屋久島生活の断片・偏見ご免のたわごと編
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No.263 犬に似ること    (H20.03.03)

かなりの時間がかかってそうなったとは思うが、先月目立ってきた。我が家の犬が、前にエサを入れたトレーを置いてすぐよしと言わないと歯をむき出して唸る。よかった頃は座らせて待てと言ってエサを入れたトレーを前に置くとこちらがよしというまで切ない目つきで見ていたものである。

なぜそうなったか考えてみるに、毎日定時にエサを与える習慣が付いてその時刻辺りになると催促に来るようになったのだが、そのときすぐエサをトレーに入れてやって犬の目の前に置き、座ろうが座るまいが即よしと言って食べさせていた。それで自分は上位で、こちらがエサの要求にすぐ応じるのが当たり前だと思ってしまったようである。だから目の前にエサを置かれてすぐ食べられないとこちらを威嚇するように歯をむき出し唸るのだと思われる。

私としては、待てと言われて切ない目をしてよしと言うまでこちらを見ている姿を見てちゃんと言うことを聞くからよいのではないかとだんだん優しくしてやろうという気になっていた。そして、座ろうが座るまいがエサを目の前に置いてすぐあるいはそんなに待たせずよしと言って食べさせるようになっていたのが原因のようである。犬は我が家のルールを理解しているはずだからこちらが強くコントロールしなくてもきちんと対応するだろうと思っていたのだが、案に相違してこちらが弱い立場になったと理解してしまったようである。

ひとの優しい気持ち、すなわち犬と人間の上下関係をあからさまにしない、強く当たらずルールを納得している犬の気持ちを尊重してやろうというこちらの態度が犬には通じないのだと改めて思い知らされた。そして犬畜生だからしようがないのだと納得しかけたのだが、いやこういうことは人間でもあるという気がしたのである。

例えば人にきつい言葉は使わない。納得してやって貰おうと丁寧に説明しお願いする。そういう態度で接していると、そのうち相手が横柄な態度になったり、ぞんざいな応対をしてくるようになることがある。これは家族の間や、会社の同僚や部下との間や、コミュニティや知り合いの間や、慣れた店その他の人間関係でもよく経験することである。こういうことが犬の反応とよく似ている気がしたのである。

犬では動物として人間も持っている性向の一部がまだ素のまま特徴的反応として出ていると思われる。しかし人間はそういう性向を抑え得るように進化しているが生まれてからの成長の過程で犬に似た性向の抑えに差が出てくるのだとすれば、誰しもその性向を幾ばくかは内包していて実るほど頭を垂れる稲穂かなということだろうと思われる。

以上私に唸る犬を見ての感想だが、私にも犬に似たところがないわけではない。優しくならなければと思いつつも、時に人を値踏みして侮ったり強く出たりすること、なかなか直らない。また私に唸る犬に、再教育だと散歩で思うような方向へ行こうとしたら強引に方向を変えて後ろを見せて無視したり、エサを小出しに分けてちゃんと座って切ない目をして見るまで食わせないことを繰り返したりしているが、自分の言うことをきかせようとすること歯をむき出して唸るのと同じだと犬が言いそうである。


 
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