屋久島生活の断片・偏見ご免のたわごと編
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No.140 気にかかること H16.03.22)

正月に「預金封鎖」という本を読んだ。こういう類の本がかなり出回っている。一方ではそういう論の発端となっている財政破綻はウソの論だ、財政出動でデフレを克服すべしという意見もある。

私の記憶では、バブル破綻の後だったか財政破綻の恐れがあると騒ぎ始めたのは武村大蔵大臣の頃だった気がする。その後景気回復の兆しありというころ橋本内閣が緊縮財政を取り景気回復腰折れで失われた10年といわれる不況時代が続いたということになっている。今は、あの頃この額を超えれば財政破綻といわれた公的借金額を大幅に超えている。しかし財政破綻の恐れありと政府や官僚は騒がない。

ここで私なりの勘繰りをすると、かつて財政破綻を心配して騒いだ結果が不況を招き非難を浴びた政府や官僚は、その後財政破綻の回避よりは破綻処理をどうするかということに方針を変更したのではないかということである。もしそうなら預金封鎖もありうるという気がするのである。

財政破綻はウソで、財政出動でデフレ克服すれば日本の経済は復活するので心配ないという論は本当なのかもしれないが、自分の生活にどう反映してくるのかという噛み砕いた解説がないので、私にはその論をよく理解できない。預金封鎖のような筋立てが飲み込みやすい解説を見ていると、そちらの方が心配になってくるのである。

財政破綻や預金封鎖から自分の生活を守るには海外投資だというのが、その類の警告本に示されている対応策である。だが海外ファンドの名が出ているくらいで具体的な対応手順は分からない。経済のグローバル化に伍していかなければ日本の未来はないなどと言いながら、庶民のグローバルな資産運用は日陰もの扱いのようである。日本の法律あるいは政府の管理下にない金融商品はいわゆる庶民向けマネー雑誌などの記事にならないし広告も出ないようである。

海外の金融商品に海外で直接投資すればよいのだから、今のたいした利回りを出さない日本の証券会社や銀行が、田舎からCitibankや証券会社で小金を運用する手間と変わらない日本人向け事務代行会社を海外につくって大々的に海外ファンドを営業すればよいのにと思うのだが、多分規制があって庶民のグローバル資産運用にかかわる事業は人目を引くような活動をすることが制限されているのかもしれない。

それでか、いわゆるマネー雑誌に顔を出している経済評論家やアナリストなどは危機について言及しても対応策としてはせいぜい銀行とか証券会社を介しての外貨預金とか外貨MMF、あるいは会社を首にならないように自分の能力開発に投資せよというようなはなししかしない印象である。私にはなんともいい加減な効用を説いているようにしか見えない。

人間、心配があってその当否が分からない場合は、心配な状況が発生してもしなくても対応できるように、両面的対策をとりたいと誰でも思う。専門家ならそういうことに精通しているはずである。経済問題に目端の利くことを売りにしている経済評論家やアナリストは、本当はうまいことやっているに違いないという気がしてしようがない。

危機説に楽観的な経済評論家やアナリストなどの保有資産を見てみたい。ちゃっかりと自分は海外で投資して安全圏にいるのではないか。そして、政府に睨まれないよう海外投資に触れず、危機が来ても生活防衛にならないようなありきたりの目先ばなしばかりしているのではないかと思えないでもない。

目端が利いて事情に精通した専門家や彼らを使いこなせる金に困らない人間は、既に手は打ち終わって安全圏にいる。そして自助努力の出来ないものは自業自得だと高見の見物で危機後のあたらしい時代の到来を待っているのかもしれない。それに反して、私は戦後貧しく育った時のように最期も貧しい生活の中に迎えるしかないのかと気に懸かる。危機が来る来ないにかかわらず成立する庶民向け両面的対応策がもっと出回って欲しいものである。


 
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