屋久島生活の断片・偏見ご免のたわごと編
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No.138 屋久島(77):ツグミのこと H16.02.23)

ある日のこと犬を連れて散歩していたら、ミカン園の鳥除けと思われる細い糸の網に鳥が引っかかってぶら下がっていた。タンカンを突っつきに来て、あるいはそのミカン園に放し飼いにされている鶏の餌でもついばみに来て、引っかかってしまったのかもしれない。かわいそうに思って網から外してやったが、元気がなく放してやっても飛べない。こそこそと枯れ草が覆いかぶさった茂みに逃げ込んで隠れている。その様子を見ていたら地元の老人が通りかかった。

鳥が網にかかって弱って飛べずここに逃げ込んだと言ったら、茂みを掻き分けその鳥をつかみ出した。介抱でもして放してやろうということかと思って見ていたら、鳥を見て言うことにはこれはツグミだ。食うとうまい。見つけたお前が持って行かないなら、もらいたいと言う顔つきで私を見ている。私はもうこのままでは助からないだろうから、持って行ってくれと言って別れた。一羽だけだからたいして食った気分にならない気がするが、あのツグミは食われてしまったかもしれない。

ツグミに触ったその頃は世間でアメリカの牛のBSEと鳥インフルエンザが食の問題として騒ぎが大きくなってきた時期である。鳥インフルエンザは渡り鳥によって広がると言うはなしや、日本の養鶏場は外部と隔離して関係者以外の人や野鳥などと接触しないように管理しているのでそういう心配はないと言う報道を耳にしていた時期である。

ツグミの引っかかったミカン園は中に鶏が放し飼いである。近くで他にも鶏を飼っている家もある。そこでそのとき、こういう庭のようなところで飼っている鶏に感染する危険はないのかと気になった。また地鶏を平飼いしたものが高級でうまいのだと言ってその食材の出所を誇るTVのグルメ番組を見たことがあるが、オープンな飼育場では関係者以外の人と隔離できても野鳥と隔離はできないと思われるが、こういう鶏はどう管理しているのか気になった。

そんなことがあってだいぶたった2月17日、大分県でチャボとアヒルを一緒に飼っている家で、チャボが鳥インフルエンザで死んだというTV放送があった。庭の小屋でペットとして飼っている鶏に鳥インフルエンザが発生したのである。どこかの大学の先生は野鳥から感染したのではないかと言っているらしい。北海道の方の大学の先生はウイルスを鴨が媒介していると言っていたというニュースも見たことがある。

この現場はTVで見たところでは街の人家の多いところで、家の庭に鴨が来るとは考えられないから普通の野鳥が媒介している可能性がありそうということになる。また野鳥が数多く頻繁に庭に来たということでもなさそうだから、たまたま一羽でもウイルスをもった野鳥が立ち回ったり糞を落としていっただけで、鶏が鳥インフルエンザのウイルスに感染したあるいは一緒に飼っていたアヒルがはじめに感染し鶏にうつって発症したということも考えられる訳である。

感染ルートははっきりしないらしいが、なんとなく野鳥が気になる。ツグミは南下して越冬する普通の渡り鳥らしい。ツグミを触ったときから今まで件のミカン園周辺では何事もないから、そばにいた鶏はあのツグミからウイルスを貰っていなかったか、あのツグミはウイルスを持っていなかったということのようである。

鳥インフルエンザを発症するのは特定の鳥例えば鶏で、そういう鳥の体内で変異したウイルスでないと人に感染しない。それも多数のそういう鳥がいてウイルスが充満している環境あるいはそういう鳥にしょっちゅう接触している環境でないと感染しないから、普通の野鳥は心配ないというはなしもある。しかし鳥に触って自分がウイルスの運び屋にはならないとも限らない。今後は仏心を出してあまり野鳥などに近づいたり触ったり、電線などの下で糞を落とされたりしない方がよい気がしている。


補足: 汚染池の水を飲ませたのが原因という説 (H16.05.08)

報道によれば、大分の件のチャボは井戸の不具合で野鳥が数種水飲みに来る池の水を汲んできて飲ませたのが発症の原因と言う説が出てきた模様である。池の水を飲ませていないものは発症していないらしい。


 
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