屋久島生活の断片・偏見ご免のたわごと編
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No.304 憲法記念日のこと  (H21.05.03)

憲法記念日に憲法改正是非の論議が付きものだが、そのうちでも人々の最も論議の的になっているのは憲法9条のようである。私はむかしからこの憲法9条が、あるいはその解釈の一つとしての憲法9条かもしれないが、直感的に違和感がある。厳密に検討し考えてのことではない底の浅い感想である。

私が日本語の憲法9条を読んで素直に頭に入ってくるのは以下のようなことである。すなわち、国は国際紛争解決のために戦争、武力による威嚇や行使をしてはならない。国は国際紛争解決のための戦争、武力による威嚇や行使をしないよういかなる戦力も保持してはならない。国は国際紛争解決のために交戦してはならない。

そして直感的に違和感を持つ点と言えば、わが国との紛争の相手国もわが国の憲法9条と同等の考え方を持っていることがその前提になっているのではないかということである。何処の国が紛争相手になるか分からないのだから全世界の国々が、日本国民が考える正義と秩序を基調とする国際平和を希求していて、紛争解決のために外交による話し合い・交渉など戦争、武力による威嚇や行使以外の手段しか採らないことが前提でないとこの考え方は成立しないのではないかということである。

その前提が崩れ、わが国が考えているのと異なった正義と秩序を基調とする国際平和を希求し、かつ紛争解決のための戦争、武力による威嚇や行使已むなしと考えている国と紛争になった場合、わが国は戦争、武力による威嚇や行使以外の外交(話し合い・交渉など)手段しかとれず、万が一相手国が戦争、武力による威嚇や行使に踏み切れば不利な条件で停戦交渉・敗戦交渉をするだけということになる。要は相手国の想定している落し所でしか決着しない国際紛争解決策しか採れないことになっているようで違和感があるのである。

そう言うと憲法9条改正論者のように聞こえるかもしれないが、憲法9条は日本国民の理想であり、それを掲げることはよいことであると私は思っている。憲法9条は改正しないでよいかなと思っている。そしてその解釈で現実的に対応をするべきだと思っている。今、自衛のための戦力を保持することは日本国民に大方認知されているが、戦争等放棄とは日本は国際紛争を解決するために戦争と、武力による威嚇又は武力の行使を自からは開始しない、すなわち国権の発動をしないということは自分から仕掛けない、交戦権も自分から仕掛けることはしないという意味で無い、ということだとの解釈でよいのではないかと思っている。

そしてまた、外交で国際紛争の最終的解決を目指そうとするならば、外交をバックアップする自衛戦力が不可欠である。紛争相手国が戦争あるいは武力による威嚇又は武力の行使を仕掛けてきても痛い目に合わせられるだけの戦力は保持しなければならない。わが国からは仕掛けないが仕掛けられたらただでは置かないというだけの戦略と体制を整備しておかなければならない、ということになるのが直感的に自然な感じがする。そういう解釈の下であとは国会が法律で縛りを決めればよいように思える。

私は学者や評論家ではないからいろいろな論を調べたり比較したり、字句の意味を調べたり考えたりしてはいない。憲法記念日に憲法9条の文面を見かけたから、今まで持っていた直感的なその印象を述べてみたのである。どこかの誰かと意見が同じだったり似ている意見かもしれない。私としては、印象は述べたとおりだが実際のところは憲法9条改正の賛成・反対についてはあいまいな立場である。立場を問われるときには、いろいろな主張と自分の印象をつき合わせて見られる説明あるいは比較評価みたいな情報で妥当なものを判断したいと思っている。

私は現実の世界で日本が具体的に国際紛争に対処して行けるのかということに関心がある。憲法9条改正内容案あるいは反対を論じるときに、そのそれぞれを支持する立場で現実にどう対応するのかの方策とその効用評価を見てみたいと思っている。近代以降から直近までの世界中の国際紛争例で、および今後想定される国際紛争例で具体的に対処する方策が有効に機能して国家国民の生命財産を守り得るかどうかのシミュレーション評価をして見せて欲しいと思っている。


参考: 憲法9条

第9条(Article 9)
・第1項 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
(Aspiring sincerely to an international peace based on justice and order, the Japanese people forever renounce war as a sovereign right of the nation and the threat or use of force as means of settling international disputes.)

・第2項 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
(In order to accomplish the aim of the preceding paragraph, land, sea, and air forces, as well as other war potential, will never be maintained. The right of belligerency of the state will not be recognized.)


 
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