屋久島生活の断片・偏見ご免のたわごと編
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No.184 屋久島(104):移住賛歌番組のこと H17.07.18)

多分鹿児島地方番組だと思うが、NHK総合TVで7月1日午後7時半から鹿児島熱風録「移住者が集う自然の恵み・屋久島・平内集落」という番組があると新聞番組欄に載っていたので見てみた。サブタイトルだかメインタイトルだかもう記憶がはっきりしないのだが「俺たちのユートピア・平内集落」というタイトルも出てきたのが印象に残っている。

平内に移住してきた3組が紹介され、平内好いとこという賛歌を歌う趣向の番組である。何十年も前にミカン農家を志して移住してきた家族、屋久島での登山の趣味が高じて移住してきた人、屋久島での大物つりの趣味が高じて移住してきた人のエピソードを通じて平内好いとこ(登山趣味の人の言によれば自然に恵まれた平内はユートピア)と紹介している番組である。

農家の場合、今は2代目になったがポンカン栽培を志して屋久島に移住自然に恵まれ農園経営に成功したと紹介されていた。地元の人ではと私は思っていたのだが、昭和45年に移住してきたとのことである。それでもいまだ移住者として取り上げられているところが、なんとも言えず地元というものを意識させられるところだった。

次に登山と釣りの人の場合である。こちらが話題のメインである。彼らは屋久島での登山あるいは釣りに魅せられてかつての仕事をやめて比較的若く移住してきたようである。番組での印象では趣味(快楽)追求のためにそういう決断をして来たと言っているようにとれた。登って楽しい山が背景にある、大物が釣れる磯がある、そういう自然に恵まれた場所で日常は海中温泉で地元の人と交流を楽しめる。それが平内・俺たちのユートピアということのようである。

ちょっとここで引っかかった。ユートピアという表現にである。私の番組を見た印象では登山・釣りの人は自分の快楽を追及できる環境を求めて移住してきた。(温泉に入り地元の特定の人と交流することができるので移住してきたのではない。これはおまけである。)ただただ個人の快楽のために好適な住まい場所ということだけで、ユートピアとはちょっとなじめない。住む人すべてが幸せに生きてゆける、そういう社会システムと環境あるいはそういうことへの取り組みを紹介してこそユートピアという語も使えるというものではないかと、その語に引っかかってしまった。

番組としては、前は海、海中温泉もある、後ろは山、自然に恵まれた集落・平内を登山と釣りを趣味として移住してきた人を通じて紹介しようということではあろうが、いささか移住者の集う実態とはかけ離れた視点ではなかったかと思われる。たまに釣りもするし登山もする。しかしそのために移住してきた人は極めて少数であると私は思う。話しの種にならない移住者が大多数であろうと思われる。それが登山と釣りで括られて、大多数の移住者は違和感を持ったのではないかと思われる。

また、地元の住民も自分たちの集落という意識があるだろう。その集落の紹介番組が移住者中心のものであることにあまり愉快な感じを持たなかった可能性もある。よく地元が話題のTV放送があると、町内あるいは集落の放送などでいついつこういう放送があるなどとアナウンスがあるのだが、今回聞いていない。私が聞き逃したのなら杞憂かもしれないが、聞いていないので無かったのではとその理由が気になるのである。

他に番組で気になるところがあった。登山仲間と釣り仲間が集まって海中温泉の掃除を日ごろしているとの紹介もあったが、私の知るところでは集落で手当てを出して委嘱している管理人がいるはずである。私はこのところ集落の総会を欠席しているので、知らぬ間に有志ボランティアがしてくれることになったのかもしれないが、やらせの可能性もある。

また普通だと家族の協力を含めて移住が成立すると思われるが、この番組には女性や子供の匂いがしない。実際は家族と移住してきたのかもしれないが、一見男やもめが自分の快楽を追及するために移住して来て楽しいぞと強がりを言っているように見えてしまうところがある。家族あるいは妻子を含めて夢を追いその実現に努力している人を紹介するTV朝日の「人生の楽園」という番組のほうが一部やらせはあるかも知れないが人のぬくもりを感じる。

今回のNHKの企画は安易な観光趣味的移住のPRみたいである。いまNHKでは「誰かに媚びるような番組ではなく、よい番組を作ることが大切」と知識人などを使ってアッピール放送をしているのだから、自然に焦点を合わせるならその恵み自体をじっくり解き明かす内容にするとか、移住者に焦点を合わせるならもっと突っ込んだ生活臭・社会臭のある移住者の実態を解き明かすとかして、出演者がすばらしいと言うのではなく、視聴者が見てなるほどというような番組にしてほしいものである。

補足: 温泉ボランティアのこと  (H19.01.20)

最近配られた平内区の情報ビラやホームページの記事を見ると、温泉ボランティアのことが載っている。 区として認める活動に発展してきているようである。


 
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