなどと言えば地理を説明するのに重宝するくらい比較的知られた店だった。

店じまいしてしまった本富亭

店主は築地方面で板前をしていたらしい。それなりの自信があってやっていたから料理も工夫していたと思うが屋久島ではちょっと値がはるところもあった。私は遠来の友人を連れて行くとか何か特別な時でないと利用しなかった。屋久島のホテルに長期滞在してそこの料理にあきたと言って本富亭を紹介され食事をしに来る人もかなりいたようである。定食は予約制で夕から夜の営業が主だったが小規模な団体観光客の昼食も受けていた。

また一面では近隣の住民や島外から配転になったホテルなどの従業員がちょっとした食事と酒を飲みに行く店でもあった。そのための軽食や一品料理のメニューもあった。本富亭が営業していた時は農道を夜遅くまで車が行き来する音がうるさいくらいで繁盛しているように見えた。

それが突然昨年閉店し東京方面にひきあげた。子育ての都合と奥さんの意向に押しきられてのことだと人伝てに聞いた。店主は雑誌やTVに売りこんだりしていたので、本などで知っていた観光客で本富亭で食事することをスケジュールにいれていた人もいたという。移住者の成功例と感心してみていたので、閉店はひとつの成功神話が消えた感じで残念だった。

本富亭が閉店して近隣に食事処酒処がなくなったと思っていたら、そのあとすぐ地元の人の経営する居酒屋が一軒できた。地元志向で値も手ごろなので繁盛しているそうである。真偽は定かでないが今年になってからもう一軒できるという噂も聞こえて来ている。


 
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