屋久島生活の断片・偏見ご免のたわごと編
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No.260 天井板落下のこと    (H20.01.21)

愛知県かどこかの水泳プールで年末年始の休みが明けた日の開業前に、天井板落下という事件があった。休みの間中施設の空調を切っていたので石膏ボード製の天井板が湿気で柔らかくなり崩れてしまったのだと報道された。そうだとするとプールに水を張ったときは常時空調・除湿していないといけない天井板だったということになるが、そういう設計はしないと思われる。

私の経験では水分が石膏ボードの内部までしみ込まないと落ちないのではないかと思われる。例えば何かの理由で水分がじわじわしみ込んだためではないかというような気がする。私が当地へ来てから何年間かあるホテルで設備管理の下働きをしていたことがある。その間に一回客室の天井板が落下したことがある。天井にシミがあるので点検しようと触ったらそれが切掛けになってか石膏ボードの天井板畳一枚分くらいが一瞬にして落下し粉々になったのである。

石膏ボードが落下した原因は吸水による強度低下である。調べていくと上階レストランのトイレ洗面台裏の壁中で配水管の継ぎ目から少量の水漏れがあって、それが床のコンクリとそれを受けている凸凹の鉄板の間にしみ込み鉄板の継ぎ目から下の階の石膏ボードの天井板に垂れていたのである。落下した天井板はトイレのすぐ下ではないから水漏れ箇所を探すのに建築業者と設備業者動員でも少々時間がかかった。石膏ボード上方の鉄板が見える構造体の天井は相当じめじめし錆も見られた。落下時は開業してから二年くらいは経っていたような記憶がある。

それで私は一週間かそこらの休みの間に湿度によって広範囲が落下したというはなしにちょっと疑問を持ったのである。予想しうる使用条件下で落下するはずは無い、なにか特別の原因があるのではないかという気がしたのである。

ここではなしは替わって石膏ボード落下ではなく、建物の不具合原因探しのことである。私は当地での設備管理の仕事では、そことははっきりしない不具合の元を探したり日常点検でまだ不具合が出ていないがこのままでは必ずなるという兆候を発見すること楽しみにしていた。前者は仮説を立てそれを検証する楽しみであり、後者はちょっとした変化から重大性を読み取る楽しみである。それは製品開発で試作したものを実験し改良して製品に仕上げる仕事の一部と相通ずるところがあって、なにか面白い現象が起こる機会を楽しみにしていたものである。

例えば、客室で夜間かすかに壁をノックするような音がする。お化けでもいそうとのクレームで調べたら、ある条件のエアコンの風が壁際のTVを置いたテーブル兼チェストのようなボードの裏板と壁の隙間を流れるとそこに垂れているアンテナケーブルが揺れ壁か裏板に当たってはコンコンと響くことがあると判った。

また、客室でTVの音が聞こえないくらいガーガーと壁が唸るというクレームもあった。調べたら50mくらい離れた屋外にある重油ポンプ作動時の振動あるいは油圧の変動が地下機械室の壁に固定したサブタンクへの配管を振動させ鉄筋コンクリ壁を伝わって1階を通り越し2階の客室壁で騒音を発生させたと判った。

開業後数年経っての出来事だったが、それまでお客も従業員も発生のタイミングに遭遇しなかったらしい。単なる機械の故障と違ってこういうのを調べ対策するのは楽しい。その他水漏れ・雨漏れ、異臭や騒音・異音の発生源や原因の探索などホテルで楽しんだ経験は家のメンテナンスにも結構参考になっている。


 
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