屋久島生活の断片・偏見ご免のたわごと編
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No.107 屋久島(59):引越しのこと H14.11.18)

屋久島に来て8年ほどになろうかという近所の人が最近島外に引越してしまった。夫婦で海の見える土地を買い求め家を建て、そこからの眺めを誇っていたのに実際の生活はそういう思い入れだけではやっていけないようである。

屋久島に来てから数年して奥さんの具合が悪くなり年を負うごとに衰えを見せて、最近は介護に明け暮れていたご主人も傍目からも疲労の色が濃く見受けられるようになっていたようである。介護保険でヘルパーの支援をもらったりはしていたのだが時間も限られ、奥さんの世話と食事でかなり大変だったようである。引越しの前頃には近所の民宿に食事を持ってきてもらうように頼んでいたという話も聞いた。

今度の引越し先は屋久島からはかなり遠くのある県にあるケアハウスだそうである。食事がつくということで助かると言っていたそうだが入浴のサービスはないらしいとはその間の事情を知る人から聞いたはなしである。もしかすると介護保険でそういう支援が得られるということになっているのかもしれない。

屋久島の介護を支援する体制を私は詳しく知らないのだが、食事つきを喜ぶご主人の話を漏れ聞いて屋久島では食事の宅配サービスがないか、あまりよくないということかという感想を持った。屋久島でも介護保険で家の風呂に入れてくれるらしいが、奥さんが夜でなきゃいやだというのでご主人がやっていたそうである。それと食事のことを喜ぶはなしから考えれば、今までやったことのない男が献立を考え買い物をし、食事の準備をする、それがかなり大変さにウエイトを占めていたのかなと思わずにいられない。

私は妻が上京する間、食事、洗濯、掃除で半日は落ち着かない。妻はやれているのだから慣れればなんと言うことはないと思うのだが、ゆったりとした気分になれないのである。飯を食うのに追われている感じが強い。ご主人にはゆったりとした気分を取り戻して生活を楽しむ余裕を取り戻して欲しいと思わずにいられない。

ご主人は私と同年代である。私は妻が具合悪くなったら自分がやっていけるか自信はない。独り者用料理の本を買って置いてはある。妻の上京中料理のトレーニングをしようと試みるのだが読むだけに終わってしまう。妻は私より若いから多分私が先に具合が悪くなって面倒をかけるようになる。それで力が入らないのかもしれない。そうは言っても妻の生活の余裕をなくさずに屋久島で生活できるか気になっている。

田舎暮らしは退職でもしてからのんびり暮らすためのものだ。そういう考えはもしかしたら間違いかもしれない。最近そんな気もしてきている。田舎暮らしは比較的元気な年代に楽しむものである。健康を害するような年代になって不自由な環境の中で不便をしのぎながら田舎暮らしは楽しめない。若い人が大勢いて支援体制もある、医療施設などもたくさんある、ものの調達も安くできる、都会のど真ん中にこそ健康を害するような年代になってからの最期の住処があるのではと、病人を抱えて屋久島をでる人を見て思うのである。


 
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