屋久島生活の断片・偏見ご免のたわごと編
                     Home > 目次_top  >  記事

No.153 屋久島(86):移住のこと H16.08.12)

(屋久島事情の参考になればと、移住に関連する掲示板への三つの投稿を転載いたします。投稿者実名はイニシャルに変えてあります。)

1: 移住してみたいんですが・・・   (Sさん   (H13.09.29)   

今年の初め、原の周辺で釣りしました。
海も空も屋久島は素晴らしかったです。
移住を考えているのですが、どんなもんでしょうか?


2: Sさんへ・・・移住について(WebMaster  (H13.09.29)

屋久島の人ではなく、海や空つまり自然に引かれての移住希望だと仮定してお答えします。

借家事情はよくありませんので、土地を購入し家を建てることになりますが、仮定のもとでは別荘地様の地元の人の密集地より離れた場所が良いと思います。

人に関しては初めは互いに気を使うと思いますががそのうち言いたいことを言えるようになり友人もできるでしょう。普通ちょっとした気持ちの引っかかりが住み心地に反映してしまいがちなので、徐々に探りながら交流を広げるのが良いと思います。

年齢や就職の希望、家族の有無など分かりませんが、お若ければ就職先がないこともありません。ハローワークのページを調べられると良いと思います。結婚されているならパートナーの積極的同意が必要でしょう。私の知る移住失敗の何例かはパートナー離反が原因のようです。

世界遺産の島、自然に恵まれた地へのあこがれだけで移住するのは、あまりおすすめできません。ライフプランにおいて移住の成算があるかおよび移住地のマイナス面も良く調べて、その後に決断されるのが良いと思います。

Sさん 以上でお役にたちますでしょうか。
読者の方でアドバイスがある方は投稿お願いします。


3. ちょっと長いのですが  ( ほんやさん  (H13.10.05) 

下の拙文は、私のHPに「移住と転勤」というテーマでアップしているものです。私が4年間屋久島で暮らしてみての私見ですが、参考になれば幸いです。
-------------------------------------------------------
屋久島ネタのHPを開いているせいか、ときどき移住についての質問メールなどがくることがある。私が屋久島に住んでいたのは30年近くまえのことだから、あまり役に立つ話はできないが、知っている限りのことはお答えすることにしている。移住の動機の多くは癒しの島で自然に囲まれて人間らしく暮らしたいということだ。現実には住居や仕事の問題があるが、移住に傾けるパワーの大きい人はそれらのハードルをクリアして屋久島暮らしを実現する。これは、経済的にも精神的にもけっこうハードなことだと思うが、そこまでしても屋久島に住むことに魅力を感じているということなのだろう。

一方で、こういう移住者のようなハードルなしで、屋久島暮らしをスタートする人がいる。転勤や赴任で屋久島に来る学校の先生や、県や国の機関などで働く人たちだ。

私も初めて赴任したのが屋久島の郵便局だったので、このケースにあてはまる。転勤で来るのだから仕事が確保されているのはあたりまえだが(笑)、同時に住居も確保されている場合がほとんどだから、高いハードルをこえて移住してくる人からみれば、かなり恵まれているといえる。

が、現実はどんなものだろう。

小中学校の教員を例にとると、鹿児島県は離島が多いために赴任の公平を図る意味で、本人の意思に関係なく最低離島に3年間の勤務をすることになっているようだ。転勤にあたって、屋久島に住みたいと思っていた先生が屋久島に赴任するのなら渡りに船だが、できることなら行きたくないけど命令だからしかたがない、という先生も多いだろう。私も、屋久島で暮らしていた4年間に、こういう先生をたくさん見てきた。今のようにトッピーがある時代ではなく、片道5時間近くかかる船で頻繁に鹿児島の自宅に帰る先生もいた。とくに用事があるわけではないが、屋久島にいると息がつまるからだといっていた人さえあった。

今の屋久島は、おそらく日本で一番観光客の集まる離島だろう。縄文杉や宮之浦岳に日帰りでいけるというアクセスのよさもあり、まさに老若男女を問わず、寸暇を惜しんで屋久島を楽しんでいる。が、一方で、仕事で屋久島に赴任した人の場合はどうなのだろう。公務員であれば土日は休みだから時間は十分ある。天気の良い日を選んで、いちばん美味しい屋久島を堪能できるはずなのだが、自分の意思と関係なく屋久島に赴任した人は、あまり山に登ったりはしないような気がする。

もちろん、そういう人たちも屋久杉の原生林や宮之浦岳のパノラマを見れば心地よく思うのだろうが「自分の意思で住んでいるのではない」場所に対しては、例えば離島の不便さや人間関係の煩雑さなどのデメリットばかりが見えてしまうのではないかと思う。半分は自分の希望で赴任した私でさえ、そうだった。

ただ、こういう言い方は誤解を招くかもしれないが、収入と住まいを確保されて「期限を切って」、将来のことを気にしないで屋久島に住めるというのは、かなりラッキーなことではないかと思う。
と今は思うが、当時の私はといえば、屋久島の自然を楽しむという暮らしはしていなかった。
縄文杉にも宮之浦岳にも無縁で、楽しみは、数ヶ月に1回鹿児島市に出て、繁華街の喧騒に身を置くことだった。今にしてみると、ほんとうにもったいないことをしたと思う。

余計なことかもしれないが、転勤で屋久島に赴任された方が、旅行者の目線で屋久島を見ることができれば、屋久島での暮らしはかなり美味しいものになると思う。二十数年前、そういう目線を持てなかった自分の愚かさを反省することしきりである。


 
 Home   back