屋久島生活の断片・偏見ご免のたわごと編
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 No.210 エレベーター事故のこと  H18.06.10)

シンドラー社のエレベーターで、高校生が下りようとしていた途中でドアが開いたまま籠が上昇して、入り口枠と籠の間に挟まれ死亡するという事故が発生した。報道によるとシンドラー社のエレベーターでは異常動作が結構発生していて利用者の間では問題視されていたようである。またシンドラー社は、自社のエレベーターは世界に誇る高信頼性の製品である、メンテナンスに問題があったのではないかというような主張をしている。

報道でシンドラー社の日本法人の記者会見やスイス本社の社長の会見をみて、自分たちから対応に動かない様子に私は違和感を覚える。私が事故内容の報道を見聞きした限りでは、シンドラー社の製品の信頼性にまだ不十分な点があるという印象である。以下そう感じる理由である。

今回、エレベーターが停止しドアが開いて人が下りる動作をいたのだから、ブレーキはかかったのであり、またブレーキがしばらくはかかっていたはずである。しかし降りる動作の途中で籠が上昇してしまったということは、(1)制御上でブレーキが解除されウエイトの重さで籠が上昇した、(2)制御上でブレーキが解除されモーターも巻き上げた、(3)ブレーキの部品が破損しブレーキが解除されウエイトの重さで籠が上昇した、(4)ブレーキの部品が破損しブレーキが解除され同時に制御上でモーターが巻き上げた、というようなことが考えられる。

(1)(2)の場合は、制御系等の故障・不具合が原因である。条件がそろわないのに作動するということは、条件確認入力系統に不具合があって上昇可能条件を満たす誤った入力があって、あるいは条件確認入力系統が正常でブレーキ解除条件や上昇可能条件を満たしていないのに動作指示出力を誤って出したということになる。

(3)の場合は、例えばブレーキをかけるスプリング(解除するとき電磁石に通電しスプリング力を緩めるようになっていると思われる)などが破損し解除していないのに解除したと同じ状況になってしまったということになる。(4)の場合は、(3)のようなブレーキの故障と同時に(2)のような制御系等の不具合も発生したということになる。(4)の場合は考えにくいので、(1)(2)(3)が私のつたない考察では、可能性がある。(報道ではブレーキ摺動面に油付着の可能性を挙げていたところもあるが、摺動面に油が付くとか垂れるとかいうような状況が発生するような設計をしているならシンドラー社はよっぽど低級な会社ということになるからそれはないと思われる。)

ここでまず(3)のブレーキの機械的故障についてだが、その故障が停電時に発生したら籠がウエイトで上昇してしまうことになる。ブレーキを2系統にするとかしてフェイルセイフ構造にするなど、設計上なんらかの安全策がとられていないとおかしい。素人の私でも考え付くのだから、専門メーカーなら事前に故障解析をして当然分かっているはずである。これがなされていないのなら、メーカーとしての姿勢に疑問がある。

(1)(2)の場合は、異常作動するまではエレベーターは正常に作動している時期があったのだから、突発的に制御入力系統あるいは制御処理部や出力系統に不具合が発生したということになる。素人考えでは、センサーなどはダブルになっていて、処理部では状態や応答の整合性を判断しているはずだし、処理部だって何系統かの並列処理になっていて間違った判断を回避できるようになっているはずである。しかし今回制御系統の不具合だとした場合、まったく機能しているように思えないのが不思議である。

制御系のメンテナンスがどういうことをするのか知らないが、メンテナンスでOKが出てもその直後に不具合が発生する可能性はある。メーカーならそういう場合も考えた故障解析をしているはずである。その成果が感じられないのも気になるところである。

墜落して跡形も無残になる飛行機と違い、エレベーターの現物はきれいに残っているし、高信頼性のエレベーターを世界に供給していると豪語するメーカーなら見ればすぐ原因が思い当たりそうなものである。自社で再現実験でもして確認し、早急に使用に供されているエレベーターにその対策を実施するようにすべきである。

そういう姿勢がシンドラー社トップ、幹部の言に感じられないから、エレベーターのみならず会社自体の信頼性に不安を感じるのである。


 
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