屋久島生活の断片・偏見ご免のたわごと編
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No.223 屋久島(123):聞いていないのこと  H18.09.04)

よく会社で何か問われて「聞いていません」と言うと自主性や積極性がない、言われて仕事をするだけの人間ととられることが多い。普通は自分の仕事に関係しそうなことにはそれなりに気配りをし、上司や担当者がいないときに自分に話しが回って来た時にはフォロー出来るくらいでないといけない。

しかしながら情報が無くて突然降って湧いたようなことがらに対応を求められた時は、戸惑いしどろもどろすることがある。特に全く聞いていなかったことについてあれはどうなったと問われたときはなんとも情けない気がする。直属の上司が自分で抱え込んで知らせない。それで何段階か上の方からご下問があるとき、はめられたのではないかと疑いたくなることもある。

当地の会社で働いていたときのことである。作業員職場で交替勤務だから直属の長といつも顔を合わせるということはない。その直属の長が上からの話を抱え込んで部下に知らせない。私たち部下はその対応を上の方から問われて初めはしどろもどろしながら自部署に不都合がないように取り繕う。そんなことが何回も何ヶ月も続く。

大体作業員職場は上の方が気になることの情報はまず長に流れてくる。しかし記録や申し送りを全くしない長だったからその場にいなければなにがどうだか分からない。自分だけの成果をアッピールしたいためか私たちと張り合ってか知らないが、何回情報を部下に周知するように頼んでも自分で止めている。自分でやって具合が悪くなるとそのときになって部下に押し付ける。

そんな職場だったからだんだん部下のほとんどは自分達で仕事を見つけては、自分達で処理するようになった。ただし抜かり無く作業申し送りノートに記録はしてやる。そのノートに長は書かなくても、こちらはきちんとやっている証拠を残す。そういう仕事について長が上の方から聞かれても、私たちが困ったようにうまく答えられない。ノートも見ないからそうなる。

そうこうしていたら長は部下が自分を無視して勝手にやると上の方に直訴した。私たちは上の方に呼ばれ上司を立ててやるべしと言われて、実情を訴えてみるが信じられない。上司を立て言うことを聞けと言うばかりである。上司と対立すれば負けるのは部下の方である。それが組織の論理である。それを言われれば引き下がるしかない。

それからは長の方から聞いていないことについて問われたときは「聞いていません」と意識して答える。何回もそれが続いて上の方はこのやる気のない馬鹿めというような薄ら笑いをするようになった。まともな人間が何回も「聞いていません」を連発しているのになにかあると思ってもみないようである。センシティビィティがないのは、鹿児島はお上が偉い、文句は言うなという風土のせいか。とにかく問題は下のものにあるということでないとおさまりがわるいようである。だが職場の雰囲気というものは長によって決まるものである。よく分かっている人がその上にいればよいのだが、そうでないとほんとに困ったことになる。


 
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